<人材会社からの相談> 弊社では特定技能外国人の登録支援業務を行いたいのですが、入国後の手続き(在留資格申請や支援業務)について、登録支援機関ができること、禁止されていることを知りたいです。また、人材会社、行政書士が行う業務の線引きについても教えてください。 |
特定技能外国人への法定支援業務とは
特定技能外国人を採用した場合、法律で定められた10種類の支援を行う必要があります。入国前と入国後に分けて解説します。
入国前の支援業務
事前ガイダンスの実施
もともと日本にいる留学生等の場合、事前ガイダンスは不要ですが、海外から入国する場合は必須となります。日本での就労や生活に必要な内容を8時間かけてしっかり教えます。現地社員が講師をする場合とオンラインで行う場合がございます。いずれにしても、本人達が十分に理解できる言語(通常は母国語)で行うか、通訳者を付けます。また、8時間という長丁場ですので、数日に分けて行うか、関連動画を見せたり、グループワークを取り入れたりして、実践的な内容になるよう工夫が必要です。8時間全て、講師からの一方的な話を聞くだけだと、本人達はほぼ間違いなく居眠りをします。これではガイダンスの意味がありませんよね。いろいろ工夫しながらガイダンスを実施しましょう。
住居の確保
特定技能外国人が来日してすぐに生活できるよう、社宅や寮を用意するか、もしくは賃貸物件の契約をすませておきましょう。そして、水道光熱の契約も必要です。そして、忘れてはいけないのはインターネット回線の契約です。これは事実上必須です。ネット回線がないと、母国の親族や友人との通話ができませんし、母国の情報も得にくくなります。外国人本人達にとっては死活問題ですので、なんとしても事前に準備しておきましょう。
出入国の際の送迎
特定技能外国人が入国する航空便の情報を共有しておき、入国時に空港まで迎えに行きます。空港内で連絡が取れるように、登録支援機関の担当者とSNS(LINEなど)を事前に交換しておくとよいです。外国人が日本に入国したばかりでは携帯番号を持っていませんので、ネットでつながる手段を確保しておきましょう。また、万が一、空港の入国審査で引っかかった時の場合に備え、事前に、在留資格認定証明書のコピーと今回の入国目的を書いたレターを本人達に持たせておくとよいです。本人達は、まだまだ日本語で今回の来日目的を明確に話せないことが多いですので、こうしたきめ細かいサポートも必要です。
入国後の支援業務
生活オリエンテーションの実施
日本での生活に必要な事項(金融機関、医療機関の利用方法、交通ルールなど)、在留資格に関する事項、税金の基礎知識などを、当該外国人が十分に理解できる言語で説明します。日本人が講師をする際には、通訳者をつけるのが一般的です。なお、基本テキストは、法務省出入国在留管理庁の公式サイトからダウンロードできます。
公的手続き等への同行
必要に応じて、市役所での住所変更、納税の手続き等に同行し、書類作成の支援を行います。また、スマートフォンの契約もサポートしてあげたほうがよいでしょう。日本人なら誰でも経験のある手続きですが、外国人ならではのルールや手順があります。
日本語学習機会の提供
日本語学習教材やオンラインレッスンに関する情報提供、会社内での日本語教育の実施などです。誤解しやすいのですが、会社内で日本語レッスンをすることは必須ではありません。もちろん、社内で日本語レッスンを実施してあげるのが一番ですが、「日本語をブラッシュアップしたい時は、こういう無料の制度があるよとか、こういうオンラインレッスンがあるよ」といった情報提供をすれば大丈夫です。
相談、苦情対応
当該外国人が十分理解できる言語(原則として母国語)で相談や苦情に対応する体制をつくる必要があります。よくあるケースとしては、フェイスブックグループを作って、登録支援機関の担当者に、24時間365日、連絡相談できるようにしているケースです。
日本人との交流支援
地域のお祭りやイベント情報の案内、外国人支援ボランティアなどの案内など。これも、今後1年間の地域イベント情報を調べ、外国人が見やすい場所に掲示しておくなどして実施しましょう。
会社都合退職の際の転職支援
万が一、会社都合による退職になった場合、引き続き日本での就労を希望する外国人について、転職サポートをする必要があります。具体的には、特定技能外国人の求人情報を調べ、応募書類の作成支援や、募集企業との連絡調整などです。
定期的な面談、行政機関への通報
3ヶ月に1回以上、当該外国人と面談し、仕事や生活面での悩みや要望などをじっくり聞きます。この面談についても、外国人が十分に理解できる言語で行うことが必要ですので、通訳者なども必要になってきます。そして、定期面談後には、定期面談に関する報告書の作成義務もあります。
特定技能外国人に関する届出とは
特定技能外国人を受け入れた場合、受入企業と登録支援機関が、それぞれ出入国在留管理局に対し、届出書類を作成し、提出する必要があります。届出には2種類あります。
定期届出・・・四半期毎(3ヶ月毎)に提出する
随意届出・・・変更がある時に提出する。就労時間や就労場所の変更など
また、各種届出には提出期限があります。期限を過ぎて提出した場合、また提出しなかった場合、次回のビザ更新の際に、影響します。提出が遅れた理由や今後の対策などを書面にして提出しなければならず、いろいろと面倒です。遅れずに提出するようにしましょう。
特定技能外国人の支援・届出 登録支援機関ができること
特定技能外国人が入国後の手続き(在留資格申請や支援業務)について、登録支援機関、人材会社、行政書士が行う業務の線引きは以下の図のとおりです。
注意していただきたいのは、登録支援機関は、特定技能1号の在留資格申請、つまり申請書類を出入国在留管理局に持参して申請手続きを代行することはできます。しかし、在留資格申請書類の作成はできませんので注意してください。
また、法律で定められた届出書類の作成についても、登録支援機関が代わりに作成してあげることは違法となりますので、注意してください。
とはいっても、実際の現場では、登録支援機関が在留資格申請書類や届出書類を作成しているケースはあるようです。現状では、登録支援機関が書類作成したために、行政庁から処分されたという事例はないです。ただ、本当は違法なんだということだけは知っておいていただきたいです。
また、最近では、コンプライアンス強化のため、在留資格申請書類や届出書類の作成は行政書士に依頼し、申請代行(申請取次)を登録支援機関が行うといった役割分担を明確にしているケースも増えてきました。
登録支援機関 | 人材会社 | 行政書士 | |
10の法定支援 | 〇 | × | × |
在留資格の申請 | 〇 特定技能1号のみ |
× | 〇 全ての在留資格 |
在留資格申請書類の作成 | × | × | 〇 |
法定の届出書類の作成 | × | × | 〇 |
コンプライアンスを守った登録支援業務を行うために、どのように改善すべきなのか、特に細かい部分については、個々のケースによって異なります。登録支援業務について、疑問点が生じたら、一度、専門家に相談されることをお勧めします。当事務所では、下記の顧問サービス(単発コンサルティングもあり)を提供しております。貴社の外国人材ビジネスの利益につながる顧問サービスです。
この記事を書いた人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一