販売職で外国人を採用するときの技人国ビザ ポイント解説

外国人の就労ビザには幾つかの種類がありますが、よく利用されるのは技人国ビザ(技術・人文知識・国際業務ビザ)です。販売職においても例外ではなく、技人国ビザで就労している外国人の数は年々増加しています。しかし、技人国ビザは、一定の専門知識を要する仕事を対象としています。そのボーダーラインはどこにあるのか、考察してみました。

本記事は、当事務所が月刊人材ビジネス誌にて執筆した内容を加筆したものです。

販売職において技人国ビザがとれないケース

 

まず、販売職において技人国ビザがとれないケースを具体的にいくつか紹介します。

反復継続的な作業である。

技術・人文知識・国際業務ビザ(以下、技人国ビザ)です。技人国ビザの対象となる仕事は、一定レベルの専門知識を必要とする仕事です。ですが、この「一定レベル」かどうかというのは、個々の事案によって個別に判断されます。審査官の裁量による部分も多いですが、明らかに一定レベルの専門性は不要であろうというケースでは、技人国ビザは許可されません。

典型的な作業としては、コンビニエンスストア等でのレジ打ち、商品陳列等ですね。仕事内容全体を見て、そのほとんどが反復継続的な作業である場合、専門知識を要する仕事とはみなされません。作業内容が多岐にわたったとしても、1週間単位で見て、反復継続性が高い作業が大半を占める場合は、厳しい審査となります。

「未経験歓迎」という文言で募集している

一般的に求人の文言は門戸を広くするため「未経験歓迎」とか、「誰でもできる仕事です」といった文言が使われるケースがあります。在留資格の審査をする審査官は、こうした求人情報や採用ページを見ることが非常に多いです。こうした文言が書いてあると、誤解を招きます。一定の専門知識が必要な業務であれば、こうした文言は避けた方が無難です。

販売職での技人国ビザ 本人の学歴要件

外国人が技人国ビザを申請する場合、原則、国内外の大学を卒業しているか、日本の専門学校を卒業し専門士の学位を取得していることが必要です。

大学の専攻科目との関連性は柔軟に審査される

大学での専攻科目との関連性は柔軟に審査されるため、文系であればほとんど問題にならないでしょう。理系である場合、販売する商品に理系知識が少しでも必要であれば柔軟に審査してもらえます。

専門学校の専攻科目との関連性は厳しく審査されるが例外もある

専門学校の場合、学校での専攻内容と職務内容に密接な関連性が必要となります。これが大原則です。ただし、例外があります。

1つ目の例外は、文部科学省の認定を受けた専修学校の専門課程の卒業者についてです。この場合、専攻内容と職務内容の関連性は柔軟に審査されます。この認定を受けているかどうかは、卒業した専門学校に問い合わせれば教えてもらえます。

2つ目の例外は、専門学校を卒業後、3年以上、専攻科目と密接な関連のある職務に従事していた場合です。この場合も、専攻内容と職務内容の関連性は柔軟に審査されます。例えば、専門学校でプログラミングを専攻していた外国人が、3年間ソフトウェア肺活の仕事に従事した後に、免税店に転職する場合、転職先の仕事がプログラミングとは直接関係なくても柔軟に審査されるということです。

販売職での技人国ビザ 許可されるケース

販売職で技人国ビザを申請した場合、一定レベルの専門知識が必要な業務か否かが重要になります。一概に言えませんが、下記のような要素が審査されます。

提案営業の要素があるか?

お客様の要望を聞きながら、最適な商品を提案していく場合、販売というよりも企画営業の要素があるため、技人国ビザが許可されやすいです。代表的なのは、携帯ショップの販売員や百貨店の外商部員などですね。

日常的に通訳翻訳の仕事が発生するか?

量販店や小売店において、外国人客が非常に多く(明確な根拠を説明できる)、多言語サイトもあり、日常的に通訳・翻訳の必要性がある場合、技人国ビザが許可される可能性が高いです。

複数の店舗を管理する仕事であるか?

多数の店舗があり、マネージャーやスーパーバイザーとして勤務するのであれば、技人国ビザが許可されるケースがあります。この場合、新卒あるいは入社していきなりマネージャーになれる根拠の説明が求められます。例えば、留学生時代に2年間、そのお店でアルバイトをしており、正社員と同等レベルの仕事ができるようになっている。日本語力も高く、学校での成績も優秀である。これらを証明できれば、技人国ビザを取得できる可能性があります。

 

全体的にいえることですが、販売職で技人国ビザを申請した場合、複数名採用したのに、技人国ビザが許可される人と許可されない人がいます。ほとんどの場合、本人側に原因はなく、申請書類の書き方に原因があります。また、どのような添付書類をつけるかによっても、結果が異なります。同じ仕事であっても、本人の年齢や学歴、経歴によっては、提出すべき添付書類が異なることがよくあります。

以下、当事務所でサポートさせていただいた代表的な許可事例を紹介します。

空港内免税店

国際空港の免税店で、外国人客への通訳や免税書類の作成を担当する外国人を採用した際の就労ビザ申請です。

外国人客数の根拠書類については不要だと判断し、提出しませんでした。実際に作成する免税書類のサンプルを提出し、翻訳的な要素もあることを説明しました。

高級ブランド時計専門店

このお店では、POSで顧客の属性データを取っていました。最近のPOSは、年代や性別だけでなく、外国人客か否かも入力できるようです。就労ビザ申請時には、国別外国人来店数のデータに加え、取扱説明書の翻訳サンプルも提出しました。海外時計メーカーの中には、英語の取扱説明書しか用意がない場合もあるため、重要部分の翻訳なども任せたいとのことでした。

化粧品メーカー直営の販売店

このメーカーでは、海外でも知名度があり、日本国内のお店に富裕層の外国人が多く来店されていました。外国人客の数を正確なデータで立証できたため、スムーズに就労ビザが許可されました。

自動車のディーラー

毎年、新卒採用の時期に、国産車および輸入車のディーラー様から就労ビザ手続きの依頼をいただいております。最近では、ビジネス系専門学校卒業の外国人を採用された際の就労ビザ手続きを依頼いただくことが多いです。ビジネス系専門学校の場合、学校で学んだことと仕事内容に関する関連性を説明、立証することに苦労します。ただ、自動車ディーラー様の場合、会社の安定性、継続性は問題ないことが多いです。当該外国人を販売職(営業職)として採用するということを、プロのサポートを受けながら明確に説明、立証できれば許可になる可能性が高いです。

大手電器量販店

英語、中国語、韓国語、ベトナム語でのPOPが多数あり、多言語での商品案内パンフレット(簡易版)が用意されていました。外国人来店数は多かったのですが、日本人との割合でいえば低かったため、就労ビザ審査時に、日本人への接客販売についての追加説明を求められました。この時は、月平均来客数(外国人及び日本人)と販売員のシフトを提出し、外国人社員(就労ビザを申請する外国人)が外国人客を担当する必要性、また既存外国人社員もそうしていることを説明し、無事許可となりました。

外国人顧客が多い携帯ショップ(スマホ契約販売代理店)

携帯ショップ(スマートフォン等の契約販売代理店)では、販売前の商品説明だけでなく、契約時の手続きに30分~1時間かかります。外国人のお客様であれば、基本的にその言語で説明することになります。就労ビザ申請時には、契約時に説明する書類、重要点の翻訳サンプルなどを提出しました。

就労ビザ申請時の職務内容説明の書き方

例えば、就労ビザの申請書類の職務内容蘭に、「携帯ショップでの販売職」とだけ書くと、不許可になる可能性が高いです。審査官は毎日膨大な件数を処理しており、いちいち、この業態のお店での販売職は、どんな仕事なんだろうと想像を働かせてはくれません。あくまで提出された資料だけで判断します。

どんな仕事なのか、それが技人国ビザに該当する仕事なのか、そのための証拠は何を用意すればよいのか。こうしたことは、申請する側が考えなければいけないことになっています。

販売系の就労ビザは、同業態、同程度の規模であっても、就労ビザが許可される場合と許可されない場合があります。当事務所の経験上、その差はわずかです。申請書類のわずかな不足、不備が結果に影響します。

販売職で外国人の就労ビザ申請する時の提出書類例

本人に関する書類

  • 証明写真(3ヶ月以内に撮影したもの 縦40×横30mm)
  • パスポート(原本)
  • 在留カード(原本)
  • 履歴書(市販の書式でOK。最終学歴から現在までの経歴を記載)
  • 最終学歴(大学等)の卒業証明書(学位証明書でも可)
  • 日本語資格がある場合 ⇒ 日本語能力試験の合格証
  • その他、職務上活用できる資格証、実務経験を証明できる書類など

雇用主に関する書類

  • 運営する法人の登記事項証明書
  • 決算書類
  • 直近年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
  • 会社案内
  • 多言語サイトがある場合、そのサイトの主要ページのコピー
  • 外国語で表記された商品案内
  • 外国人の国籍別来店者数などの記録(POSデータ等)
  • 仕事内容に関する詳細説明書
  • 就業場所や仕事風景の写真
  • その他、状況に応じた書類

 


この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一

 

相談の予約、お問い合わせは、下記フォームより送信ください。

    ※メール送信できない場合。お手数ですが、下記まで直接メールでお願いいたします。
    oto@svisa.net

    ◆無料相談◆
    ・オンラインにて30分程度の相談となります。
    ・3ヶ月以内に手続きをする予定のある企業様、個人の方向け

    ◆有料相談◆
    ・オンライン、来所にて1時間程度の相談となります。(1時間11000円)
    ・具体的な書類の書き方や対策など、時間の範囲内でできるだけの回答をさせていただきます。
    ・相談後、1週間以内の追加相談が無料
    ・相談後、依頼いただいた場合、有料相談料は業務の料金の一部に充当します(実質、無料相談)

    どのような相談ですか?
    技術・人文知識・国際業務(一般企業で働くビザ)経営管理ビザ配偶者ビザ永住者ビザその他

    ページトップへ戻る