単純作業と技術職では取得するビザが違う
製造業で外国人が働く場合、よく利用される就労ビザは以下の4つです。簡単に要点を図にまとめました。
日本の大学や専門学校を卒業した留学生を採用する場合、技術・人文知識・国際業務ビザもしくは特定活動46号ビザのどちらかになります。
現場で作業させたい場合は、監理団体(国際人材紹介会社)を介して海外から呼び寄せることが多いです。
技術・人文知識・国際業務ビザ
大学や専門学校で技術系科目を履修した外国人が、機械工場や部品工場などにおいて、研究開発や生産管理、設計などの仕事に従事する場合、ホワイトカラーの就労ビザである「技人国ビザ」を取得できる可能性があります。
※技人国ビザとは、技術・人文知識・国際業務ビザの略称です。
技人国ビザは、技能実習や特定活動に比べて、採用コストやビザ取得にかかる労力が遥かに少ないため、できれば技人国ビザで採用したいというニーズが高いです。
※技能実習生や特定技能外国人を雇用するためには、細かい条件があり、ビザ申請時や更新時に膨大な書類(通常、50~100種類)が必要です。また、毎月の管理委託費もかかります。
技人国ビザが許可されやすいケース(一例)
- 工場内で機械オペレーターとして勤務する。材料工学や構造力学等の素養がないとできない業務であり、それを立証できる。
- 工場内で生産管理、工程管理、品質管理等に従事する。流れ作業ではなく、解析ソフトやシミュレーションソフト等を使用する業務である。
技人国ビザ取得が難しいケース(一例)
- 業務の大半が、流れ作業、組み立て作業、溶接作業などの現場作業である。
技人国ビザの要件
本人側の要件・・・大学(短期大学含む)を卒業していること。もしくは日本の専門学校を卒業し、専門士の学位を取得していること
職務内容の要件・・・簡単に言うと、現場労働、単純労働ではないことが必要です。つまり、誰でもできる仕事ではなく、専門知識や素養を必要とする仕事に従事する必要があります。
工場内勤務の場合、現場作業ではないかと判断されやすいです。外国人の就労ビザの審査をする出入国在留管理局では、外国人が工場内で現場作業に従事されるのでれば、多少大変であっても、(コストがかかっても)、技能実習ビザや特定技能ビザなどを活用してくださいという明確な方針を打ち出しています。
ですから、工場内勤務での技人国ビザの審査は非常に厳しく、細かいです。
製造業での技人国ビザ 事例解説
当事務所では、このケースでの申請を得意としておりますが、幾つか具体例で説明します。
事例1:精密部品工場で、CAD専門学校を卒業した外国人を採用
このケースでは、工場内で作成している図面サンプルを幾つか提出し、月平均でどれくらいの図面を作成するのか、1枚の図面作成にどれくらいの時間がかかるのか、その根拠などを丁寧に説明しました。ここまで書いておかないと技人国ビザは許可にはなりません。採用する側にとって、技人国ビザは非常使いやすい就労ビザである反面、厳しく細かい審査があります。このケースは、実際に図面作成する時間が少ないのではないか、他の時間は現場作業に従事するのではないかとの疑義が持たれやすいケースです。
事例2:機械部品工場で、大卒(理系)の外国人を採用
採用した外国人の職務内容は、生産管理業務です。技人国ビザの申請時に、生産管理業務とだけ書いて提出すると、かなりの確率で不許可になります。実際にあった事例ですが、上場企業の工場で外国人を採用された際に、不許可となりました。再申請を当事務所に依頼いただき、許可となったのですが、この時に追加で提出した書類は以下です。
- 生産管理業務についての詳細説明書
- 取り扱う製造機械、ロボットの概要を説明した書類
- 上記機械を取り扱うために、理系大学の知識が必要であることの根拠を説明した書類
- 実際に仕事に従事している時の写真数点
つまり、従事する場所は工場内であるけれども、現場作業や組立作業、単純作業などではなく、専門知識を必要とする仕事であるということを、文系の審査官が読んでもわかるように説明しました。この時、技人国の審査基準が記載されている在留資格審査要領のチェックは必ず必要です。自社で申請される際は、審査要領の該当部分もチェックされることをお勧めします。
事例3:日本の専門学校卒業の外国人を本社の管理部門で採用
たとえば、製造販売を行う会社の本社で営業や経理の仕事をする場合、工場の管理部門で購買や外国人技能実習生の労務管理などを担当する場合です。
本社勤務の場合、現場労働の疑いようがありませんので、職務内容についての説明はそれほど厳しく審査されません。
勤務先が工場である場合、本当にその仕事をするのか、実は現場労働ではないのかという目で審査されます。失礼な話なのですが、外国人の就労ビザ審査はそういうものだと思ってください。
ここで注意いただきたいことは、外国人技能実習生の労務管理などを担当する場合です。たとえば、外国人技能実習生が5人程度の場合、労務管理の専従者としてわざわざ1人採用する理由がないと判断されます。つまり、他の時間はどんな仕事を担当しているのかということが聞かれます。
技人国ビザでの一定期間の現場労働は可能
技人国ビザはホワイトカラー職のビザであるため、原則として現場で働くことはできません。ただし、本来業務を行うためには現場を知る必要があります。こうした事情が考慮され、技人国ビザに該当しない活動(例えば、飲食店での接客や小売店の店頭における販売業務、工場のライン業務等)であっても、それが日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であって、在留期間の大半を占めるようなものではないときは、総合的に判断された上で現場労働が認められます。このスキームを使う時には法的テクニックが必要なのですが、法的要件を満たせば問題なく技人国ビザが許可されます。
特定活動46号ビザ
本人 |
本邦の4年制大学卒業および日本語能力試験N1合格者 |
企業 |
経営安定性あればOK |
職務内容 |
日本語での円滑なコミュニケーションが必要な業務であること(ライン作業は微妙) |
特定活動46ビザについては、こちらのページでも詳しく解説しています
特定技能ビザ
特定技能ビザの要件
本人 |
・3年間の技能実習修了者 |
企業 |
・飲食料品製造業、素形材産業、産業機械製造業、電気、電子関連産業 ・社保完備、2期連続赤字でないこと等、多数あり(技能実習受入企業であればほぼ問題ない) |
職務内容 |
単純作業OK |
3年間雇用している技能実習生がいる場合、特定技能ビザに切り替えることで、さらに5年間の雇用が可能となります。技能実習生として来日してから、2年10ヶ月が経過した時点で、切り替えの手続きが可能です。
また、元技能実習生(3年満了者)であれば、特定技能外国人として、呼び戻すことも可能です。
特定技能ビザに切り替えるメリット
毎月の管理費が不要(自社管理の場合)
技能実習生の場合、監理団体に毎月管理費を支払う必要がありましたが、特定技能の場合、自社管理か外注かを選択することができます。
特定技能ビザ(製造業)必要書類例
お客様に用意いただく書類は、黄色マーカーの書類です。社会保険や税務関係の書類は、当事務所で収集代行も可能です(オプション)。
- 在留資格認定証明書交付申請書 / 在留資格変更許可申請書
- 特定技能外国人の報酬に関する説明書
- 特定技能雇用契約書の写し
- 雇用条件書の写し
- 事前ガイダンスの確認書
- 支払費用の同意書及び費用明細書
- 徴収費用の説明書
- 特定技能外国人の履歴書
- 健康診断個人票
- 特定技能所属機関概要書
- 雇用の経緯に係る説明書
- 登記事項証明書
- 役員の住民票の写し (本籍あり、マイナンバーなし)
- 決算文書(損益計算表及び貸借対照表又は収 支計算書)(直近2年分)
- 法人税の確定申告書の控え(直近2年分)
- 労働保険料等納付証明書(未納なし証明)
- 領収証書の写し(直近1年分)、労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書(事業主控)の写し(領収証書に対応する分)
- 雇用契約の成立があっせんする者がある場合、職業紹介事業所に関する「人材サービス総合サイト」(厚生労働省職業安定局ホームページ)の画面を印刷したもの
- 社会保険料納入状況照会回答票
- 税目を源泉所得税及び復興特別所得税、法人税、消費税及び地方消費税とする納税証明書
- 税目を法人住民税とする納税証明書(前年度)
- 1号特定技能外国人支援計画書
- 特定技能外国人受入れに関する誓約書等
参考:就労ビザ不要の外国人
以下の在留資格(ビザ)を持っている外国人は、就労ビザを取らなくても製造業の会社(工場含む)で働くことができます。ただし、ビザによっては条件があります。
ビザの種類 | 就労制限 |
永住者 | なし |
定住者 | なし |
日本人の配偶者等 | なし |
特定活動ビザ(ワーキングホリデー) | なし |
留学ビザ | 週28時間以内※1 |
特定活動ビザ(継続就職活動) | 週28時間以内※2 |
家族滞在ビザ | 週28時間以内※2 |
※1 資格外活動許可を得ている場合に限る。在留カードの裏面に、「許可・風俗営業等の従事を除く」というスタンプがあればOK。また、留学生に限り、夏休み等の長期休暇期間は1日8時間以内の就労が可能。
※2 資格外活動許可を得ている場合に限る。
この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一