専門行政書士が解説!ホテル、旅館で外国人を採用した場合、就労ビザを取得できますか?

現在、ホテルで外国人を採用する場合、以下のいずれかの方法(在留資格)を取ることが多いです。それぞれのポイントを解説しますね。

ホテルや旅館で外国人が働く場合、担当してもらう職種によって、就労ビザの種類が異なります。簡単に説明すると、以下となります。

フロント業務に従事するなら、技術・国際業務・人文知識ビザ(技人国ビザ)

配膳や客室清掃がメインなら、特定技能ビザ

技人国ビザ:フロント業務、マーケティング業務をするためのビザ

フロント業務、通訳翻訳、マーケティングの仕事をするためのビザは、「技術・人文知識・国際業務」というビザになります。少し長いので、実務上は、「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれます。

ここで注意していただきたい点は、通訳翻訳、マーケティングの専従者である必要があることです。通訳翻訳をしながら、ホテル内のレストランで配膳をしたり、ベッドメイキングをしたりすることは原則としてできません。配膳やベッドメイキングをメインとして働くためのビザは別にあります(後述)。

通訳翻訳、マーケティングの専従者として勤務する根拠や証拠

このビザを取るためには、通訳翻訳、マーケティングの専従者であることを多角的に立証する必要があります。単純に、「通訳翻訳者として採用します」と書いてビザを申請しても、ほとんどのケースで、不許可となります。

誰が見ても外国人が多いホテル、そして高度な外国語対応が必要とされるホテル、例えば都市部にある外資系の一泊7万円以上するホテル等では、この書き方でも許可になることがあります。しかし、それ以外のホテルであれば、通訳翻訳の必要性やその業務量を立証する必要があります。

つまり、外国人客が年間にどれくらいいて、どのようなフロント対応が必要なのか、既存の日本人社員では対応できないのかなどを、説得力ある説明文章と証拠書類で立証していきます。これが立証できなければ、このビザは不許可となります。

具体的な立証方法、提出すべき書類については、ホテルの規模、立地、売上、既存の外国人スタッフの数など、多数の要素によって異なります。貴ホテルでこのビザが取得できるかどうかは、こうした情報をお聞きすればある程度判断できますので、当事務所までお問い合わせください。就労ビザ取得可能性の判断まででしたら無料対応しております。

ホテル等で「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するための最低限の要件

  • 本人が学士(Bachelor)、準学士(Associate Bachelor)の学位を持っていること。もしくは日本の専門学校(通訳学科、観光学科等)を卒業し、専門士の学位を得ていること。通訳と全く関係のない学科を卒業している場合、履修科目証明書(成績証明書)を精査する必要があります。
  • ホテルのフロント、またはコンセルジュデスクでの勤務であること

特定技能:配膳、客室清掃等に従事するためのビザ

ホテル内レストランの配膳や客室清掃などの職種で外国人を雇用したい場合、下記のビザを持っている外国人であれば、特に制限なく雇用できます。

  • 永住者ビザ、定住者ビザ、日本人の配偶者等ビザ
  • 特定活動ビザ(ワーキングホリデービザ)
  • 留学ビザ(資格外活動許可を持っていれば、週に28時間以内のアルバイト可能。夏休み等は一日8時間以内のアルバイトが可能)
  • 家族滞在ビザ(資格外活動許可を持っていれば、週に28時間以内のアルバイトが可能)
  • 文化活動ビザ(資格外活動許可を持っていれば、週に28時間、もしくは労働基準法の範囲でアルバイト可。パスポートに張り付いている資格外活動許可証、または指定書に詳細規定あり)

上記以外のビザを保有する外国人を採用したい場合、「特定技能」というビザがあります。特定技能技能試験(宿泊分野)に合格している人であれば、このビザを取得できる可能性が高いですが、会社側でも準備作業が多数あります。会社の規模、場所等によってこの作業は異なりますが、一例としては下記です。

ホテル等で「特定技能」ビザを取得するための最低限の要件

  • 本人が宿泊技能評価試験に合格していること
  • 本人が日本語能力試験N4以上に合格していること
  • 会社が社会保険、労働保険に加入していること
  • 直近年度の決算が赤字でないこと(赤字の場合、公認会計士等の所見を文書で提出できること)

この特定技能ビザは、2019年4月から運用開始されたビザです。申請するための書類はや約50種類あります。細かい要件も多数ありますが、全て満たすことができれば、これまで禁止されていた配膳やベッドメイキング等の仕事も堂々とできるようになります。

技人国・特定技能以外の方法

これまで説明した2つのビザ以外にも、外国人を採用する方法はあります。いずれも、該当者は少ないのですが、雇用側にとってメリットが大きい方法です。

特定活動46号ビザ

特定活動46号ビザは、日本の4年制大学を卒業し、日本語能力試験N1に合格している外国人が日本で働くためのビザです。これまで、大卒者が就職する際によく申請されてきた「技術・人文知識・国際業務」ビザは、ホワイトカラーに限定した就労ビザですが、特定活動46号ビザでは、現業労働も認められています。日本国内のホテルでもよく活用されています。

特定活動46号ビザについては、こちらのページでも詳しく解説しております。

特定活動9号ビザ(インターンビザ)

また、特定活動9号(通称、インターンビザ)も最近再び注目されています。インターンビザは、海外の大学生が、日本企業等で一定期間の就業をする際に与えられる就労ビザです。当事務所は、フィリピンの州立大学(ホテル・レストラン学科あり)とラオスの国立大学とつながりがございますので、こうした大学とのインターンシップ協定の締結サポート、受入支援も行っております。

特定活動9号ビザについては、こちらのページでも詳しく解説しております。


ここまでの内容を分かりやすさを優先して、表にまとました。

それぞれの項目ごとに細かい注意点がありますが、ざっくりと理解していただくための表になります。

  技人国 特定技能 特定活動46号 特定活動9号
法律で認められている仕事内容
  • フロント
  • マーケティング
  • 上記付随する業務
  • フロント
  • マーケティング
  • 客室清掃
  • 配膳
  • 上記付随する業務
  • フロント
  • マーケティング
  • 客室清掃
  • 配膳
  • 上記付随する業務
  • フロント
  • マーケティング
  • 客室清掃
  • 配膳
  • 上記付随する業務
就労できる期間 ビザ更新することで永続的に雇用可能 上位の特定技能2号ビザに変更することで永続的に雇用可能 ビザ更新することで永続的に雇用可能 通常1年以内
本人の要件 原則、大学卒業以上
  • 特定技能評価試験合格
  • 日本語能力試験N4合格
  • 日本の大学卒業
  • 日本語能力試験N1合格
雇用企業と提携する海外大学に在籍する学生
採用後の出入国在留管理局への報告 不要 必要(年4~6回程度の報告書提出が必要) 不要 不要
給料に関するルール 同職種の日本人と同等以上 同職種の日本人と同等以上 同職種の日本人と同等以上 最低賃金以上

この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一

 

 

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