このページでは、農業法人や個人農家が外国人を雇用する時の就労ビザについて、ビザ専門行政書士が解説しています。
職種によって取得するビザが違う
農業法人や個人農家で外国人が働く場合、よく利用される就労ビザは以下の5つです。簡単に要点を図にまとめました。
単純労働(一般的な農作業)の可否 | 就労可能な年数 | 管理コスト(目安) | |
特定技能 | 可 | 5年 | 月額3万円程度(管理を外注する場合) |
技能実習 | 可 | 3年 | 月額3万円程度 |
特定活動46号 | 可 | 制限なし | なし |
特定活動9号 | 可 | 1年程度 | 人材紹介会社による |
技術・人文知識・国際業務(技人国) | 不可 | 制限なし | なし |
図の中にある「単純作業」とは、一般的な農作業のことです。具体的には、土づくり、播種、農薬散布、追肥、収穫、梱包、配送などですね。私は時々、知人の農家さんをボランティアで手伝っているので、土づくりや播種などの農作業を単純作業とは決して思いません。農作業には専門知識や経験が求められます。農作業が誰でもできる仕事だとは思えないのですが、現行の入国管理法の制度上、一般的な農作業は「単純作業」とみなされています。
ですから、一般的な農作業の作業員を募集する場合、
- 特定技能
- 技能実習
- 特定活動46号
- 特定活動9号
上記いずれかの就労ビザを持つ外国人を採用することになります。もしくは、採用するために、これらの就労ビザを申請することになります。
以下、それぞれの就労ビザについて、ポイントを解説していきます。
特定技能ビザ
特定技能は、人手不足解消のために作られたビザです。現在、11業種のみに限定されており、その中に農業も含まれています。
特定技能ビザの要件
特定技能は、人手不足解消のために作られたビザです。現在、11業種のみに限定されており、その中に農業も含まれています。
特定技能ビザの要件について説明します。本人に関する主な要件は、特定技能評価試験および日本語能力試験N4に合格していることです(3年間の技能実習修了者を除く)。
雇用企業に関する要件は、社会保険加入、労働保険加入、滞納税がないこと、2期連続赤字でないこと等、多数ありますが、要件さえ満たせば個人農家も受入対象となります。実際、多くの個人農家で特定技能ビザを持つ外国人が働いています。この点は、他の業種にはない特長ですね。
本人 | 3年間の技能実習修了者
もしくは 特定技能評価試験(農業)および日本語能力試験N4合格者 |
企業 | 社保完備、2期連続赤字でないこと等、多数あり(技能実習受入企業であればほぼ問題ない) |
職務内容 | 単純作業OK |
3年間雇用している技能実習生がいる場合、特定技能ビザに切り替えることで、さらに5年間の雇用が可能となります。技能実習生として来日してから、2年10ヶ月が経過した時点で、切り替えの手続きが可能です。
また、元技能実習生(3年満了者)であれば、特定技能外国人として、呼び戻すことも可能です。
特定技能ビザ(農業)必要書類例
お客様に用意いただく書類は、黄色マーカーの書類です。社会保険や税務関係の書類は、当事務所で収集代行も可能です(オプション)。
- 在留資格認定証明書交付申請書 / 在留資格変更許可申請書
- 特定技能外国人の報酬に関する説明書
- 特定技能雇用契約書の写し
- 雇用条件書の写し
- 事前ガイダンスの確認書
- 支払費用の同意書及び費用明細書
- 徴収費用の説明書
- 特定技能外国人の履歴書
- 健康診断個人票
- 特定技能所属機関概要書
- 雇用の経緯に係る説明書
- 登記事項証明書
- 役員の住民票の写し (本籍あり、マイナンバーなし)
- 決算文書(損益計算表及び貸借対照表又は収 支計算書)(直近2年分)
- 法人税の確定申告書の控え(直近2年分)
- 労働保険料等納付証明書(未納なし証明)
- 領収証書の写し(直近1年分)、労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書(事業主控)の写し(領収証書に対応する分)
- 雇用契約の成立があっせんする者がある場合、職業紹介事業所に関する「人材サービス総合サイト」(厚生労働省職業安定局ホームページ)の画面を印刷したもの
- 社会保険料納入状況照会回答票
- 税目を源泉所得税及び復興特別所得税、法人税、消費税及び地方消費税とする納税証明書
- 税目を法人住民税とする納税証明書(前年度)
- 1号特定技能外国人支援計画書
- 特定技能外国人受入れに関する誓約書等
技能実習ビザ
技能実習ビザとは、発展途上国の人材を受け入れ、日本の農業法人等で3年間かけて日本の農業技術を学んでもらうためのビザです。
技能実習ビザを持つ外国人は、外国人実習生や外国人研修生と呼ばれます。外国人実習生を受け入れたい場合、近くにある監理団体に相談してみましょう。
現在、日本国内には約3000の監理団体があり、それぞれに得意な国、業種が異なります。茨城県内の企業様でしたら、当事務所から監理団体のご紹介も可能です。
特定活動46号ビザ
特定活動46号ビザとは、日本国内の4年制大学を卒業し、日本語能力試験N1に合格している外国人を対象としたビザです。この2つの条件を満たす外国人については、就職の選択肢がかなり広がります。
日本語での円滑なコミュニケーションが必要な業務であれば、農作業に従事することも認められています。ただし、例えば野菜栽培工場で、ひたすら芽かきや収穫するだけといった作業の場合は認められませんので注意してください。
本人 | 日本国内の4年制大学卒業および日本語能力試験N1合格者 |
企業 | 経営安定性あればOK(農業法人の場合、直近の決算で債務超過なし、相応の売上があれば問題ない場合が多い) |
職務内容 | 日本語での円滑なコミュニケーションが必要な業務であること(上司の指示を受けながら、技能実習生に通訳をしながら自らも農作業に従事する場合など) |
特定活動46ビザについては、こちらのページでも詳しく解説しています
特定活動9号ビザ
特定活動9号ビザとは、海外の農業大学等の学生を、インターンとして受け入れるためのビザです。通常、3ヶ月~1年程度の期間となることが多いです。
特定活動ビザを取得するための主な要件は下記です。
- 日本の農業法人(もしくは農業組合)と当該大学がインターンシップに関する協定を結んでいること
- 日本での農業インターンシップが大学の単位として認定されること
当事務所でも、過去に何度か、この特定活動9号ビザを取得したことがあります。最初は大変ですが、一度、大学と協定を結んでしまえば、毎年、必要な時期に必要な人員を確保しやすいです。
技術・人文知識・国際業務ビザ
大学の農学部等を卒業した外国人が、農業法人において、商品開発や生産管理、マーケティングなどの仕事に従事する場合、ホワイトカラーの就労ビザである「技人国ビザ」を取得できる可能性があります。
※技人国ビザとは、技術・人文知識・国際業務ビザの略称です。
技人国ビザは、技能実習や特定活動に比べて、採用コストやビザ取得にかかる労力が遥かに少ないため、できれば技人国ビザで採用したいというニーズが高いです。
※技能実習生や特定技能外国人を雇用するためには、細かい条件があり、ビザ申請時や更新時に膨大な書類(通常、50~100種類)が必要です。また、毎月の管理委託費もかかります。
技人国ビザが許可されやすいケース(一例)
- 一定規模のある農業法人において、マーケティング専従者として、販売サイトの運用、取引先との連絡調整業務に専従する。
- 生産管理、工程管理、品質管理等に従事する。流れ作業ではなく、専用ソフトやアプリ等を使用する業務である。水耕栽培システムを導入しているケースなどですね。
技人国ビザ取得が難しいケース
- 業務の大半が、一般的な農作業である
技人国ビザの要件
本人側の要件・・・大学(短期大学含む)を卒業していること。農学部卒業者のほうが許可されやすい傾向にあります。
職務内容の要件・・・簡単に言うと、業務の大半が農作業ではないことが必要です。つまり、主たる業務が管理系の仕事である必要があります。
技人国ビザ 単純労働不可の例外について
技人国ビザはホワイトカラー職のビザであるため、原則として一般的な農作業に従事することはできません。ただし、本来業務を行うためには現場を知る必要があります。こうした事情が考慮され、技人国ビザに該当しない活動であっても、それが日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であって、在留期間の大半を占めるようなものではないときは、総合的に判断された上で農作業が認められる場合があります。ただし、このスキームを使う時にはかなり高度な法的知識とノウハウが必要です。
補足:就労ビザ不要の外国人
以下の在留資格(ビザ)を持っている外国人は、就労ビザを取らなくても農業法人などで働くことができます。ただし、ビザによっては条件があります。
ビザの種類 | 就労制限 |
永住者 | なし |
定住者 | なし |
日本人の配偶者等 | なし |
特定活動ビザ(ワーキングホリデー) | なし |
留学ビザ | 週28時間以内※1 |
特定活動ビザ(継続就職活動) | 週28時間以内※2 |
家族滞在ビザ | 週28時間以内※2 |
※1 資格外活動許可を得ている場合に限る。在留カードの裏面に、「許可・風俗営業等の従事を除く」というスタンプがあればOK。また、留学生に限り、夏休み等の長期休暇期間は1日8時間以内の就労が可能。
※2 資格外活動許可を得ている場合に限る。
なお、相談後、コンサルティング業務等を依頼いただいた場合、相談料は業務料金の一部に充当します(実質無料相談)。
●相談後に要点メモをメールします(メモを取る必要がないので相談に集中できます。また、上司等への報告書や稟議書にも使用できます)
●関連資料のご提供(なかなか探しにくい法務省ガイドラインや過去判例の該当ページコピーなど
●相談後に追加質問がある場合、1週間以内であればメール1往復での追加相談可能
●その他、時間内で対応できること(文章作成、書類チェックなど)
有料相談のお申込み、ご質問などは、本ページ右上の「お問い合わせ」からご連絡ください。
この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一