本記事は、月刊人材ビジネス誌にて執筆した内容を加筆して掲載しております。
技能実習生の受入に関し、様々なサポートを行う監理団体。その数は、全国で約3000社になります。この中には、売却先を探している団体もあります。本稿では、監理団体を買収する際のポイントについて紹介します。
新規で監理団体を設立するより早く事業開始できる
新規で監理団体を設立するためには、
①管轄行政庁で事業協同組合の設立認可申請を行い、
②上記が認可された後、設立登記を行い、
③技能実習機構への申請が必要です。
この3つの手続き全てにおいて、膨大な申請書類を作成し、役所とハードな折衝を行い、補正対応する必要があります。手続き全てが終わるまで、通常1年以上、場合によっては2年かかることもあります。
ですから、新規で監理団体を設立するより、既存の団体を買いたいというニーズがあるのも当然だと思います。しかし、会社買収と異なり、買収したらすぐに事業を開始できるわけではありません。買収した場合、当然ながら本店所在地や役員に変更が生じますので、その変更を管轄行政庁に届け出、審査を経る必要があります。
さらに、外国人技能実習生(育成就労外国人)の監理を行うためには、OTIT(技能実習機構)への変更手続きも必要となります。
なお、既存の監理団体を買収した場合、銀行口座の開設手続きは不要です。近年、新設法人の口座開設は非常に難しいですので、このメリットは大きいですね。
技能実習制度→育成就労制度への完全移行は2030年頃
2024年6月、改正出入国在留管理局法案が可決され、技能実習が育成就労に変わることになりました。しかし、すぐに技能実習制度がなくなるわけではありません。日本では、法律が公布されてから実際に施行されるまで、数年かかりますので、技能実習制度に関する改正法が実際に施行されるのは2027年頃となる予定です。
改正法が施行された後でも、一定期間の経過措置があります。例えば、法改正の施行日前にすでに技能実習生として入国している場合ですね。この場合は、施行日後にも技能実習を行うことが可能であり、一定の要件を満たせば、最長3年間の技能実習を行うことができます。
つまり、育成就労制度への完全移行は2030年頃になります。
※分かりやすく説明するため、法改正という表現を使っていますが、正確には、「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が公布されました。
そして完全移行後も、監理団体は監理支援機関と名前を変えて存続することが決まっています。既存のすべての監理団体が対象になるのか、審査があるのかはまだ発表されていません。
買収対象となる監理団体の探し方
監理団体を売りたいという情報は、なかなか表には出てきませんが、探す方法はあります。M&Aのコンサル会社や金融機関から情報を得ることもありますが、もっと手軽に探したい場合、ビジネスマッチングサイトが便利です。
現在、主要なマッチングサイトだけでも10以上あります。所在地や予算など、希望条件で検索できます。常時、監理団体の案件があるわけではありませんが、毎日チェックしていると、希望に合いそうな案件が出てくるはずです。ただし、この段階では、監理団体の名称や詳細情報などは分かりません。詳しい情報を知りたい場合、相手方と秘密保持契約を結ぶ必要があります。
交渉のポイント
買収対象となる監理団体が見つかったら、相手方と交渉していくことになります。当事務所では、過去にこの交渉に立ち会ったことがあるのですが、一般的には、
①お互いの会社紹介、
②決算関係書類、主務官庁への事業報告書などの開示、
③買収価格や時期など細かい点の折衝といった流れになります。
1回の打合せで完了することもありますが、通常は、何度か打合せを重ねます。
決算関連書類については、株式会社の決算書類とは書式が少し違いますので、注意が必要です。また、監理団体が保有している各種許認可の有効期限についてもよく確認しておきましょう。例えば、登録支援機関登録、建設業許可などです。これらの更新手続きもそれなりに大変ですから、買収後も更新の要件を満たすのかを確認しておきましょう。
また、事業譲渡に伴い、代表者や事業所所在地の変更があると思われますが、技能実習機構(OTIT)への変更届も必要になります。変更届と書くと簡単なように思いますが、実際には厳しい審査があります。状況によっては、細かい指摘を受けることもあります。
せっかく事業譲渡してもらったのに、OTITの変更届が受理されず、事業を開始できないという事態にならないためにも、この点をしっかりと検討しておきましょう。
あと、意外と盲点になりがちなのが、送出し機関との契約内容です。取引年数やこれまでの受入人数について確認することで、送り出し機関との関係性を知ることができます。また、送り出し機関によって技能実習生のサポート内容は異なります。毎月送り出し機関に支払っている額とそのサポート内容が合うかどうかも確認しましょう。
事業譲渡契約書に記載すべきこと
監理団体を買収する場合、通常は事業譲渡契約書を締結することになります。事業譲渡契約書で、対象となる事業や資産、負債を明確に定義することで譲渡後のトラブルを防止できます。
事業譲渡契約書に記載することは、譲渡価格、支払い方法、支払い期日、諸費用の負担(登記や定款変更、許認可の名義変更に係る経費負担)、役員や従業員、外部監査人の処遇、引き続き方法などですね。
事業譲渡契約書の雛形もあるのですが、監理団体に特化したものではないので、雛形を利用する時には注意してください。契約書で失敗しないためには、監理団体の制度に詳しい専門家に相談しながら契約書を作成したほうがよいです。
監理団体の買収に関する手続きサポート
つくばワールド行政書士事務所では、監理団体の買収や事業譲渡に関して、以下のサポートを行っております。
- 監理団体の事業譲渡に関するアドバイス(提携弁護士と共同で行います)
- 監理団体の事業譲渡契約書の作成
- 技能実習機構(OTIT)への変更届
- 事業承継・引継ぎ補助金の申請サポート(年によって変動ありますが、最大750万円程度の補助金)
- その他、監理団体の新規設立や買収に関する相談
料金や詳しいサポート内容については、下記のお問い合わせフォームより、お問い合わせください。なお、本件に関しては、電話での相談は受け付けておりませんので、必ずメールでお問い合わせください。