外国人の就労ビザには幾つかの種類がありますが、よく利用されるのは技人国ビザ(技術・人文知識・国際業務ビザ)です。製造業においても例外ではなく、技人国ビザで就労している外国人は全国で約40万人。その数は年々増加しています。しかし、技人国ビザは、一定の専門知識を要する仕事を対象としています。そのボーダーラインはどこにあるのか、考察してみました。
技術・人文知識・国際業務ビザ 重要点を再確認

大学や専門学校で技術系科目を履修した外国人が、機械工場や部品工場などにおいて、研究開発や生産管理、設計などの仕事に従事する場合、ホワイトカラーの就労ビザである技人国ビザを取得できる可能性があります。
※技人国ビザとは、技術・人文知識・国際業務ビザの略称です。
本人の学歴
技人国ビザの学歴要件は、大学卒業以上、もしくは日本の専門学校卒業以上となっています。大学の場合、大学での履修内容と職務内容については緩やかな関連性が求められます。現行の在留資格ガイドライン(2026年4月改定)では、
「特段の事情がない限り、大学を卒業していることをもって、自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務との関連性を認めて差し支えない」
と書いてあります。ですから、大学の学部はそれほど気にしなくて大丈夫です。ただし海外の大学の場合、国際的な学位であるBachelor Digreeを持っていることが必要になります。ほとんどの国では大学の卒業証明書は英語でも発行されますので、その英語版の卒業証明書の中にBachelor Digreeの文言があることを確認してください。
一方、専門学校の場合は、専門学校での履修内容と、職務内容には密接な関連性が求められます。分かりやすい例で言うと、専門学校でCAD設計図を履修している場合、製造業の会社において、機械設計、電気設計などの回路図を作成する、もしくは回路図を読み込む必要がある業務であれば、技人国の該当性を認められやすいです。反対に、国際ビジネス情報学科などの専攻した留学生の場合、製造業において機械オペレーターや、機械の保守保全業務に従事することは、難易度が高いでしょう。
職務内容に関する要件
簡単に言うと、現場労働、単純労働ではないことが必要です。つまり、誰でもできる仕事ではなく、専門知識や素養を必要とする仕事に従事する必要があります。
工場内勤務の場合、現場作業ではないかと判断されやすいです。外国人の就労ビザの審査をする出入国在留管理局では、外国人が工場内で現場作業に従事されるのでれば、多少大変であっても、(コストがかかっても)、技能実習ビザや特定技能ビザなどを活用してくださいという明確な方針を打ち出しています。
技人国ビザが許可されやすいケース(一例)
- 工場内で生産管理、工程管理、品質管理等に従事する。流れ作業ではなく、解析ソフトやシミュレーションソフト等を使用する業務である。
- 機械オペレーターとして勤務する。材料工学や構造力学等の素養がないとできない業務であることを立証できる。
技人国ビザ取得が難しいケース(一例)
- 業務の大半が、流れ作業、組立、配線、目視検査、梱包、溶接などの現場作業である。
本人側の要件・・・大学(短期大学含む)を卒業していること。もしくは日本の専門学校を卒業し、専門士の学位を取得していること
職務内容の要件・・・
ですから、工場内勤務での技人国ビザの審査は非常に厳しく、細かいです。
製造業での技人国ビザ 許可事例
弊社では、製造業での技人国ビザ申請を得意としておりますが、幾つか具体例で説明します。
事例1:精密部品工場で、CAD専門学校を卒業した外国人を採用
このケースでは、工場内で作成している図面サンプルを幾つか提出し、月平均でどれくらいの図面を作成するのか、1枚の図面作成にどれくらいの時間がかかるのか、その根拠などを丁寧に説明しました。ここまで書いておかないと技人国ビザは許可にはなりません。採用する側にとって、技人国ビザは非常使いやすい就労ビザである反面、厳しく細かい審査があります。このケースは、実際に図面作成する時間が少ないのではないか、他の時間は現場作業に従事するのではないかとの疑義が持たれやすいケースです。
事例2:機械部品工場で、大卒(理系)の外国人を採用
採用した外国人の職務内容は、生産管理業務です。技人国ビザの申請時に、生産管理業務とだけ書いて提出すると、かなりの確率で不許可になります。実際にあった事例ですが、上場企業の工場で外国人を採用された際に、不許可となりました。再申請を弊社に依頼いただき、許可となったのですが、この時に追加で提出した書類は以下です。
- 生産管理業務についての詳細説明書
- 取り扱う製造機械、ロボットの概要を説明した書類
- 上記機械を取り扱うために、理系大学の知識が必要であることの根拠を説明した書類
- 実際に仕事に従事している時の写真数点
つまり、従事する場所は工場内であるけれども、現場作業や組立作業、単純作業などではなく、専門知識を必要とする仕事であるということを、文系の審査官が読んでもわかるように説明しました。この時、技人国の審査基準が記載されている在留資格審査要領のチェックは必ず必要です。自社で申請される際は、審査要領の該当部分もチェックされることをお勧めします。
事例3:日本の専門学校卒業の外国人を本社の管理部門で採用
たとえば、製造販売を行う会社の本社で営業や経理の仕事をする場合、工場の管理部門で購買や外国人技能実習生の労務管理などを担当する場合です。
本社勤務の場合、現場労働の疑いようがありませんので、職務内容についての説明はそれほど厳しく審査されません。
勤務先が工場である場合、本当にその仕事をするのか、実は現場労働ではないのかという目で審査されます。失礼な話なのですが、外国人の就労ビザ審査はそういうものだと思ってください。
ここで注意いただきたいことは、外国人技能実習生の労務管理などを担当する場合です。たとえば、外国人技能実習生が5人程度の場合、労務管理の専従者としてわざわざ1人採用する理由がないと判断されます。つまり、他の時間はどんな仕事を担当しているのかということが聞かれます。
技人国ビザで、期間限定の現場労働は可能な場合がある
技人国ビザはホワイトカラー職のビザであるため、原則として現場で働くことはできません。ただし、本来業務を行うためには現場を知る必要があります。
こうした事情が考慮され、技人国ビザに該当しない活動(例えば、飲食店での接客や小売店の店頭における販売業務、工場のライン業務等)であっても、それが日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であって、在留期間の大半を占めるようなものではないときは、総合的に判断された上で現場労働が認められます。
このスキームを使う時には法的テクニックが必要なのですが、法的要件を満たせば技人国ビザが許可されます。
製造業において技人国ビザがとれないケース
造業において技人国ビザがとれないケースを具体的にいくつか紹介します。
反復継続的な作業である
いわゆるライン作業、ルーティン作業と言われる作業です。これは1週間単位でみて、反復継続的かどうかを判断されます。例えば月に1回程度反復継続的な作業を終日行うといった程度であれば、技人国ビザの該当性判断にそれほどマイナスにはなりません。しかし、1週間の作業内容を全体的に見て、そのほとんどが反復継続的な作業である場合、専門知識を要する仕事とはみなされません。
具体的には、目視での外観検査を反復継続的に行う、部品交換・機械の洗浄を反復継続的に行うなどです。これらの業務を付随的に行うのであれば、問題ないのですが、外観検査の専従担当者、検品作業の専従者としての技人国ビザは許可されません。また、作業内容が多岐にわたったとしても、1週間単位で見て、反復継続性が高いとみられた場合は、厳しい審査となります。
技能実習生と全く同じ作業
製造業の場合、同じ職場に技人国・特定技能・技能実習生が働いている場合があります。技能実習生と就業場所が同じ、もしく就業場所が近い場合、技能実習生との仕事内容の違いを文書で説明する必要があります。結論として、技能実習生と全く同じもしくはほとんど変わらない業務であれば、技人国ビザは許可されません。同じ職場にいる技能実習生が、どんな仕事をしているのか知りたい場合、厚生労働省から公開されている技能実習の審査基準を確認しましょう。例えば、「技能実習審査基準 電子部品組立」と検索すると、電子部品組立工場における、技能実習生の業務が書かれています。技人国での外国人は、ここに明記されている仕事と同じ仕事に専ら従事することは出来ません。
「未経験歓迎」という文言で募集している
一般的に求人の文言は門戸を広くするため「未経験歓迎」とか、「誰でもできる仕事です」といった文言が使われるケースがあります。在留資格の審査をする審査官は、こうした求人情報や採用ページを見ることが非常に多いです。当職の現場感覚としては、製造業の技人国案件においては、必ず見られている、しかもかなり細かく見られているという印象を持っております。ですから、こうした文言が書いてあると、誤解を招きます。一定の専門知識が必要な業務であれば、こうした文言は避けた方が無難です。
在留資格の審査官はここを見る
在留資格を審査する審査官は、技人国該当性判断に迷った時、以下の要素を考慮します。ただ、以下の要素は絶対的なものではなく、在留資格申請時に提出された書類を総合的に判断して、結果が出されます。
外国人が所属している部署名
外国人が働いている部署名は、意外と重要です。部署名から単純作業を連想される場合、審査官としても厳しく審査せざるを得ません。例えば、「製造部組立一課」などですね。反対に、「生産技術センター・半導体材料グループ」などの部署であれば、単純作業は連想しにくいでしょう。
仕様書、作業手順書の内容
仕様書や、作業手順書の内容や、分量(ページ数)も重要ですね。技人国ビザの申請時に追加書類としてこれらの書類を求められるケースが多々あります。仕様書等の内容が、一定の専門知識を要するものとは認められない場合、技人国ビザも許可されません。例えば、機械オペレーターの場合、機械の構造や回路図などが記載されており、それらを読み解く力が必要である根拠を説明できれば、技人国ビザが許可される可能性が高いです。
製造業での技人国ビザ よくある質問
同じ職場に何人位までなら外国人を雇える?
技術ビザで雇うのか、国際業務ビザで雇うかによって、人数枠の考え方は異なります。技術ビザで雇う場合、仕事内容が技人国ビザに該当する(一定の専門的知識を要する業務)であれば人数制限はありません。一方、技能実習生などの通訳や労務管理を行う社員として国際業務ビザで採用した場合、無制限にビザが許可される訳ではありません。
例えば技能実習生が10人いて、彼らへの通訳や仕様書等の翻訳が必要な場合、国際業務ビザで雇える外国人は1名が限度かと思われます。なお、製造現場において国際業務ビザで雇う場合、4年生大学を卒業していることが絶対条件となります。
給料は新卒程度の額で良い?
はい、入国管理法上は同職種に従事する日本人社員と同額以上であれば問題ありません。もし、同業務に従事する日本人社員がいない場合、業界平均や同業他社の給与水準に準ずる額で問題ありません。また、最低賃金にも留意が必要です。最低賃金は地域ごとに・職種ごとに制定されています。製造業の場合、職種別最低賃金(特定最低賃金)が適用される場合が多いですので、地域別の最低賃金ではなく、特定最低賃金の方が高いケースが多いです。
例えば、鉄鋼業や塗料製造では、特定最低賃金が地域別最低賃金よりも100円近く高くなっています。
なお、給料が最低賃金ギリギリだと、本当に専門知識を要する業務なのかと疑いを持たれやすいです。給料が最低賃金に近い場合は、ビザ申請時に同職種に従事する日本人社員と同等であることを強調した方が良いでしょう。
また、会社によっては、1年目の給料が低くても、年々給料が上がっていくこともあると思います。その場合は、会社の賃金規定などを提出すると良いでしょう。
学歴の基準を満たすことが出来ない場合は採用できない?
学歴の基準を満たしていない場合、実務経験の要件を満たしているかどうか確認してください。技術ビザの場合、実務経験10年以上、国際業務ビザの場合は、実務経験3年以上です。ただこの実務経験要件をもってビザ申請する場合、立証書類も必要です。通常、在職証明書や勤務していた会社の会社概要(ホームページを印刷したものなど)が必要です。
また、実務経験要件でビザ申請する場合は、過去のビザ申請時に提出している履歴(学歴職歴等)との整合性も厳しく審査されます。入社時期や退社時期が半年以上ずれている場合は、実務経験に信憑性なしと判断されやすいです。
技能実習生で雇っていた外国人を技人国で継続雇用することは出来る?
技能実習期間終了後、継続雇用することは出来ません。なぜなら、技能実習生は日本で習得した技能を本国に帰って活用する必要があるからです。これを技能移転と言います。現行の技能実習制度の運用では、この技能移転は最低1年以上必要とされています。
ちなみに、技能実習から特定技能への移行は可能です。この場合、在留資格変更申請時に技能移転に関する誓約書を提出する必要があります。
採用後数か月は研修でライン作業を行うけど、その後専門業務に就く場合は?
技人国ビザで雇用した場合であっても、研修期間にライン作業を行うことは可能です。ただし、ポイントがあるのでご紹介します。
まず、その研修内容が日本人の大卒社員に対しても同じように行われるものである必要があります。外国人社員だけが行う研修や、内容が日本人社員と異なる場合は、基本的には認められません。そして、研修の時期と期間については、その研修が入社直後に行われるものであり、研修期間が適切でなくてはなりません。例えば、外国人がその企業で就労する全期間に対して、研修期間が大半を占めるような場合は、技人国ビザで行うべき本来の業務を行っていないと判断されます。
技人国ビザで研修としてライン作業のような単純作業が認められるかという事は、合理的な理由があるかどうかが重要となります。例えば、研修期間が1年以上の長期間であるような場合であっても、それがその会社での研修計画やキャリアプランに照らし合わせて合理的なものであれば、それをきちんと説明することで認められる可能性があります。逆に、その研修が必要である理由や、研修期間が適切であることの合理的な理由を説明できない場合は、認められません。
夜勤がある/変則労働時間制の場合でも技人国で雇用できる?注意点は?
はい、夜勤や変則労働時間制でも技人国で雇用することが可能です。ただし、ライン作業ではないかという疑義が持たれやすいです。なぜ夜勤に従事する必要があるのかという合理的説明が必要になります。
技人国ビザでの雇用が難しい場合の選択肢は?
技人国ビザで雇用が難しい場合、技能実習もしくは特定技能を検討することになります。製造業では、この2つの在留資格は非常によく活用されています。

製造業で働ける在留資格の特徴を図にまとめました。3つのビザにたくさんの違いがありますが、1番大事なのは、制度目的が違うことです。制度目的が違うため、他の条件も異なってきます。技能実習生の場合、建前ですが国際貢献が目的です。ですから、本人の学歴や実務経験の要件はありません。日本の高度な技術を習得してもらうのが目的ですから、原則として3年間は転職も不可となっています。
特定技能の制度目的は、人手不足の解消です。ですから、人手不足が著しい業種である11の業種に限定されています。製造業においては、素形材・産業機械・電気電子情報関連となっています。
この記事を作成した人 ワールド行政書士法人 行政書士 濵川恭一





