同じ職場に何人位までなら外国人を雇える?
技術ビザで雇うのか、国際業務ビザで雇うかによって、人数枠の考え方は異なります。技術ビザで雇う場合、仕事内容が技人国ビザに該当する(一定の専門的知識を要する業務)であれば人数制限はありません。一方、技能実習生などの通訳や労務管理を行う社員として国際業務ビザで採用した場合、無制限にビザが許可される訳ではありません。
例えば技能実習生が10人いて、彼らへの通訳や仕様書等の翻訳が必要な場合、国際業務ビザで雇える外国人は1名が限度かと思われます。なお、製造現場において国際業務ビザで雇う場合、4年生大学を卒業していることが絶対条件となります。
給料は新卒程度の額で良い?
はい、入国管理法上は同職種に従事する日本人社員と同額以上であれば問題ありません。もし、同業務に従事する日本人社員がいない場合、業界平均や同業他社の給与水準に準ずる額で問題ありません。また、最低賃金にも留意が必要です。最低賃金は地域ごとに・職種ごとに制定されています。製造業の場合、職種別最低賃金(特定最低賃金)が適用される場合が多いですので、地域別の最低賃金ではなく、特定最低賃金の方が高いケースが多いです。
例えば、鉄鋼業や塗料製造では、特定最低賃金が地域別最低賃金よりも100円近く高くなっています。
なお、給料が最低賃金ギリギリだと、本当に専門知識を要する業務なのかと疑いを持たれやすいです。給料が最低賃金に近い場合は、ビザ申請時に同職種に従事する日本人社員と同等であることを強調した方が良いでしょう。
また、会社によっては、1年目の給料が低くても、年々給料が上がっていくこともあると思います。その場合は、会社の賃金規定などを提出すると良いでしょう。
学歴の基準を満たすことが出来ない場合は採用できない?
学歴の基準を満たしていない場合、実務経験の要件を満たしているかどうか確認してください。技術ビザの場合、実務経験10年以上、国際業務ビザの場合は、実務経験3年以上です。ただこの実務経験要件をもってビザ申請する場合、立証書類も必要です。通常、在職証明書や勤務していた会社の会社概要(ホームページを印刷したものなど)が必要です。
また、実務経験要件でビザ申請する場合は、過去のビザ申請時に提出している履歴(学歴職歴等)との整合性も厳しく審査されます。入社時期や退社時期が半年以上ずれている場合は、実務経験に信憑性なしと判断されやすいです。
技能実習生で雇っていた外国人を技人国で継続雇用することは出来る?
技能実習期間終了後、継続雇用することは出来ません。なぜなら、技能実習生は日本で習得した技能を本国に帰って活用する必要があるからです。これを技能移転と言います。現行の技能実習制度の運用では、この技能移転は最低1年以上必要とされています。
ちなみに、技能実習から特定技能への移行は可能です。この場合、在留資格変更申請時に技能移転に関する誓約書を提出する必要があります。
採用後数か月は研修でライン作業を行うけど、その後専門業務に就く場合は?
技人国ビザで雇用した場合であっても、研修期間にライン作業を行うことは可能です。ただし、ポイントがあるのでご紹介します。
まず、その研修内容が日本人の大卒社員に対しても同じように行われるものである必要があります。外国人社員だけが行う研修や、内容が日本人社員と異なる場合は、基本的には認められません。そして、研修の時期と期間については、その研修が入社直後に行われるものであり、研修期間が適切でなくてはなりません。例えば、外国人がその企業で就労する全期間に対して、研修期間が大半を占めるような場合は、技人国ビザで行うべき本来の業務を行っていないと判断されます。
技人国ビザで研修としてライン作業のような単純作業が認められるかという事は、合理的な理由があるかどうかが重要となります。例えば、研修期間が1年以上の長期間であるような場合であっても、それがその会社での研修計画やキャリアプランに照らし合わせて合理的なものであれば、それをきちんと説明することで認められる可能性があります。逆に、その研修が必要である理由や、研修期間が適切であることの合理的な理由を説明できない場合は、認められません。
夜勤がある/変則労働時間制の場合でも技人国で雇用できる?注意点は?
はい、夜勤や変則労働時間制でも技人国で雇用することが可能です。ただし、ライン作業ではないかという疑義が持たれやすいです。なぜ夜勤に従事する必要があるのかという合理的説明が必要になります。
技人国ビザでの雇用が難しい場合の選択肢
技人国ビザで雇用が難しい場合、技能実習もしくは特定技能を検討することになります。製造業では、この2つの在留資格は非常によく活用されています。
外国人技能実習機構の統計によると、令和3年度の技能実習計画認定件数は25,520件で、全体の14.9%を占めています。(参照:外国人技能実習機構「令和3年度業務統計」)
また、出入国在留管理庁の統計によると、特定技能で在留する外国人のうち、製造業に従事している人は令和4年12月末時点で27,725人で、全体の約21.2%でした。(参照:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」特定技能1号在留外国人数(令和4年12月末分))
製造業で働ける在留資格の特徴を図にまとめました。3つのビザにたくさんの違いがありますが、1番大事なのは、制度目的が違うことです。制度目的が違うため、他の条件も異なってきます。技能実習生の場合、建前ですが国際貢献が目的です。ですから、本人の学歴や実務経験の要件はありません。日本の高度な技術を習得してもらうのが目的ですから、3年間は転職も不可となっています。製造業については、ほぼ全職種対象となっていますが、日本の基幹産業である自動車の組み立てや半導体の製造に関しては技能実習の対象外となっています。
特定技能の制度目的は、人手不足の解消です。ですから、人手不足が著しい業種である11の業種に限定されています。製造業においては、素形材・産業機械・電気電子情報関連となっています。ここでもやはり自動車の製造は含まれていません。自動車の製造現場もかなりの人手不足ではありますが、日本政府として、自動車の製造技術を国外に流出させたくない意向が伺えます。
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この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一