技能実習生の監理団体を買収するポイント

技能実習生の受入に関し、様々なサポートを行う監理団体。その数は、全国で約3000社になります。この中には、売却先を探している団体もあります。本稿では、監理団体を買収する際のポイントについて紹介します。

新規で監理団体を設立するより早く事業開始できる

新規で監理団体を設立するためには、①管轄省庁で事業協同組合の設立認可申請を行い、②労働局で無料職業紹介許可を取り、③技能実習機構への申請が必要です。この3つの手続き全てにおいて、多数の申請書類を作成し、役所と折衝し、補正対応する必要があります。手続き全てが終わるまで、通常1年以上、場合によっては2年かかることもあります。

ですから、新規で監理団体を設立するより、既存の団体を買いたいというニーズがあるのも当然だと思います。しかし、会社買収と異なり、買収したらすぐに事業を開始できるわけではありません。買収した場合、当然ながら本店所在地や役員に変更が生じますので、その変更を管轄省庁に届け出、審査を経る必要があります。

なお、既存の監理団体を買収した場合、銀行口座の開設手続きは不要です。近年、新設法人の口座開設は非常に難しいですので、このメリットは大きいですね。

技能実習制度の完全廃止は2030年頃

2023年末、外国人技能実習制度は育成就労制度に変わることが発表されました。しかし、すぐに技能実習制度がなくなるわけではありません。技能実習制度を廃止するためには法改正が必要です。

その改正法は2024年中に行われる予定です。日本では、法律が公布されてから実際に施行されるまで、1~3年かかりますので、技能実習制度に関する改正法が実際に施行されるのは2025年~2027年となります。さらに、3年間の移行期間があるはずですので、新制度への完全移行は2030年頃になるでしょう。

そして完全移行後も、何らかの形で受入企業のサポートは必要です。その役割を果たすために、監理団体の存在意義が残ると思われます。

買収対象となる監理団体の探し方

監理団体を売りたいという情報は、なかなか表には出てきませんが、探す方法はあります。M&Aのコンサル会社や金融機関から情報を得ることもありますが、もっと手軽に探したい場合、ビジネスマッチングサイトが便利です。

現在、主要なマッチングサイトだけでも10以上あります。所在地や予算など、希望条件で検索できます。常時、監理団体の案件があるわけではありませんが、毎日チェックしていると、希望に合いそうな案件が出てくるはずです。ただし、この段階では、監理団体の名称や詳細情報などは分かりません。詳しい情報を知りたい場合、相手方と秘密保持契約を結ぶ必要があります。

交渉のポイント

買収対象となる監理団体が見つかったら、相手方と交渉していくことになります。当事務所では、過去にこの交渉に立ち会ったことがあるのですが、一般的には、①お互いの会社紹介、②決算関係書類、主務官庁への事業報告書などの開示、③買収価格や時期など細かい点の折衝といった流れになります。1回の打合せで完了することもありますが、通常は、何度か打合せを重ねます。

決算関連書類については、株式会社の決算書類とは書式が少し違いますので、注意が必要です。また、監理団体が保有している各種許認可の有効期限についてもよく確認しておきましょう。例えば、無料職業紹介事業許可、登録支援機関登録、建設業許可などです。これらの更新手続きもそれなりに大変ですから、買収後も更新の要件を満たすのかを確認しておきましょう。

意外と盲点になりがちなのが、送出し機関との契約内容です。取引年数やこれまでの受入人数について確認することで、送り出し機関との関係性を知ることができます。また、送り出し機関によって技能実習生のサポート内容は異なります。毎月送り出し機関に支払っている額とそのサポート内容が合うかどうかも確認しましょう。

事業譲渡契約書に記載すべきこと

監理団体を買収する場合、通常は事業譲渡契約書を締結することになります。事業譲渡契約書で、対象となる事業や資産、負債を明確に定義することで譲渡後のトラブルを防止できます。

事業譲渡契約書に記載することは、譲渡価格、支払い方法、支払い期日、諸費用の負担(登記や定款変更、許認可の名義変更に係る経費負担)、役員や従業員、外部監査人の処遇、引き続き方法などですね。事業譲渡契約書の雛形もあるのですが、監理団体に特化したものではないので、雛形を利用する時には注意してください。契約書で失敗しないためには、監理団体の制度に詳しい専門家に相談しながら契約書を作成したほうがよいです。

 

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