2023年の外国人雇用関連ニュースを行政書士が解説

2023年春頃から新型コロナウィルスによる規制が緩和され、外国人雇用の現場でも新しい制度や運用が続々と始まりました。技能実習制度の大改正などは、2024年度の通常国会後に発表される見込みですが、この記事では、2023年に起こった主な出来事と今後の外国人雇用の動きについて解説します。

外国人留学生40万人計画

2022年3月、岸田首相が、外国人留学生を現在の約30万人から40万人まで増やすことを発表しました。近年、優秀な留学生が、日本を留学先として選ばなくなっていることを危惧しての政策だと思われます。留学生を増やすために、留学ビザの要件も緩和されました。これまで、経費支弁能力(学費等を支払う能力)については、厳しい審査がされていましたが、この首相発表を受け、留学ビザの審査において、経費支弁に関する根拠証拠まで求めないという運用に変わりました(新設校など一部例外を除く)。この計画により、今後、日本に留学したいという外国人は増えるものと思われます。そして、日本で就職を希望する外国人も一定数は増えるものと予想されます。

専門学校の留学生の就職選択肢が大幅に拡大

これまで、最終学歴が専門学校である外国人は、専門学校で学んだ履修内容と職務内容には密接な関連性が必要でした。例えば、専門学校でウェブデザインを専攻した留学生は、ウェブデザインやアプリの開発等、専門分野と関連性の高い仕事以外では、就労ビザが許可されにくいため、就職の選択肢が限られていました。しかし、今後は、文科省の職業実践認定を受けている専門学校の場合、履修内容と職務内容の関連性要件は大幅に緩和される見込みです。正式発表はまだですが、これが実現した場合、専門学校卒の留学生の就職選択肢が大幅に拡大します。

なお、あまり知られていないことですが、専門学校を卒業後、関連性が認められた業務に3年以上従事した外国人が転職する場合、転職先での業務と専攻科目との関連性については、柔軟に判断されます。つまり、関連性の範囲を広く判断してくれるということですね。このことは、法務省から出ているガイドライン「技術・人文知識・国際業務の在留資格の明確化等について(令和3年3月改定)」にも記載されています。

ハイスペック人材のためのビザが誕生

2023年には、「特別高度人材(通称J-Skip)という新しい在留資格が誕生しました。これまでも「高度専門職」という在留資格はありましたが、海外の大学を卒業した方や日本語を話せない方にはなかなかハードルが高いものでした。誤解を恐れずに説明すると、これまでの制度では、日本の無名大学の大学院を卒業し、日本語能力試験N1に合格している人が高度専門職ビザを取れているのに、同じ企業で働く同年齢のハーバード大学卒業の人が高度専門職ビザをなかなか取れないということがよくありました。

特別高度人材ビザの取得要件は、年収2000万円以上かつ修士の学位以上となります。学位の代わりに、実務経験10年以上でも該当します。日本語が話せないけれど優秀な方にとっては、取りやすいビザとなります。

大学院進学のためのつなぎのビザが誕生

これまで、外国人が日本の大学を卒業し、大学院入学まで3ヶ月以上ある場合、一旦帰国することが必要でした。しかし、大学院進学のためのつなぎのためのビザ(特定活動)が創設されたことにより、日本にいながら、そしてアルバイトもしながら、大学院入学を待つことができるようになりました。

在留資格取消件数が前年度40%増加

在留資格で認められた活動を3ヶ月以上行っていない場合、在留資格取消事由となります。たとえば、就労ビザを持っている外国人が退職し、3ヶ月以上無職でいる場合などですね。実情としては、3ヶ月経てばすぐに取り消されることはないですが、悪質な場合や、本来活動を行う見込みがないと判断された場合、在留資格取消となります。その数が大幅に増えています。

2022年の在留資格取消件数は1,125件でした。これは2021年と比べると40.6%の増加となっています。在留資格別にみると、「技能実習」が901件と最も多く、全体の8割を占めています。次いで、「留学」が163、「技術・人文知識・国際業務」が23件となっています。

特定技能2号ビザ 11業種が対象に

特定技能2号の要件と活用法について、解説したいと思います。2023年7月、キルギス共和国と、特定技能ビザに関する協定が締結されるなど、政府としても特定技能外国人を増やす意向を持っています。2023年6月末現在、特定技能1号外国人の数は、約17万3千人に上ります。

特定技能2号については、1号の業種全てが対象となります。ただし、2号に移行するための要件が厳しすぎる、業種によって要件の難易度にばらつきがあるという声も聞かれます。また、高度人材とよばれる技人国ビザと比較して、どうしても低位の就労ビザという誤解もあるようです。

しかし、特定技能の制度主旨はそうではありません。閣議決定資料「特定技能の在留資格に関する基本方針」によると、「特定技能2号は(中略)、長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいい、現行の専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人と同等又はそれ以上の高い専門性・技能を要する技能であって、自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる(中略)水準のものをいう」と規定されています。

 

 

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