【インタビュー】外国人雇用の現場を知る行政書士として

本日は、外国人の雇用や在留資格を専門とする、つくばワールド行政書士事務所の濵川(はまかわ)行政書士にお話を伺います。よろしくお願いいたします。

濵川よろしくお願いいたします。

外国人のビザを専門とする行政書士に至った経緯

はじめに、外国人のビザ申請を専門とした経緯から教えてください。

濵川これは私が行政書士になる前の話になりますが、外国人専門の人材紹介会社で働いておりました。上司は外国人、スタッフも外国人、日本人は私だけというスタートアップの企業でしたので、応募者の募集から、書類選考、企業への提案、求人広告の作成、面接同席、採用後の外国人社員の自宅探し、不動産賃貸契約の同席、社員教育、ビジネス日本語教育、国際結婚のサポートに至るまで、外国人のビザ、採用に関してありとあらゆることを経験しました。

ですから、行政書士になった時も、外国人に関わる業務をしたいと考え、自然とビザ申請を専門とすることになった経緯があります。

ちなみに、前職では、スタートアップ企業の厳しさ、およびブラックさも、身をもって経験しました。会社が軌道に乗るまでの約1年間、創業メンバー全員が給料なしだっため、私は、大手求人サイトで、求人企業の社長インタビューや求人記事を執筆するアルバイトをしていました。この経験は今でも非常に役立っています。様々な職種の実態を知ることができたので、それを在留資格の知見と組み合わせることにより、就労ビザの取得可能性判断や、正確な職務内容説明をする上で役立っています。

行政書士になる以前から、外国人の手続きに携わられていたのですね。それまでは自社の手続きを進める立場だったと思いますが、行政書士として業務を行うようになって、心がけるようになったことなどはありますか?

濵川そうですね。お客様の優先順位は何かということを常に考えるようにしています。ビザ手続きについて、とにかく丸投げしたい方もおられますし、できるだけ早期にビザを取りたい方もおられます。お客様が一番優先したいことを早めにお聞きし、その希望に沿って手続きを進めるようにしています。

また、フルサポートの場合、お客様の手間を極限まで軽減するよう心掛けています。法律的、物理的に代行できる作業は当事務所で行い、代行が不可能な作業だけお願いするようにしています。お客様にヒアリングシートを渡して、ここに仕事内容やこれまでの経緯などを詳しく書いてくださいというようなことはしていませんね。

ヒアリングシートを渡されて、記載した内容から手続きを進める行政書士事務所も多いのでしょうか。

濵川はい、事務所によっては、そういう対応のところもあると思います。お客様の負担は増えますが、お客様自身の言葉で書けるというメリットはあると思います。

ただ、多くの方にとって、書くよりも話すほうが、負担が軽いと思います。ですから当事務所では、面談時や電話でヒアリングし、行政書士が文章にまとめたものをお客様に確認いただくといった方法をとっています。関係ないことでもどんどん話していただければ、ビザの審査でプラスになる材料をたくさん見つけられるので、できるだけ話しやすい雰囲気を作るようにしたいと思っています。

ビザ申請で失敗しないために

行政書士の仕事では、要件をしっかり確定させていけば許可はほぼ下りる業務もあるかと思いますが、そんな中でビザ申請は不許可になることもあるため、そもそも業務としてリスクが高いため取り扱わないという事務所も多いと聞きます。濵川さんの事務所では、不許可とならないように、どのような工夫をされていますか?

濵川ビザの審査基準は頻繁に変更になります。以前は許可だったケースが突然不許可になることも多々あります。ですから、公開されている審査基準については、毎月確認するようにしています。

できるだけ不許可にならないように進めるためには、情報を常にアップデートする姿勢が求められるのですね。

濵川はい、突然、行政側の運用が変更になったり、新しい審査基準が公開されたりするので、注意が必要ですね。

ところで、先ほど触れられた「公開されている審査基準」というのは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。

濵川入管法令や法務省の通達、在留資格ガイドラインなどです。よく使用するものは、当事務所のホームページからもリンクを貼っています。また、一般公開はされていないのですが、「在留資格審査要領」といって、審査基準を細かく書いた文書があります。だいたい3000ページくらいあるのですが、これもよく改定されます。ですから、常に最新版をチェックするようにしています。

3,000ページは相当な量ですね!

濵川そうですね(笑)

チェックするたびに発見があり、審査官が好むキーワードや審査傾向を発見できることもあります。

許可要件が明確ではないビザ申請の手続き

他の許可手続きと違って、明確に「これを揃えれば許可は下りますよ」という要件も明確ではないのがビザ申請の特徴かと思いますが、そんな手続きの中で、役所と直接交渉することもあるのでしょうか?

濵川別事案について、審査官は明確に回答してくれることは、まずありません。ただ、許可になるためのヒントをいただけるときもあります。

10年以上この仕事をしていると、いろいろな審査官に出会います。公開している情報以外絶対に教えてくれない方もいれば、絶秒なヒントをくださる方もおられます。ビザの可否は、お客様の人生を左右することもありますから、審査官と話すときは、長年の経験と交渉テクニックを総動員して臨むようにしています。

その辺りは、暗に教えてくれているヒントを漏らさない注意力と、様々な申請経験が必要になりそうですね。ところで、入管の手続きは申請後に補正や追加書類が発生することもあると聞いたのですが、実務ではいかがでしょうか。

濵川最近、追加書類を求められることが多くなってきましたね。特に、永住申請や就労ビザでその傾向が強いです。

追加書類を求められた時は、通知書の内容をそのままお客様に伝えるのではなく、審査官が何を知りたいのか、どんな証拠や根拠を求めているのかも伝えるようにしています。

行政書士の方が、通知書を審査官の知りたいことに翻訳してくれる作業は、依頼する人にとってはかなり安心ではないかと想像します。ところで、濵川さんの事務所では様々な在留資格の申請に対応されていると思いますが、そんな中で「これは受任できないな」というケースはあるのでしょうか?

濵川偽装就労や偽装結婚のケースです。例えば、工場の製造ラインで組立作業の専従者として採用する場合、原則、特定技能ビザもしくは技能実習ビザを申請することになります。しかし、これらのビザは、手続きが煩雑であり、毎月の維持費(監理団体等に支払う費用)が発生します。ですから、企業側の負担が少ない技術・人文知識・国際業務ビザを申請してほしいと言われることがあるのですが、このケースでは違法になります。

私も社会人を20年以上続けてきましたので、世の中綺麗ごとだけではないことも重々承知しています。ただ、偽装就労は、法律違反となります。役員の方が懲役刑を受ける可能性もあります。

当事務所がサポートさせていただいた企業や個人の方が、依頼してよかったと思っていただけるような仕事をしたいと思っています。

たまに噂が出るような「黒を白」にするような相談は引き受けられないということですね。

濵川はい、そうです。

事務所によってサービス内容は違う

少し話題が変わりますが、外国人のビザを専門とする行政書士事務所は、全国に多数あると思います。外国人のビザ取得で失敗しない行政書士の選び方のコツといったようなものは、あるのでしょうか。

濵川外国人のビザを申請するためには、申請書類一式の作成、公的書類の収集、本国書類の翻訳、各種説明書の作成など、様々な作業が多数発生します。

はじめて外国人のビザを申請する場合、行政書士事務所に依頼することが多いと思われますが、事務所によって、サービス内容は大きく異なります。ビザ専門事務所に依頼したのに、自社でやることが多くてびっくりしたという事態にならないように、事前に事務所側で代行してもらえる作業を明確にしておきましょう。

先ほど話題にあがった、ヒアリングシートだけ渡されて「書いてください」と言われてしまうと、依頼者の手間は増えるということですね。

濵川はい、文章を書くのが負担にならないお客様もおられますが、根拠となる法令を正確に理解した上で文章を書くのはそれなりに大変です。

また、海外から呼び寄せる場合、在留資格認定証明書の取得(日本側の許可)をもって業務完了とする事務所と、来日までサポートする事務所があります。当該外国人が来日できなければ、ビザを取る意味がありませんので、この点も正確に確認したほうがよいと思います。

なるほど、確かにそもそもの目的は外国人を日本に呼び寄せて滞在してもらうことですから、証明書を取得するだけでなく、総合的に支援してもらえる事務所だと安心できそうです。ところで、濵川さんがビザの申請手続きに携わられる中で、確実にビザを取得するために必要なことは何だと感じられますか?

濵川現時点では、日本のビザは、書類審査です。つまり、法律要件を満たしているかどうかを、提出書類を基に審査されます。ごく一部の例外を除き、面接審査はありません。ですから、関連法令の正確な理解は勿論ですが、申請内容を正確に表現する文章力、その文章を書くための取材力やコミュニケーション能力が不可欠です。

確かに、入管は書類を受理して審査するのであって、面接の印象や話した内容から審査するわけではありませんね。

濵川そうです、そこで「文章力とコミュニケーション力」、このどちらが欠けていても、良い結果は出ません。

いくら行政書士の人当たりがよく、対応が早く、相性が合ったとしても、お客様からヒアリングした内容を正確に文章に落とし込む文章力、法律文書を作成できる構成力がなければ、不許可になることがあります。

逆もしかりです。文章力があっても、コミュニケーションが取りづらいなと感じたら、依頼しないほうがよいと思います。双方の信頼関係がないと、良い結果につながらないからです。

なるほど、依頼者と行政書士の間で情報伝達がうまく行かないと、その先もうまく行かない可能性が高いというのは、わかる気がします。

外国人雇用の現場のニーズを大切にしたい

最後になりますが、外国人雇用に必要な知見や手続きは、就労ビザだけではありません。外国人を採用する企業にとって、採用や教育、雇用管理はもっと重要だと思いますが、この点はどう考えていますか?

濵川就労ビザを扱う以上、ビザの知識だけでなく、外国人採用や雇用管理についての最低限の知識は必要です。そうでないと、お客様に寄り添うことが難しいからです。

私も、外国人の就労ビザ申請を専門とするからには、自分でも外国人を雇用してみるべきだと考えました。前社の人材紹介会社では、数百人の外国人の採用に関わりましたが、他社への人材紹介と自社での雇用は違うと思います。ですので、行政書士になって5年目、それまでいた日本人のスタッフが退職したタイミングで、外国人を採用しました。

実際に外国人を雇用したからこそ、外国人雇用の難しさ、ありがたさを、身をもって体験しました。こうした経験も活かして、業務を行っていきたいと考えております。

実際に雇用してみたからこそ、見えてくるものもあるということですね。

濵川はい、ただ反省点も多いです。自己流の雇用管理を行ったため、彼らの実力を十分に発揮させることができず、配慮も足りず、優秀な人材に早期退職されてしまうことが重なりました。この時の経験により、「机上の理論と現場は違う」ことを痛感。また、就労ビザだけ取ればよいという考えではなく、長期的に見て、企業と外国人の双方にとって良い採用をサポートしたいという思いが強まりました。

そこで、外国人雇用に成功している企業がどのような採用育成をしているのか、採用企業の経営者、人事担当者に直接取材し、その内容をまとめた著書を出版しました。首都圏の主要図書館に置いていただいていますので、よろしければぜひご覧ください。

また、外国人側の実情を理解するため、中国、ベトナム、ミャンマー、ハンガリーの送り出し機関、日本語学校、外国人の実家等を訪問し、彼らが日本での就労に求めていること、現実とのギャップを目の当たりにしました。

世界には、優秀な人材がたくさんいます。日本で暮らす外国人の方の中にも素晴らしい方がたくさんいます。そうした外国人が日本で安心して暮らすため、法的な側面からサポートしていきたいと思います。

本日はお時間をいただき、ありがとうございました。

濵川こちらこそ、ありがとうございました。

 

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