就労ビザというのは、大学や専門学校での専攻科目と就労先での業務内容の関連性が重視されます。ですから基本的に難しいですが、会社の規模、事業内容等によっては、文系出身の外国人であっても、就労ビザを取得できる可能性があります。
また、一言でIT企業といっても、職務内容はいろいろあります。主要なものだけでも、WEB系サービス開発、システム開発(SI)、ソフトウェア開発、ネットワーク構築、運用保守など、多岐に渡ります。それぞれの仕事で求められる資質や能力も異なっています。
ですから、その会社の事業内容、職務内容を丁寧に説明し、学校での専攻科目、履修科目との関連性を見つけることができれば、就労ビザの取得可能性が高まります。
文系の大学卒業者がSEとして就労ビザを申請する場合
4年制大学卒業者(文系の学士学位あり)の場合、①大学での履修内容と職務内容の関連性があるか、②通訳翻訳の要素がある仕事か、この2点が審査されます。いずれか1点を満たしていれば、就労ビザの該当性はあります。以下のようなケースです。
- 雇用する会社が海外でオフショア開発をしており、ブリッジSEとして文系外国人留学生を採用する。(通訳翻訳の要素がある仕事)
- 雇用する会社がECサイトの構築・運用を行っており、経済・経営・会計学部出身者を採用する(ECサイトの構築には、経済や会計等の専門知識が必要であるため、関連性が高いと判断されやすい)
- 雇用する会社が、多言語サイトを運営していたり、外資系企業との取引があり、通訳翻訳の要素が必要とされる場合
この他、大学での専門科目と職務内容に関連性が認められた場合、または通訳翻訳の要素がある場合、就労ビザ取得の可能性があります。
大学での専門科目と職務内容に関連性がなく、通訳翻訳の要素もない場合
例えば、ネットワークの運用保守を専門で扱う会社で、文学部歴史学科卒業の外国人を採用する場合などです。取引先は、全て日本国内の企業であるとします。このケースでは、職務内容との関連性は乏しいですし、通訳翻訳の要素もほとんどありません。
このケースで、本人が、日本語能力試験N1に合格している場合、特定活動ビザ(本邦大学卒業)を申請できます。
特定活動ビザ(本邦大学卒業者)は特定活動46号ビザとも呼ばれます。日本語でのコミュニケーションが必要となる仕事であり、それを説明、立証することで取得できます。
文系の専門学校卒業者がIT企業に就職して就労ビザを申請する場合
専門学校卒業者(専門士学位あり)の場合、専門学校での専攻科目と就労先での業務内容の「密接な」関連性が必須となります。
就労ビザ取得の可能性があるケースは下記です。
- ビジネス系の専門学校で経済、会計などを専攻している外国人が、それらの専門知識を必要とする業務に従事する(ECサイトの構築、物流システムの構築、運用保守、基幹系システムの構築など)
- 語学系の専門学校で、日本語通訳翻訳を専攻している外国人が、ブリッジSEとして勤務する。または、多言語サイトの構築など、語学能力が必要となる仕事に従事する。
- 観光系の専門学校卒業者が、旅行サイトやホテル比較サイトを運営する会社でSEとして従事する。または、雇用する会社で、旅行会社の業務システムや基幹システムを扱った実績がある。
当事務所での経験から申し上げられることは、ほとんどのケースで、関連性を見つけることは可能です。ただ、この関連性の程度の判断、証明するために必要となる説明、根拠証拠については、個々のケースにより全く異なります。ごく簡単な資料でよい場合もあれば、これでもかという資料を求められることもあります。また、申請時に提出する在留資格変更申請書の書き方にも細かい注意が必要です。ご自身で申請した際に、きちんと書けば、問題なく許可されたであろうケースも多数見てきました。
就労ビザ申請時の必要書類(例)
本人に関する書類
- 証明写真(3ヶ月以内に撮影したもの 縦40×横30mm)
- パスポート(原本)
- 在留カード(原本)
- 履歴書(市販の書式でOK。最終学歴から現在までの経歴を記載)
- 最終学歴(大学等)の卒業証明書(学位証明書でも可)
- 日本語資格がある場合 ⇒ 日本語能力試験の合格証
- IT業務に関する資格証
- SE、IT技術者としての実務経験がある場合→実務経験を証明できる書類(在職期間証明書、職務経歴書、自身が関わったプロジェクト詳細説明書)
雇用主に関する書類
- 登記事項証明書
- 会社案内
- 決算書類
- 直近年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(税務署受付印あるもの)
- 職務内容説明書(申請理由書)
- 採用予定の外国人の専攻内容と関連性のあるプロジェクトの仕様書(過去のプロジェクトでも可。提出難しい場合は、仕様書サマリー等でも可能)
文系出身外国人がSEやIT技術者として就労ビザを申請する際の各種説明文書作成には、ある程度の理系知識・IT知識が必要です。そして、それを文系の審査官(ほとんどの入国審査官は文系です)が読んでわかるような文章力も必要です。さらに、入管法上のビザ該当性を満たしているかの観点からも審査されます。
文系出身の外国人をIT企業で採用される場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。IT業界に強い行政書士が担当させていただきます。専門用語を使って相談いただいても大丈夫です!
この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一