訪日外国人の急増に伴い、観光業での外国人採用市場が活況です。本稿では、誤解されやすい観光業の就労ビザについて、ポイントを解説します。
※本記事は、2026年1月10日現在の法制度、運用状況に基づいたものです。
観光業での外国人雇用が増加
新型コロナウィルスの収束に伴い、外国人観光客が急増しています。JNTO(日本政府観光局)の統計によると、2024年上半期の訪日外客数が過去最高を更新しました。こうした中、観光業界では、外国人の求人や雇用が大幅に増えています。例えば、沖縄県では観光需要の拡大により外国人労働者が前年より19.7%増加、1万7千人超となったことが報じられました。
観光業に含まれる業種としては、ホテル、外食、旅行業、運輸交通業、観光施設、観光サービス(通訳等のガイド)などがあります。そして、職種も様々です。例えばホテルの場合、フロント、マーケティング、配膳、客室清掃などの職種があります。これらの職種によって、該当する在留資格(就労ビザ)が異なります。該当しない在留資格で就労させていると、不法就労となり、雇用企業も本人も罰せられますので、ポイントだけでも理解しておきましょう。
観光業で就労できる在留資格とは?
観光業で働く外国人が持っている在留資格は、原則、次のいずれかになります。①技人国ビザ、②特定技能ビザ、③特定活動ビザ。
簡単にポイントだけ説明すると、
①技人国ビザに該当する仕事は、一定レベルの専門知識を要する仕事です。例えばホテルであれば、フロントやマーケティングの仕事です。観光施設、例えば博物館で勤務する場合、学芸員や顧客対応、マーケティングなどが該当します。
②特定技能ビザは、特定の業種のみに認められている就労ビザです。観光業においては、宿泊業(ホテル)と外食業のみが該当します。職種については、該当業種での仕事について広く認められています。例えば、ホテルであれば、フロント、マーケティングに加え、配膳や客室清掃といった現業に従事することも認められています。
③特定活動ビザは、いろいろなケースがあるのですが、観光業では、ワーキングホリデーで働く外国人が多いです。
技人国ビザのグレーゾーン
前述のとおり、技人国ビザについては、認められている仕事内容が限定されています。ホテルの場合、技人国ビザで行っても良い活動は、フロント業務・コンシェルジュ業務・マーケティング・法人営業などになります。一流ホテルの場合、フロント業務専従者としての十分な業務量がありますが、ビジネスホテルやゲストハウスの場合、フロント業務を行いながら客室清掃も行うというケースがあると思われます。こうした場合、入国審査官の裁量により審査されます。総合的に見て、「主たる業務」がフロント業務であることが明確であり、その点について合理的な説明がされている場合は許可になりますが、そうでない場合は不許可になります。なお、宿泊業において技人国ビザを申請する場合、旅館営業許可証の写しを求められる事が多いのですが、簡易宿所(ゲストハウス)の場合旅館営業許可をとっていないことが多いので、審査も非常に厳しくなる傾向にあります。
また、最近では、技人国ビザで、外国人のツアーガイドや山岳ガイド、ダイビングインストラクターを採用したいというケースも増えてきています。筆者の事務所だけでも、こうした問合せが昨年末から急増しています。
こうした仕事内容の場合、技人国ビザに該当する要素がどれくらいあるのかを慎重に検討する必要があります。例えば、通訳翻訳の要素があるか、その仕事量はどれくらいか。また、企画や販促、営業の要素があるかどうか。
そして、主たる業務がこうした業務である必要があります。例えば、ツアーガイドの場合、コースの企画立案、資料の翻訳、ツアー中の通訳、アンケート分析、空いた時間にホームページ等での情報発信などをしている場合、技人国ビザに該当する可能性は高いです。
一方、ダイビングインストラクターの場合、主たる業務は潜水業務、機材の準備、後片付けなどであり、付随的に企画や通訳の仕事を行っているということであれば、技人国ビザの取得は難しいでしょう。
技人国と特定技能で迷った場合の判断基準
ホテルでの技人国ビザの審査基準については、法務省出入国在留管理庁から、ガイドラインが公表されています。相当な分量があり、法律用語で書かれているのですが、分かりやすい部分だけ、幾つか抜粋します(図参照)。技人国と特定技能で迷った場合、まず、このガイドラインを参照するとよいでしょう。

ポイントを補足します。ここに掲載している許可事例をみると、仕事内容の技人国該当性だけでなく、その根拠(信憑性)も審査していることが分かります。つまり、空港に隣接するホテルであるため、インバウンド向け販促活動の必要性や業務量があると判断されています。ですから、技人国ビザを申請する際には、仕事内容の詳細だけでなく、その根拠や将来的なニーズ、事業計画なども盛り込んだほうがよい場合があります。
また、不許可事例も典型例ですね。昨年、政権が交代し、グレーな技人国ビザを徹底排除しようという動きがあります。万が一、こうした状況である場合、喫緊の対策が必要となります。
本記事の作成者 行政書士 濵川恭一





