外国人を単純労働に従事させたい場合、技能実習ビザや特定技能ビザが該当しますが、条件を満たせば技人国ビザでも採用できる場合もあります。この条件について、ポイントを解説します。
現場を知らずに管理業務はできない
技術・人文知識・国際業務ビザ(以下、技人国ビザ)は、専門知識を活かした仕事に従事するためのビザです。具体的な仕事内容として挙げられているのは、システム開発、設計、生産管理、営業、マーケティング、通訳翻訳、デザイン等です。
そして、原則として、技人国ビザで現業や単純作業に従事することはできません。在留資格の審査上、現業とされている仕事は、工場内での組立、配線、目視検査、梱包、建設港湾作業、調理、店舗での接客、農作業、水産加工作業などです。簡単に言い換えると、技能実習や特定技能で対象とされている仕事ですね。
しかし、どんな業務を行うにしても、現場を経験することは、企業と本人の双方にとってメリットがあります。実際に、よくある相談としては、下記です。
「担当してもらう業務は主に店舗運営(マネジメント職)になりますが、入社後2~3年は店舗現場を経験してもらいます。その間の業務内容は調理補助、洗浄、配膳といったアルバイトと同等の業務となります。このような状況で技人国ビザの取得の見込みはあるのでしょうか?」
当事務所にも、こうした相談がよくあります。実際には詳細をヒアリングしないと正確な回答は難しいのですが、然るべき対策を取れば、許容される可能性はあります。この点について、法務省から発行されているガイドラインに沿って解説します。
技人国ビザで許容されうる現業作業の条件とは
技人国ビザで許容されうる作業については、法務省からガイドラインから出ています。このガイドラインは2008年3月に出され、それから何度か改定を重ね、最新版は、2021年3月発行のものです。古い版を使用しないよう注意してくださいね。原文は難解な法律用語で書かれているため、ポイントをできるだけ分かりやすく解説します。
ポイントは3つあります。
1.現業に従事する期間と必要性に合理的理由がある
単に現場で人が足りないからという理由は認められません。本来業務を行う上で、現場を知っておく必要があることを説得力のある文章で説明する必要があります。
2.日本人も同様の現業研修があること
外国人だけ現業に従事させることはできません。
3.入社直後の現業研修であること
入社して数年経過してから現業を経験するということも認められません。必ず入社直後の現業研修であることが必要です。
許可事例を解説
法務省ガイドランで公表されている許可事例を図に示します。このポイントは、「採用当初の2年間に限定」されていること、そして「日本人の大卒者と同様に」とあることです。
将来的なキャリアプランについても、「本社の営業部門や管理部門、グループ内の貿易会社等において幹部候補者として営業や海外業務に従事するこことなっている」と明確に記載されています。
許容されないケースとは
研修期間と必要性に合理性がないと判断されるケースです。典型的なケースとしては、永続的に現業に従事する可能性も十分にあるとみなされる場合ですね。
日本人の場合、最初は現業に従事し、本人の能力や資質次第でステップアップしていくということがよくあります。経営判断的には非常に合理性があると思うのですが、残念ながらこの考え方は、在留資格のルール上、認められていません。
在留資格のルールでは、管理業務等へのキャリアパスは大前提であり、現場を経験することに意味があると判断された場合のみ、現業が認められます。
審査官向け説明書類の書き方
現業作業が合法なのか判断が難しいケースでは、出入国在留管理官署との事前折衝もお勧めです。事前折衝する際には、口頭説明だけではなく、説明文書も持参しましょう。
説明文書の中で、現業の仕事内容について、できるだけ詳細に書きます。文章だけでイメージしにくい場合は写真や図もつけるとよいですね。また、本人のキャリアパスについては、具体的に書きましょう。モデルケースで良いので、どのようにキャリアアップしていくのかをイメージできるような資料が望ましいです。
なお、専ら、反復継続的な作業に従事する、技能実習生と全く同じ作業であるなど、明らかに、人員確保目的だと思われる場合は、本スキームは許容されません。
筆者は、これまで何度か、法務省本省や関東圏の出入国在留管理局にて、企業の人事担当者と一緒に事前折衝をしたことがあるのですが、いずれの場合も、現業作業の意義や内容を理解してもらうことができ、良い結果につながっています。
なお、相談後、コンサルティング業務等を依頼いただいた場合、相談料は業務料金の一部に充当します(実質無料相談)。
●相談後に要点メモをメールします(メモを取る必要がないので相談に集中できます。また、上司等への報告書や稟議書にも使用できます)
●関連資料のご提供(なかなか探しにくい法務省ガイドラインや過去判例の該当ページコピーなど
●相談後に追加質問がある場合、1週間以内であればメール1往復での追加相談可能
●その他、時間内で対応できること(文章作成、書類チェックなど)
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この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一