2024年、技能実習制度はどう変わっていくか? <有識者会議のポイント解説>

2022年12月から16回にわたり開催された技能実習制度に関する有識者会議での議論を踏まえた最終報告書が、2023年11月30日、法務大臣に提出されました。その報告書が公開されたので、要点を解説します。

なお、この記事は、2023年12月1日現在の情報をもとに書いています。

技能実習→新たな制度創設の背景

新たな制度創設の背景としては、技能実習制度が人権侵害であるという厳しい批判があったことがあります。そのため、有識者会議では「まずは外国人の人権が十分に担保されることが優先である」という意見が出されました。「安価な労働力としてではなく、産業の担い手としての人材の育成・当人のキャリアアップが図れる制度でなくてはならない」ということです。

新たな制度は人材確保と人材育成という2つの側面を持つ制度ですが、このうち「人材確保」は技能実習制度では認められなかったものです。有識者会議では、新たな制度創設は事業者の労働力を確保したいという要望に制度を合わせることが主目的でであるという意見もありました。そして、新たな制度と特定技能と連続的に捉え、段階的に技能水準を上げ、スムーズに移行できるようにすべきであるという指摘がなされました。

人材育成に関しては、産業分野別の標準カリキュラム等が必要となるが、各業界や業種ごとに育成プログラムには差異があると共に企業ごとにも差異があるため、長期的に外国人を育成するには、プログラムの柔軟性と標準化のバランスをとることが非常に重要であるという意見や、業所管省庁と業界団体の連携も重要であり、育成プログラム作成には相当な労力が必要になることが予想されるという意見が出されました。

特定技能制度は存続する見込み

提言では、もともと人手不足の解消を目的として創設された特定技能制度は維持し、制度の適正化を図った上で存続させることとされています。

そいて、新たな制度は基本的に3年間を就労期間として設定し、未熟練労働者として受け入れた外国人を特定技能1号の技能水準の人材に育成することを目指すと述べられています。つまり、新たな制度から特定技能1号への移行を前提とした人材育成が必要だということです。

その他、家族帯同については現行制度同様、新たな制度と特定技能1号では認めないこと、現行の企業単独型技能実習は必ずしも新たな制度の趣旨・目的に沿わないものの、別の枠組みで受け入れることを検討することも提言に盛り込まれました。

新たな技能実習制度の方向性

以下、有識者会議の議事録から気になったポイントを解説したいと思います。

※図出典:法務省公式サイト

人材育成機能や職種・分野等の在り方について

新たな制度は特定技能1号への移行に向けた人材育成を目的とするものであるため、新たな制度の受入れ対象分野は特定技能の分野に限定される見込みです。

このため、従来の技能実習制度では認められていた縫製業や工業包装の分野での受入ができなくなる可能性があります。しかし、業界団体からの強い要望もあり、折衷案も検討されています。例えば、「工業包装」については、「製造」分野に含めるといった案ですね。

また、外国人が従事する業務範囲については、現行の技能実習制度のように細かく作業区分を分けて実習計画を立案するのではなく、特定技能への移行を見据えた体系的な能力を修得できるようにする案が出されています。技能評価の方法としては、現行の技能検定等のほか、特定技能1号評価試験により行うことを認め、特定技能1号への移行試験で不合格となった場合の救済措置も設けられるようです。

受入見込み数の設定等について

提言では、受入れ見込数について、日本人の雇用機会や労働条件への影響や外国人の安定的な就労などの観点から、受入れ分野ごとに受入れ見込み数を設定し、これを受入れ上限数として運用する。

新たな制度および特定技能制度における受入れ見込数や受入れ対象分野は、経済情勢等の変化に応じて柔軟に変更出来る運用とし、有識者・関係団体等で構成する新たな会議体の意見を踏まえ、政府が判断する。

技能実習生の転籍(転職)を認める条件

提言では、「やむを得ない事情がある場合」の転籍と、「本人の移行による転籍」を分けて考えている。

「やむを得ない事情がある場合」は、現行の技能実習制度で認められている範囲を拡大・明確化し、手続きを柔軟化する。「本人の意向による転籍」では、同一受入れ企業における就労期間が1年以上であること、技能検定(基礎級)等及び日本語能力試験N5相当の試験に合格していることといった一定の条件を満たす場合に認める。この場合、転籍前の受入れ企業が負担した初期費用については、転籍後の受入れ企業にも相当金額を負担させることも含め、転籍前後の両企業に不平等が生じないような措置がとられる。転籍範囲は、現に就労している分野と同一分野内に限定する。

転籍支援の担い手は、新たな制度の下での監理団体を中心としつつ、ハローワークや外国人技能実習機構に相当する新たな機構等と連携して行う。

監理・支援・保護の在り方

監理団体については、新規や更新の許可要件が厳格化されます。転籍の緩和なども考えると、監理団体の役割はますます重要となってきます。

優良監理団体に対しては手続き書類の簡素化や届出頻度軽減などの優遇措置を講じ、また、優良な受入れ企業に対しても、優良監理団体同様インセンティブを与えることが予定されています。

特定技能制度の適正化方策

新たな制度から特定技能1号への移行要件として、技能検定3級等以上又は特定技能1号評価試験への合格に加え、日本語能力試験N4相当以上の試験合格が必要とする。

また、登録支援機関の適格性や質の担保、外国人への支援必要性をふまえ、要件の厳格化と支援業務の委託先を登録支援機関に限ることとする。

国・自治体の役割

関係機関の連携強化を強化し、不適正機関の廃除、受け入れの適正化をはかる。また、日本語学習の質の向上、外国人の相談窓口整備などについても、関係機関の協力が不可欠である。

送り出し機関及び送り出しの在り方

送出国政府との二国間取決めを新たに作成し悪質な送出機関を排除し、各送出機関の情報の透明性を高めて監理団体が良質な送出機関を選択できるようにする。さらに、二国間取決めに基づく協議の際には他国の情報を提供して、送出国間の競争を促す。

各送出機関の情報公開を通じ、来日前の手数料の透明化を図り、受け入れ企業の来日前手数料負担の仕組みを導入する。

日本語能力の向上方策

就労開始前と特定技能1号・2号移行時の要件についてさだめ、受け入れ企業の支援促進、段階的な日本語能力向上を図る。

それぞれの要件は、就労開始前が、日本語能力試験N5相当以上の試験への合格又は入国直後の日本語講習受講・試験合格、特定技能1号移行時が、日本語能力試験N4相当以上の試験への合格(当分の間は相当レベルの日本語講習受講も可)、特定技能2号移行時が、日本語能力試験N3相当以上の試験への合格とする。

同時に、日本語教育の質向上のために、認定日本語教育機関や登録日本語教師を活用する。

 

 

相談の予約、お問い合わせは、下記フォームより送信ください。

    ※メール送信できない場合。お手数ですが、下記まで直接メールでお願いいたします。
    oto@svisa.net

    ※当事務所のサービスを必要とする方に、最大限のサポートを提供させていただくため、誠に恐縮ですが、以下のようなご事情の方は、有料相談をご利用ください。

    ・今すぐに手続きする必要はないが、事前に全体的な話や注意点等を聞いておきたい
    ・手続きは既に他の事務所に依頼しているが、セカンドオピニオンを聞きたい
    ・非通知や匿名希望のご相談

    どのようなビザの相談ですか?
    技術・人文知識・国際業務(一般企業で働くビザ)経営管理ビザ配偶者ビザ永住者ビザその他

    ページトップへ戻る