不動産会社で外国人を採用した場合、就労ビザを取得できますか?

近年、外国人を採用する不動産会社が増えています。国籍にこだわらず、優秀な人であれば積極的に採用している会社もありますが、特定の国に絞って採用している会社もありますね。

この記事では、宅建士の資格も持つ行政書士が、外国人を採用する時の就労ビザについて、ポイントを解説します。

なお、本記事は、月刊人材ビジネス誌で執筆した内容を加筆修正したものです。

 

不動産会社で外国人を採用するメリット

不動産会社で外国人を採用するメリットはいろいろありますが、一番大きなメリットは、

外国人の顧客対応と顧客開拓 ではないでしょうか。

実際、多くの不動産会社が、このメリットを意識して採用を進めています。

たとえば、外国人のお客様が来店された場合、日本人社員が対応するよりも、同じ国の社員が対応したほうが、お客様も安心しますし、何でも聞けますし、成約につながりやすいという傾向にあるようです。

当事務所は、不動産会社のお客様が多いのですが、ある不動産会社では、大学生を主なターゲットとしています。その大学には留学生が多いため、大学OBの留学生を営業担当者として採用したところ、賃貸契約の数が飛躍的に伸びたということを聞きました。

また、新規の顧客開拓という点でも、外国人の採用は有効です。

特に、母国の富裕層へのアプローチという面では、かなり貴重な戦力となります。

自社に外国人社員がいれば、母国の富裕層向けに、日本の不動産投資に関する説明会や視察ツアーの企画運営などを行うことができます。

※本記事の主旨とは異なりますが、最近では、日本に滞在しながら不動産投資をしたい外国人も増えてきました。当事務所にも、不動産投資事業による経営管理ビザ、高度専門職ビザの取得といった相談が定期的にあります。当事務所では、こうしたスキームの検討、企画書の作成、海外にある人材会社の紹介などを行っております。有償でのコンサルティングとなりますが、詳細についてはお問い合わせください。

まずは就労ビザ不要の外国人を探そう

外国人雇用に携わる人にとっては、もう常識となりつつありますが、一応、説明しますね。日本で働くためには、原則、就労ビザを取る必要があるのですが、就労ビザ不要の外国人もいます。下図のビザ(在留資格)を持っている外国人は、就労ビザを取らなくても日本で働くことができます。ただし、ビザによっては条件があります。

営業職として採用するなら、技術・人文知識・国際業務ビザ

外国人が日本で働くための就労ビザは、約20種類あります。就労ビザは職種によって、細かく分かれていますが、営業職としての就労であれば、「技術・人文知識・国際業務」というビザになります。

少し長い名前なので、通称では、「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれます。

不動産会社で営業職として勤務する場合、下記のような仕事をすることになりますが、これら全て、技人国ビザで認められている仕事となります。

  • 法人、個人に対する問い合わせ対応
  • 物件内見の案内
  • 不動産の賃貸、売買契約に関する手続き(宅建士の業務を除く)
  • 上記にかかる通訳、翻訳
  • 不動産登記に関する司法書士との連絡、調整
  • 賃貸物件のオーナーとの連絡、調整
  • 各種保険に関する手続き
  • SNS等での物件案内(集客、マーティング活動)

通訳翻訳の専従者として採用する場合の注意点

不動産会社で外国人を採用する時、ビザ申請書(在留資格申請書)の職務内容の欄に、「通訳翻訳」と書いて申請するケースがよく見受けられますが、これは、本人にとっても、会社にとってもメリットが少ないです。

少し専門的な話になるのですが、技人国ビザは、「技術」・「人文知識」・「国際業務」という3つのビザが組み合わさったものです。

分かりやすさを優先して説明すると、以下になります。(法律的には、もっと厳格な定義がありますが、ここれでは分かりやすさを優先して説明します)

人文知識・・・専門知識を必要とする業務(営業、マーケティング、企画等)

国際業務・・・外国人であるという特性を生かした業務(通訳翻訳、語学講師等)

ビザ申請時に、通訳翻訳の専従者として申請してしまうと、将来、高度専門職ビザ(会社にも本人にもメリットが高いビザ)を申請する場合に、少し面倒なことになります。高度専門職ビザは、国際業務の仕事をする場合は取得できないルールになっているからです。

実際には、適切な対策を取ることで、解決する場合もあるのですが、技人国ビザは申請の方法を間違えると、あとで後悔することになりますので、プロのサポートを受けて申請されたほうが安心です。

技人国ビザ 主な要件

技人国ビザが許可されるためには、要件があります。ここでは、主な要件について解説します。

仕事内容が技人国ビザに該当すること

これまでの説明と重複しますが、不動産会社での営業、マーケティング、通訳翻訳は、技人国ビザに該当します。

ただし、物件の清掃は、付随的な業務として認められる場合もありますが、清掃の専従者としては認められませんので注意してください。

日本にある会社との契約(雇用契約等)があること

外国人を採用するわけですから、通常であれば雇用契約になると思います。

正社員としての採用であれば、この点が問題になることはほとんどありませんが、下記の場合は、注意が必要です。

  • 期間の定めがある契約社員
  • 時給での契約
  • 成果に応じた歩合給

上記の場合は、そのままビザ申請すると、審査が難航したり、最悪の場合、不許可になる可能性があります。不許可になってしまった場合、再申請もできるのですが、準備や審査のために相当な時間を要します。採用計画が狂ってしまうため、できるだけ、事前に万全な対策をして申請するようにしましょう。

なお、就労ビザ全般にいえることですが、雇用する会社の規模によってビザ取得の難易度が異なります。正確には下記のようなカテゴリ分けがあります。

カテゴリ 該当する企業
カテゴリ1 上場企業、省庁の認可を受けている企業等(経済産業省の「健康経営優良法人」認定など)
カテゴリ2 前年度の源泉徴収額が1000万円以上(目安として従業員50名以上なら該当する可能性あり)
カテゴリ3 前年度の源泉徴収額が1円以上1000万円未満の企業
カテゴリ4 設立1期目(未決算)の企業、休眠から復活した企業、個人事業主など

学歴要件

技人国ビザを取るためには、本人の学歴に関する要件があります。

具体的には以下のいずれかを満たしている必要があります。

国内外の大学を卒業しており、学士学位(BACHELOR)を取得している

学士より上位学位である修士(MASTAR)や、博士(DOCTOR)の学位でも構いません。

また、短期大学については、個別に審査されます。日本の短期大学や高等専門学校であれば問題ありません。海外の短期大学、3年制の大学等については、個別審査となります。

なお、学部については、職務内容との関連性が必要ですが、この関連性についてはかなり柔軟な審査がされます。理系学部出身者であっても、1~2年制時の教養課程で「人文知識」に関する科目を履修していれば、この要件を満たせる場合があります。

業務に関連する日本の専門学校を卒業しており、専門士の学位を取得している

専門士より上位学位である高度専門士の学位でも構いません。

海外の専門学校は含まれません。あくまで、日本の専門学校のみが対象となります。

なお、学部については、職務内容との密接な関連性が必要です。何をもって密接な関連性と判断するのかは、審査官の裁量によるところも大きいのですが、ビジネス系学科であれば、該当しやすいです。

ビジネス系学科でない場合、「職業実践専門課程」の認定課程であるかを確認してください。現在、1000以上の学科が認定されています。「職業実践専門課程」の認定課程である場合、職務内容との関連性については、大卒者と同様(つまり柔軟な審査)がされます。

このあたりのことを逐一確認していくのは、結構大変な作業になると思います。

採用前の段階から、当事務所にご相談、ご依頼いただければ、このあたりの採用に関するリーガルチェック(ビザ取得可能性の判断)が可能です。

不動産会社での技人国ビザ 会社側で用意する書類とは

不動産会社で外国人を採用し、技人国ビザを申請する場合、会社側で用意する基本的な書類は下記です。

※実際には、個別ケースによって追加で必要になる書類もあります。特に、会社が設立したばかりであったり、はじめての外国人採用であったり、規模が小さかったりする場合、提出すべき書類は異なります。

  • 登記事項証明書
  • 会社案内
  • 宅建業許可証(コピー)
  • 直近年度 決算書類
  • 直近年度 従業員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(税務署受付印あるもの)
  • 今回の外国人を採用する経緯や担当業務を詳細に説明した文書(雇用理由書)
  • その他(状況により異なる)

上記の中で、一番やっかいな書類が「雇用理由書」です。書き方を間違えたり、必要なことが書かれていないと、何度も補正の連絡が来たり、ビザが不許可になったりします。

技人国ビザ お問い合わせからビザ取得の流れ

当事務所へのお問い合わせから、ビザ取得の流れは下記となります。

お問い合わせ

メールにてお問い合わせください。

初回相談

ZOOMもしくは当事務所にて、全体的な流れや当事務所のサービス内容を改めて説明いたします。お客様の状況をお聞きし、最適なプランと総額の費用を案内させていただきます。所要時間は20分程度です。書類の書き方や申請ノウハウをお伝えするための相談ではなく、依頼するかどうか、行政書士の話しやすさ等を確認していただくための相談とお考えください。相談してみて、依頼するかどうか決めてください。

ご依頼

料金をお振込みください。

書類の準備

当事務所→お客様:お客様にご用意いただく書類を案内します。

当事務所:上記書類の情報を基に、申請書類一式を作成します。翻訳が必要な書類については、当事務所で翻訳いたします。

貴社内もしくはZOOMにて詳細打合せ

採用経緯や職務内容について詳しくインタビューさせていただきます。所要時間は1時間程度です。

申請書類の内容確認、署名

当事務所で作成した申請書類、職務内容説明書などの内容を確認いただき、本人署名をお願いします。貴社訪問時に署名捺印も同時に行う場合もございます。

申請

行政書士が、出入国在留管理局で申請します。

申請のご報告およびポイント説明(ZOOM等)

申請報告をさせていただきます。また、適宜、出入国在留管理局から電話がかかってきた時の想定される質問などをZOOM等で説明させていただきます。お客様によっては、配属部署の全社員に参加いただき、在留資格に関する基礎知識を得る勉強会のように活用いただいているケースもございます。所要時間は、通常20分程度です。勉強会形式になる場合、最大2時間まで対応可能です。

審査

出入国在留管理局で審査されます。追加資料提出が必要な場合もございます。

結果受領

当事務所に審査結果が届きます。当事務所が、新在留カードを受領し、お客様に納品いたします。

業務完了

業務完了です。


この記事を書いた人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士・宅地建物取引士 濵川恭一

 

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