このページでは、外国人が日本の企業で働く(ホワイトカラー職)時に必要となる技術・人文知識・国際業務ビザの申請方法について、詳しく解説しています。
技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国)とは
外国人が日本の企業等でホワイトカラーの仕事に従事する際には、技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国ビザ)を取ることになります。特に、留学生が就職する場合、ほとんどのケースでは、技人国ビザを取ることになります。
この技人国ビザを取得するためには、会社側の要件、本人側の要件、そして職務内容に関する要件があります。
技人国ビザ 本人側の要件
原則として、大学を卒業し学士の学位があること。もしくは日本の専門学校を卒業し、専門士の学位を取得していること
技人国ビザ 会社側の要件
事業の安定性、継続性があること。従業員の源泉徴収合計額、直近の決算状況、設立年数など複数の要素から総合的に判断されます。
技人国ビザ 仕事内容の要件
法令に記載されている仕事内容についての要件は下記です。
「自然科学や人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務、又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」
具体例としては、下記になります。
システムエンジニア、技術開発、管理業務、デザイン、通訳翻訳、海外取引業務、マーケティング、企画、営業など。
簡単に説明すると、日常的にパソコンを使う業務、ホワイトカラーの仕事であれば、だいたい該当します。
なお、法務省のホームページでも、技人国に該当する典型的な業務として下記が記載されています。
○本国において工学を専攻して大学を卒業し,ゲームメーカーでオンラインゲームの開発及びサポート業務等に従事した後,本邦のグループ企業のゲーム事業部門を担う法人との契約に基づき,月額約25万円の報酬を受けて,同社の次期オンラインゲームの開発案件に関するシステムの設計,総合試験及び検査等の業務に従事するもの。
○本国において工学を専攻して大学を卒業し,ソフトウェア会社に勤務した後,本邦のソフトウェア会社との契約に基づき,月額約35万円の報酬を受けて,ソフトウェアエンジニアとしてコンピュータ関連サービスに従事するもの。
○本国において電気通信工学を専攻して大学を卒業し,同国にある日本の電気通信設備工事業を行う会社の子会社に雇用された後,本邦にある親会社との契約に基づき,月額約24万円の報酬を受けて,コンピュータ・プログラマーとして,開発に係るソフトウェアについて顧客との仕様の調整及び仕様書の作成等の業務に従事するもの。
留学生時代の資格外活動も審査対象となる
この他、次の要素も審査の対象となります。まず、本人が留学生の場合、学生時代のアルバイトが資格外活動の範囲内であったかどうかかについて厳しく審査されます。つまり、在学中のアルバイトの時間が、原則週に28時間以内であったかどうかです。
会社側・仕事内容に関しては、過去に出入国在留管理に関する法令違反がないかどうか、同レベルの日本人と同等以上の報酬であるかなども審査対象となります。
仕事内容を具体的に説明しないと不許可になる
会社や本人については、全く問題なくても、職務内容に問題があり、就労ビザ(技人国ビザ)が不許可になることもあります。また、職務内容は、就労ビザの要件を満たしているのですが、それを書面で正確に記載しなかったため、あるいは誤解を招きやすい表現をしてしまったため、不許可になる可能性があります。また、職務内容を説明する際、業界用語は使わないほうが無難です。業界内でごく一般に用いられる用語であっても、審査官が慣れ親しんでいる法律用語や行政用語では全く別の意味と捉えられるケースがあるからです。
通常、こういうケースでは、いきなり不許可になってしまうこともありますが、入国管理局から「職務内容に関する詳しい説明書を出してください」という追加書類通知書が来ることがあります。
職務内容がビザ基準に該当するかどうかについては、入管法第7条第一項第二号の基準を定める省令(基準省令)を基に判断されます。ただ、この省令は難解な法律用語で書かれていますので、ごくごく簡単に、原則を説明すると以下になります。
通訳翻訳、海外営業、貿易業務、IT技術者等の「専従者」として採用し、専従者としての業務量も十分にある場合は問題ないのですが、上記以外の場合、個別判断となります。
個別判断に該当するケースでは、審査の参考になるような書類を多数用意し、提出したほうがよいです。具体的などのような書類を提出したほうがよいかについては、個々のケースにより異なりますので、お問い合わせください。
就労ビザを取ることができなければ雇用することはできません。そのままの状態で雇用すれば違法就労をさせていることとなるので、絶対に雇用しないでください。
技術・人文知識・国際業務ビザ 審査基準
技術・人文知識・国際業務ビザの審査では、下記の基準に該当しているかどうかを厳しくみられます。
在留資格の該当性 |
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上陸許可基準適合性 |
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在留資格の相当性 |
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雇用安定性、継続性 |
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職務内容の蓋然性 |
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非虚偽性 |
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法律上の届出義務 |
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技術・人文知識・国際業務ビザ 必要書類
在留資格変更申請書(在留資格認定証明書交付申請書)
出入国在留管理局のホームページからダウンロードできます。海外から呼び寄せる場合、「在留資格認定証明書交付申請書」、他のビザからの変更の場合、「在留資格変更申請書」
申請人(外国人)の証明写真
直近3ヶ月以内に撮影したもの。ですので、原則、現在持っている在留カードやパスポートの写真とは別の写真をご用意ください。街中にある証明写真機で撮影してもよいですし、出入国在留管理局の近くにも証明写真機があります。また、「ぴくちゃん」という無料アプリを使って、自撮りしたお気に入りの写真を証明写真にすることも可能です。セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンで証明写真が印刷できます。
サイズは、4cm×3cmです。
申請人のパスポート
現在、日本にいる方の場合、原本を提示します。海外から呼び寄せる場合、コピーが必要です。コピーするページは、顔写真ページ、日本への出入国スタンプページ全てです。
自動化ゲートを使って日本へ出入国している場合は、出入国スタンプはありませんので、そのページは不要です。
申請人の在留カード
現在、日本にいる方の場合、原本を提示します。海外から呼び寄せる場合、在留カードはありませんので、提出不要です。
申請人の学歴を証明する書類
技人国ビザには学歴要件があります。日本の学歴であれば、短期大学(準学士)以上、もしくは専門学校卒業(専門士)であることが要件です。
海外の学歴であれば、大学卒業相当以上となります。海外の専門学校を卒業していても、技人国ビザの学歴要件を満たしません。
現在、日本にいる方の場合、日本での最終学歴の卒業証明書を提出します。大学と専門学校の両方を卒業されている方の場合、両方の卒業証明書を提出したほうがよいでしょう。
海外で大学を卒業している場合、卒業証明書は外国語で作成されるはずですので、その和訳も付けてください。和訳は誰が行っても構いませんが、翻訳日と翻訳書の氏名を記載しておきましょう。翻訳会社に依頼した場合、翻訳証明書を発行してくれる場合がありますので、その翻訳証明書も提出します。
申請人の実務経験を証明する書類
申請人が、技人国ビザの学歴要件を備えていない場合に必要となります。
日本語試験合格証のコピー
必須提出書類ではありませんが、何等かの日本語資格がある場合、その合格証、結果通知書などのコピーを用意してください。
特に通訳翻訳の要素がある職種の場合、提出したほうが有利です。
内定先(就職先)の登記事項証明書
法務局で取得します。全国どこの法務局でも取得できます。履歴事項証明書(3年前から現在までの登記事項全て記載のもの)と現在事項証明書(現時点での登記事項のみ記載のもの)がありますが、どちらでも構いません。
取得に際し、委任状は不要です。法務局に行けば誰でも取得できます。
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
税務署受付印のあるもの(会社控え)が必要です。電子申告の場合、税務署受付番号が記載された受付画面も印刷してください。税務署印、税務署受付番号がない場合、この書類は提出されなかったものとして扱われます。
会社控えを保存していない場合、管轄の税務署に相談して再発行してもらってください。それが難しい場合、税務署に提出した日、会社控えを保存していない理由(紛失等)を書面にして提出したほうがよいでしょう。
直近年度の決算書類
損益計算書と貸借対象表のページを提出します。大幅な赤字や債務超過になっている場合、注意が必要です。決算状況によっては、今後の事業計画書や税理士さんの意見書を提出したほうがよい場合もあります。
雇用契約書(内定通知書)
正確には、労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき,労働者に交付される労働条件を明示する文書となります。厚生労働省のホームページに、法律に基づく雇用契約書のひな型が掲載されており、ダウンロードも可能です。外国語の雇用契約書のひな型も用意されていますので、ぜひ活用ください。
雇用契約書の代わりに、内定通知書でも構いません。その場合も、上記のひな型を参考にして作成してください。
いずれにしても、技人国ビザが許可される前(1~3ヶ月前)に準備しておかなければなりません。ですから、備考欄等に、「勤務開始日は、就労可能な在留資格が許可された後とする」といった文言を記載するようにしてください。
会社概要書
会社パンフレットがあれば、それで構いません。また、ホームページの会社概要ページを印刷したものでも代用できます。ただし、あまりに情報が少ない場合、足りない情報を別紙にして提出したほうがよいでしょう。
会社概要書に必要な情報は、会社名、役員名、事業内容、主要取引先、取引実績(取引年数や年間取引額)、資本金、創立年、沿革などになります。
職務内容説明書
申請人の職務内容について、詳しく説明した書類です。技人国ビザは、一定の専門知識やスキルが必要とされるホワイトカラーの仕事に従事する際に許可されるビザとなります。ですから、申請人の担当職務が、一定の専門知識やスキルを必要とする仕事であること、誰でもできる単純労働ではないことを丁寧に説明する必要があります。
文章だけで説明が難しい場合、実際に職務を行っている写真(既存社員で同職種についている方の仕事中の写真)や、勤務場所の写真、業務上作成する文書サンプルなどを提出してもよいでしょう。また、パソコンを使って仕事をする場合、業務で使用するソフトやアプリの名称、バージョン名などを記載することで、業務内容の信ぴょう性が高まります。
また、実際の職務内容をイメージしやすくするため、1週間の業務スケジュール、1日の業務スケジュールを添付することもできます。
技人国ビザの更新に必要な書類
- 在留資格更新申請書
- 申請人のパスポート(原本)
- 申請人の在留カード
- 証明写真
- 住民税の納税証明書
※直近年度分・未納税ないもの。未納があると、不許可になったり、審査がかなり長引きます。取得時に未納がないか必ず確認してください。役所の窓口で指摘を受けることもありますが、何も言ってもらえないこともありますので、取得した際に、「現時点での未納はないですよね」と確認してください。もし未納があった場合、その場で納付すれば新しい納税証明書、つまり未納なしの納税証明書を発行してもらえます。取得する場所は、当該年の1月1日に住んでいた市区町村の役場です。年度の数え方は少し複雑ですので、住民票を取る際に、市役所等で、「直近年度の住民税納税証明書(未納分ないもの)をください」と言えばわかると思います。2年以内に引越しをされている場合、前住所の市役所等で発行されることがあります。 - 住民税の課税証明書。直近年度分・前年分の年間所得額、課税額が記載されたもの
上記は一例です。状況によっては出すことで審査が煩雑になったり、他の書類との整合性が問題になるケースもあります。なんでもかんでも出せばよいというものでもありません。また、説明書類については、書く内容についてポイントや注意点があります。何をどのように用意して提出するかについては、プロの判断を仰いだほうが安心です。
技人国ビザ よくある質問
入社後、数年間は現場で勤務させることができますか?
例えば、製造業の会社で外国人を採用した際、入社後数年間は工場で勤務し、その後、本社で海外営業等をしてもらうといった場合ですね。他にも、飲食店チェーンを展開する会社が外国人採用した際、入社後数年間は、店舗でスタッフとして働き、その後、本社に戻ってマネージャー等の仕事をする場合が想定されます。
こうしたケースの場合、下記状況であれば、技人国ビザのビザの許可可能性が高いです。 実際は細かい要件があり、会社側から詳細をお聞きする必要がありますが、 ポイントだけ記載します。
- 1~3年以内に、本社スタッフ(営業、経理、経営企画、店舗マネージャ等)として勤務する予定であり、そのために必要な実務研修として現場(店舗)で1~3年勤務する。
- 日本人社員も同様のキャリアシステムになっている。
なお、このスキームを使う場合、会社のキャリアパスに関する詳細説明書(法務省ガイドラインに基づくもの)が必要です。はじめてこのスキームを使った採用をする場合は、プロのサポートを受けられたほうがよいかと思います。
技人国ビザが不許可になったらどうすればよいですか?
自社で申請した就労ビザが不許可になった場合、まず、不許可になった理由を出入国在留管理局の担当審査官からきちんと聞く必要があります。不許可理由としてよくあるのは、下記です。
- 職務内容が技人国ビザに該当しない
- 学歴と職務内容に関連性がない
- 職務内容は技人国ビザに該当するが、職務の分量が十分ではない(同じポジションの外国人労働者がすでにいるはずだから、同じ職務内容でさらに外国人を雇用する必要性が説明されていない
技人国ビザが不許可になった理由を正確に把握した上で、職務内容の説明方法を見直したり、業務分量が十分にあることを証明する資料を用意したりして再申請をすることとなります。
なお、この不許可理由を正確に確認するためには、ある程度の法律知識が必要となります。自社で申請された場合、弁護士や行政書士の立ち合いは難しいのですが、何をどのように聞けばよいのかはアドバイス可能です。
また、再申請は何回でもチャレンジすることができます。2回目や3回目で許可が出るという場合もありますので、諦めないでください。
ただし、「学校の出席率が悪くて退学処分になった」「犯罪行為をしたことがある」などの在留不良理由がある場合には、許可を取ることは難しくなります。外国人が専門学校等を退学処分になると、学校側が出入国在留管理局にその旨を報告することとなっています。退学処分になった事実を隠してビザを取ろうという人がいますが、却って裏目に出ます。また、難民申請をしている場合も、最近の入管の審査事情を見ていると、特別なケースを除いては許可が出ることはないです。
海外の大学を卒業しているが、学位がない場合
この場合、個別判断となります。単純に、卒業証明書だけを提出した場合、就労ビザが不許可になる可能性が高いです。学位はなくても、その国では高い評価を得て、高度な知識を教えている大学は多いです。こうした場合、当該国の教育制度や学位認証の仕組み、当該大学の評価などを徹底的に調べ、就労ビザの許可基準に該当していることを積極的にアピールすることで許可につながります。
下記は、当事務所でサポートさせていただき、技術・人文知識・国際業務のビザが許可になった事例の一部です。いずれも当該国の教育制度を調査し、関連省庁等から証明書類、根拠書類を収集し、大学(短期大学)相当の学位であることを立証できた結果、許可となりました。
- 中華人民共和国の3年制大学(大学専科)
- 台湾の高等専門学校(学位なしの方)
- 韓国の専門大学(전문대학)
- カナダ・ケベック州のCEGEP・CGEP
- フランスのリサンス(licence)
- フランスのBTS(上級技術者免状)
実務経験はどのように証明すればよいですか?
下記いずれかの実務経験があり、かつそれを証明できることが重要です。証明方法は、在職証明書、過去の給与明細書、給与振込の証明、保険年金証書、元上司からの推薦書などです。できるだけ複数の手段で証明することが重要です。また、在職証明書については、記載すべき項目がありますので、注意が必要です。
- 語学系、国際系職種(通訳、海外営業など)の場合、同職種について3年以上の実務経験
- IT系、機械系、電気系職種の場合、同職種について10年以上の実務経験
この記事を書いた人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一