行政書士が解説!個人事業主で外国人を雇う時、就労ビザ手続で気をつけること

語学学校を個人で経営している人やフリーの翻訳者などの個人事業主であっても、外国人を雇用できる場合があります。

まず、下記のビザを保有されている外国人については、採用が可能です(一部、就労時間に制限あり)

  • 永住者、日本人の配偶者、定住者 ⇒ フルタイムでの就労可能
  • ワーキングホリデー ⇒ フルタイムでの就労可能
  • 外国人留学生 ⇒ 資格外活動許可を持っていれば、週に28時間以内の就労が可能。長期休暇期間中(夏休み等)は、1日8時間までの就労が可能。

個人事業主の外国人採用 就労ビザ許可事例

個人事業主が新卒の外国人を採用したい場合、あるいは、転職希望の外国人を採用したい場合、原則、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)を申請する必要があります。

これまで、当事務所で下記のようなケースで就労ビザ申請をサポートしてきました。現在のところ、全て許可となっております。2009年~直近までの許可事例の一部です。

  • 個人事業で民泊を経営する方が中国人社員を採用
  • 立ち上げたばかりの語学教室で業務委託の語学講師を採用
  • 整形外科医院(個人経営)で外国人職員(受付・広報担当者)を採用
  • 矯正歯科医院(個人経営)で外国人職員(矯正器具の輸入担当)を採用
  • 旅行代理店(個人経営)が外国人社員を採用
  • 不動産屋(個人経営)で営業担当の外国人社員を採用
  • 学習塾で語学指導担当の外国人社員を採用
  • プロの演奏家が外国人スタッフ(専属通訳)を採用
  • プロのスポーツ選手が外国人スタッフ(専属通訳)を採用
  • フリーランスのSEが外国人助手(IT技術者)を採用
  • フリーランスのWEBデザイナーがアシスタントを採用
  • インターナショナルプレスクールで英語指導者として外国人を採用
  • 建築設計事務所(個人経営)でCAD設計担当の外国人を採用
  • 国際特許事務所で外国人社員(技術翻訳担当)を採用
  • 税理士事務所で外国人社員(事務)を採用
  • 行政書士事務所で外国人社員(行政書士補助業務)を採用

※外国料理の飲食店(中華料理店等)を経営する個人事業主が、外国人料理人を雇用する際には、「技能1号」という就労ビザとなります。これについては、技能ビザのページで解説しております。

技術・人文知識・国際業務ビザの要件

  • 雇用主と外国人の間で、何等かの契約書(雇用契約、年単位の業務委託契約)を交わしていること。安定的、継続的な雇用(業務委託)が見込まれること。
  • 本人の学歴が大学卒業、もしくは日本の専門学校を卒業していること。
  • 職務内容と本人の学歴(職歴)に関連性があること。大卒者の場合、緩やかな関連性で構わないが、専門学校の場合、密接な関連性が必要。例えば、雇用主が個人のWEBデザイナーで、被雇用者がウェブ系専門学校卒業者であれば密接な関連性あり。

上記は最低限の要件です。これらを満たしていても、雇用主が個人事業主の場合、就労ビザの取得は簡単ではありません。特に、はじめて外国人の就労ビザを取得される場合、通常の申請書類だけ提出しても、かなりの確率で不許可になりますので、専門家に依頼されたほうがよいでしょう。

ご自身で申請される場合のよくある失敗例として、給与の支払い方法や支給額がビザ要件に合致していないケースがあります。

また、事業の安定性、継続性についてアピール材料があるのに、それを証拠として整理して提出しなかったばかりに不許可になっているケースも散見されます。当事務所に相談をいただいたケースの中でも、きちんと申請すれば許可されうるべきケースなのに、勿体ないなと感じることがあります。

雇用主が個人事業主である時の就労ビザ 主な審査ポイント

①事業の安定性と継続性

開業したばかりの個人事業主であれば、事業計画書とその根拠資料を提出します。これまで数年間、その事業を行っており、相応の売上実績があれば、代表者個人の確定申告書、事業用の通帳コピーなどを提出することで、事業の安定性と継続性をアピールできるでしょう。

また、年単位の継続した取引先がある場合や官公庁との取引がある場合、その証拠を提出します。業務委託契約書や請求書などですね。

②事務所

代表者(雇用主)の自宅とは別に事業専用の事務所を確保していることが望ましいです。レンタルオフィスでも構いません。

③雇用の必要性、仕事内容の専門性、業務量

ビザ申請時には、採用経緯や職務内容についての詳細な説明書を提出すのですが、その説明書類の書き方によって許可不許可が決まります。

雇用先が個人事業主である場合の就労ビザ必要書類例

事業の業種や売上、外国人の国籍、学歴、職歴などによって提出すべき書類は異なりますが、提出書類の例を下記に列挙します。

本人に関する書類

  • 証明写真(3ヶ月以内に撮影したもの 縦40×横30mm)
  • パスポート(原本)
  • 在留カード(原本)
  • 履歴書(市販の書式でOK。最終学歴から現在までの経歴を記載)
  • 最終学歴(大学等)の卒業証明書(学位証明書でも可)
  • 日本語資格がある場合 ⇒ 日本語能力試験の合格証
  • その他、職務上活用できる資格証、実務経験を証明できる書類など

雇用主に関する書類

  • 税務署に提出している開業届け(税務署受付印あるもの)
  • 給与支払事務所等の開設届出書(税務署受付印あるもの)
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(税務署受付印あるもの)
  • 事業所・事務所の賃貸借契約書のコピー
  • 事業所・事務所の写真(外観、入口、室内、看板など)
  • 直近年の個人事業の確定申告書(税務署受付印あるもの)
  • 開業1年未満の場合 ⇒ 開業から申請直前月までの月次決算書 (エクセルで作成した簡易的なものでも可)
  • 事業用通帳のコピー(直近1年間の記帳ページ)
  • 融資や補助金を受けている場合 ⇒ その証拠となる書類

個人事業での就労ビザ よくある質問

質問:就労ビザが許可されるためには、いくらくらい売上が必要ですか?

回答:業種にもよりますが、その人を雇って、最低1年間、安定的に給与(もしくは業務委託料)を払えるだけの売上が必要です。たとえば、前年度の確定申告書の事業収入が700万円、経費を引いた所得が300万円の場合、安定的な給与を支払えるとは判断されにくいです。書類上、個人事業者本人の所得が300万円であり、そこから1人分の年間給与を払えるとは考えにくいからです。

質問:雇用保険には加入すべきですか?

ビザ申請書には、雇用保険適用事業所番号(11桁)を書く欄があります。個人事業主で従業員がいない場合、この蘭を空欄にするしかないのですが、別紙にてその理由書を提出したほうがよいでしょう。理由書の書き方は状況によりますので、プロに相談するか、書いてもらったほうがよいです。

外国人雇用を機に、法人化する場合の留意点

外国人雇用を機に、法人化される場合、以下の点に留意してください。

➢会社名

〇〇食品、〇〇ビルメンテナンス、〇〇清掃という会社名の場合、現場就労(単純作業に従事)ではないかという先入観を持たれやすいですので、避けていただくほうが無難です。

➢事業目的
将来的に行う見込みのある事業すべてを記載したほうが、雇用できる外国人の条件が広がります。たとえば、ゲストハウスの経営を主たる事業とされる場合、「ゲストハウスの経営」とだけ記載するのではなく、翻訳サービス、語学教室、不動産の売買など、将来的に行う見込みのある事業すべてを記載してください。そのほうが、ビザの観点だけでなく、事業拡張の際にスムーズです。

➢その他
会社の業態、規模によって、細かい点が他にもありますが、最低限、上記に留意ください。

当事務所でも会社設立業務を行っております。登記専門の司法書士事務所と共同で手続きを行っております。


この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一

 

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