製造業における技人国ビザのボーダーライン

外国人の就労ビザには幾つかの種類がありますが、よく利用されるのは技人国ビザ(技術・人文知識・国際業務ビザ)です。製造業においても例外ではなく、技人国ビザで就労している外国人は全国で約48万人。その数は年々増加しています。しかし、技人国ビザは、一定の専門知識を要する仕事を対象としています。そのボーダーラインはどこにあるのか、考察してみました。

製造業における技人国ビザの市場規模

製造業において技人国ビザで就労している外国人がどのくらいいるのか、統計を紹介したいと思います。

まず、外国人労働者のうち、製造業で働いている人の割合についてみてみます。厚生労働省の統計によると、全産業での外国人労働者数は1,822,725人、製造業の外国人労働者数は485,128人(全体の25.6%)となっています。

事業所数でみると、全産業では298,790事業所、製造業は53,026事業所(全体の17.7%)です。外国人を雇用している製造業の事業所数は、令和2年は51,657事業所、令和3年は52,363事業所だったため、年々増加していることが分かります。

次に、製造業で働いている技人国ビザの人数について見てみます。技人国ビザで就労している外国人数は全産業で318,850人です。そのうち製造業で働いているのは61,275人(全体の19.2%)となっています。これは全産業の中で最も多く、卸売業・小売業の54,500人(17.1%)、情報通信業51,644人(16.2%)がこれに続きます。

以上のように、日本では製造業において技人国ビザで就労している外国人は非常に多いことが分かります。

参照:「厚生労働省による「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)」

本人の学歴について

技人国ビザの学歴要件は、大学卒業以上、もしくは日本の専門学校卒業以上となっています。大学の場合、大学での履修内容と職務内容については緩やかな関連性が求められます。現行の在留資格審査要領(2022年10月改定)では、

「特段の事情がない限り、大学を卒業していることをもって、自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務との関連性を認めて差し支えない」

と書いてあります。ですから、大学の学部はそれほど気にしなくて大丈夫です。ただし海外の大学の場合、国際的な学位であるBachelor Digreeを持っていることが必要になります。ほとんどの国では大学の卒業証明書は英語でも発行されますので、その英語版の卒業証明書の中にBachelor Digreeの文言があることを確認してください。

一方、専門学校の場合は、専門学校での履修内容と、職務内容には密接な関連性が求められます。分かりやすい例で言うと、専門学校でCAD設計図を履修している場合、製造業の会社において、機械設計、電気設計などの回路図を作成する、もしくは回路図を読み込む必要がある業務であれば、技人国の該当性を認められやすいです。反対に、国際ビジネス情報学科などの専攻した留学生の場合、製造業において機械オペレーターや、機械の保守保全業務に従事することは、難易度が高いでしょう。

製造業において技人国ビザがとれないケース

造業において技人国ビザがとれないケースを具体的にいくつか紹介します。

反復継続的な作業である

いわゆるライン作業、ルーティン作業と言われる作業です。これは1週間単位でみて、反復継続的かどうかを判断されます。例えば月に1回程度反復継続的な作業を終日行うといった程度であれば、技人国ビザの該当性判断にそれほどマイナスにはなりません。しかし、1週間の作業内容を全体的に見て、そのほとんどが反復継続的な作業である場合、専門知識を要する仕事とはみなされません。

具体的には、目視での外観検査を反復継続的に行う、部品交換・機械の洗浄を反復継続的に行うなどです。これらの業務を付随的に行うのであれば、問題ないのですが、外観検査の専従担当者、検品作業の専従者としての技人国ビザは許可されません。また、作業内容が多岐にわたったとしても、1週間単位で見て、反復継続性が高いとみられた場合は、厳しい審査となります。

技能実習生と全く同じ作業

製造業の場合、同じ職場に技人国・特定技能・技能実習生が働いている場合があります。技能実習生と就業場所が同じ、もしく就業場所が近い場合、技能実習生との仕事内容の違いを文書で説明する必要があります。結論として、技能実習生と全く同じもしくはほとんど変わらない業務であれば、技人国ビザは許可されません。同じ職場にいる技能実習生が、どんな仕事をしているのか知りたい場合、厚生労働省から公開されている技能実習の審査基準を確認しましょう。例えば、「技能実習審査基準 電子部品組立」と検索すると、電子部品組立工場における、技能実習生の業務が書かれています。技人国での外国人は、ここに明記されている仕事と同じ仕事に専ら従事することは出来ません。

「未経験歓迎」という文言で募集している

一般的に求人の文言は門戸を広くするため「未経験歓迎」とか、「誰でもできる仕事です」といった文言が使われるケースがあります。在留資格の審査をする審査官は、こうした求人情報や採用ページを見ることが非常に多いです。当職の現場感覚としては、製造業の技人国案件においては、必ず見られている、しかもかなり細かく見られているという印象を持っております。ですから、こうした文言が書いてあると、誤解を招きます。一定の専門知識が必要な業務であれば、こうした文言は避けた方が無難です。

在留資格の審査官はここを見る

在留資格を審査する審査官は、技人国該当性判断に迷った時、以下の要素を考慮します。ただ、以下の要素は絶対的なものではなく、在留資格申請時に提出された書類を総合的に判断して、結果が出されます。

外国人が所属している部署名

外国人が働いている部署名は、意外と重要です。部署名から単純作業を連想される場合、審査官としても厳しく審査せざるを得ません。例えば、「製造部組立一課」などですね。反対に、「生産技術センター・半導体材料グループ」などの部署であれば、単純作業は連想しにくいでしょう。

仕様書、作業手順書の内容

仕様書や、作業手順書の内容や、分量(ページ数)も重要ですね。技人国ビザの申請時に追加書類としてこれらの書類を求められるケースが多々あります。仕様書等の内容が、一定の専門知識を要するものとは認められない場合、技人国ビザも許可されません。例えば、機械オペレーターの場合、機械の構造や回路図などが記載されており、それらを読み解く力が必要である根拠を説明できれば、技人国ビザが許可される可能性が高いです。

初回相談料 1時間 11,000円

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この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一

 

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