日本の大学や専門学校等で学ぶ留学生の多くが、アルバイトをしています。留学生がアルバイトをしても良い時間は、週に28時間以内と決められていますが、実際にはそれが守られていないケースも散見されます。本記事では、留学生がアルバイトに関する法律を守らないとどうなるか、雇用した企業の責任はあるのかについて、詳しく解説しています。
外国人留学生の資格外活動とは?
日本に住む外国人は何らかの在留資格を持っており、それぞれ認められている活動があります。例えば、留学生は学校に行くことが認められた活動になります。
原則的に、留学生のアルバイトは禁止されています。
それを特別認めてもらう手続きを、資格外活動許可申請といいます。
資格外活動許可申請が必要となるのは、主に留学生、家族滞在ビザの外国人です。
資格外活動違反よくあるケース
資格外活動違反が問題になる典型例を紹介します。
例えば、留学生がコンビニ、飲食店等でアルバイトをしている場合です。コンビニや飲食店は常に人手不足なので、就労時間が週28時間を超えてしまうことが多々あります。繁忙期は特にそうです。店長も違反であることを知っている事が多いですが、どうしても人手が足りず、苦渋の決断でさせてしまうことも散見しています。
また、個人経営で給料を経営者のポケットマネーから出しているなど、現金支給で台帳をつけていない場合など、表面化していない資格外活動違反も少なくないと思われます。
資格外活動に関するよくある誤解
次に、資格外活動許可のよくある誤解を説明します。
資格外活動許可を受けた場合と、在留カードの裏側に許可を証明するスタンプが押されます。
そのスタンプには、許可された活動内容として「週28時間以内の収入を伴う事業又は報酬を受ける活動(風俗営業、店舗型性風俗特殊営業における営業所で行われるもの又は店舗型風俗特殊営業以外の性風俗関連特殊営業に従事するものを除く。)」という文言が書かれています。このうち、週28時間の活動時間を守らなくてはならないことはほとんどの人が知っていますが、風俗営業に関する文言を誤って解釈している人が多いのです。
例えば、パチンコ店や雀荘の例で言うと、店舗などで店員として働くのは違反となります。それだけでなく、パチンコ店や雀荘で雇われて街中でティッシュ配りやチラシ配りをすることも違反となるのです。さらに、風営法の許可がいらないガールズバーであれば働いていいと思っている人も多くいますが、それも違反になります。実際に従事する仕事の内容や、風営法許可が必要な店舗かどうかということだけで判断されないので、注意が必要です。
資格外活動の疑いがあるケースでは、ビザ手続時にどのような書類を求められるか?
ビザの更新や変更申請をした際、資格外活動を行っているのではないかという疑義がある場合、入国管理局から追加書類を求められることがあります。
具体的には下記4つが挙げられます。ひとつずつ簡単に説明していきます。
①直近年度の課税証明書(所得課税証明書)
書類上のアルバイトの収入が記載されます。東京都の場合、だいたい年収で220万をこえると資格外活動違反をしているのでは、という疑義をもたれやすいです。
②預金通帳のコピー(全ページ)
これは、給与の振り込みの明細を調べる為に提出を求められます。
③給与明細書のコピー
給与明細書の場合、直近1年分を求められる場合と、来日以降全てを求められる場合の2パターンがあります。後者の場合は、疑義というよりも入国管理局側が資格外活動違反を確信していると考えていいと思います。
④アルバイトの履歴を記入するシート
これは自己申告で書く書類です。書く内容は申請先の地方入国管理局によって異なりますが、東京の場合はアルバイト先の店名、週労働時間、時給、勤務開始日、退職日等を各書類が渡されます。
資格外活動違反してしまった外国人本人はどうなるのか?
もしも資格外活動違反をしてしまうと、退去強制事由となります。
つまり、資格外活動をすると最悪退去強制となり、日本にいられなくなってしまうのです。それを不服として裁判をしても、勝てる見込みはありません。なぜなら、出入国在留管理法の第24条に明記されているからです。
ただ、現実的には資格外活動違反をして退去強制となる事はほぼありません。2021年に資格外活動違反を理由に退去強制処分となった事件数はわずか37件でした。しかし、資格外活動違反をしてしまうと変更や更新が不許可になるので、それだけでも十分本人にとってもデメリットと言えます。
資格外活動違反があってもビザ変更・ビザ更新できるケース
現実的には資格外活動違反をしたからといってすぐに退去強制になることはまずありませんし、ビザの変更などがいきなり不許可になることも少ないです。たいていは、追加で提出された書類を入管が見て、悪質性等を考慮されて判断されます。
当事務所で扱った経験上、留学生の場合で勉強も一生懸命していて、アルバイトもしていたケースは不許可になりにくいです。
例えば、4年制大学に通っており、現在4年制で卒業要件単位を全て取得していて日本語能力も高く、就職も決まっているようなケースです。この場合、反省文や事情説明書を提出してから、更新されることが多いです。
一方、勉強をせずにもっぱらアルバイトをしていた場合は不許可となる可能性が高いと言えます。
また、専門学校と日本語学校には適正校というものがあります。適正校とは、留学生の在籍管理について適正に実施している教育機関であると、入管が通知した学校のことです。適正校の場合、柔軟に審査されるケースがあります。逆に、適正校でない場合は、非常に厳しく審査されます。現場感覚としては、適正校ではない場合、資格外活動違反をしてしまうとほぼ不許可となっています。
留学生に資格外活動違反をさせずに、外国人を雇う方法
これまで資格外活動違反のリスク、留意点を述べてきましたが、企業にとっては人材確保は重大な課題だと思います。ここからは、資格外活動をさせずに合法で雇う方法を、パターン別に紹介します。
①母国の4年制大学を卒業している場合
日本の大学を中退しても就労ビザ(技人国)をとれる可能性があります。本人、会社双方の合意があればすぐに技人国ビザに変えることも可能です。ちなみに、技人国ビザをもって大学に在籍することはなんら問題ありません。
②卒業要件単位をほぼ修得している留学生の場合
この場合は特定活動ビザが許可される可能性があります。大学4年生などで、就職活動目的でインターンシップとして企業で働くことが出来るビザです。この場合、仕事の内容が学校で学んだ専門知識と関係の深いものでなくてはなりません。条件さえみたせば、週に40時間程度働くことも可能となります。
③学校を中退希望の場合
本人がどうしても退学して就職したい場合です。これは業種によって可否があります。
例えば、飲食店、介護、製造工場、自動者整備、ビルクリーニング、農業、航空貨物仕分けの場合は、特定技能というビザで就労するという選択肢があります。
ただ、せっかく日本に留学したのに、留学した学校をやめるのはリスクが伴うので、これは最後の手段と考えてください。
資格外活動違反をさせた企業側が罰せられることもあるのか?
雇用主が資格外活動違反と知りながら雇用を継続した場合、不法就労助長罪(3年以下の懲役・300万円以下の罰金)に問われる可能性があります。不法就労助長罪は毎年370~400件程度の検挙数があります。外国人だけでなく、日本人も多く検挙されています。
逮捕まではいかなくても、特に地方の場合、管轄する入国管理局から外国人留学生の労働状況について電話がかかってくることがあります。それ以外に、労働局と入管は密接につながっているので、入管から情報を得た労基が指導をすることもあります。さらに、こういった噂はあっという間に留学生間で広まるので、留学生アルバイトが集まりにくくなるというリスクもあります。
資格活動違反についての有料相談
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この記事を書いた人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一