外国人社員の永住申請のために企業側ができること

会社が外国人社員の永住申請をサポートするメリット

外国人を雇用する企業が外国人社員の永住申請をサポートするメリットは。大きく3つあります。

1つ目は、当該外国人社員が永住者ビザを取得した場合、従事する仕事内容に制限がなくなります。これまで持っていた就労ビザの場合、認められている仕事が決まっています。永住者ビザを取得すれば、日本人と同じように扱うことが可能です。労働基準法を守り、最低賃金のルールを守れば、外国人雇用に関する法令を過度に意識する必要はありません。なお、最低賃金については、2023年10月1日の改定により、史上最大の増額が予定されています。報道機関の発表によれば、全国平均で最低賃金が1000円以上になるように、関係各署での調整が進んでいるようです。また、外国人社員が永住者ビザを取得すれば、役員に登用することも可能です。一般的な就労ビザ(技人国ビザ)のまま役員登用した場合、在留資格変更の手続きが発生したり、会社の詳細な決算状況を提出したりする必要がある場合があります。

2つ目のメリットは、ビザ更新が不要になる事です。外国人社員がビザ更新する場合、会社に関する書類(法定調書や決算書類など)を審査当局に提出する必要があります。家族経営等の場合、決算書類を幹部以外の社員に見せたくないというケースもあると思われますが、外国人社員が永住者ビザを取得すれば、こうした書類の開示も不要となります。

3つ目のメリットは、外国人社員の転職及び早期退職の防止に繋がることです。現行の永住審査の実務上のルールでは、転職した場合、1年程度経過しないと永住申請は許可になりません。また、勤続年数が長ければ長いほど審査官の裁量はプラスに働きます。収入要件が微妙な場合、勤続年数が長いことは永住審査で有利になるでしょう。

永住申請の要件とは

永住申請には要件があります。公開された要件と、非公開の要件があります。まず、公開されている要件から説明します。

まず、日本滞在年数に関する要件です。日本人と結婚している方に関する要件は、結婚してから3年以上経過していること、そして、直近1年以上日本で暮らしていることが必要となります。その他の外国人については、原則日本に10年以上滞在していること、うち5年以上就労可能な在留資格で滞在していることが必要となります。

次に、納税要件と年金保険加入要件について説明します。原則、来日してから現在まで税金、年金、健康保険を全て完納している必要があります。そして、原則納付遅れなく期日までに納付していることも求められます。特に、直近2年間に納付遅れがあった場合、永住申請は許可されません。それより以前に納付遅れがあった場合、遅れた日数や期間などを総合的に判断されます。

次に収入要件について説明します。収入要件はその方の年齢や住んでいる都道府県によって、また、扶養家族の数によって金額が異なっています。この収入要件は公開されていません。ただ、昨今、日本人の賃金が少しずつ上がっているので、それに合わせて収入要件も上がっていると予測されています。大体の目安ですが、東京都に在住する30代の方で扶養家族が1名の場合、350万以上が必要だと言われています。東京都の30台の平均年収が400万強なので、妥当なラインかなと思います。

永住申請のガイドラインもチェックする

法務省出入国在留管理庁では、永住申請のガイドラインを公表しています。ただ、このガイドラインは難しい日本語で書かれており、法律の専門用語も使われています。ですから、外国人がこうした難解な文章を正確に理解することは難しいと思われます。

そこで、企業側がこのガイドラインをチェックして、有利な情報があれば外国人に教えてあげると良いでしょう。例えば、永住申請ガイドラインには「日本国への貢献」という項目があります。この項目だけでも、1000字以上の文言が書かれています。一例をみると、上場企業での3年以上の役員経験があったり、日本の高等教育機関で3年以上の教育・研究活動に従事していたりする場合、日本国への貢献が認められます。筆者の現場感覚としては、日本国への貢献が認められた場合、他の要素が若干弱かったとしても許可になる可能性が非常に高いです。こうした日本国への貢献などは、審査官が積極的に調べてくれるものではありません。あくまで申請人本人が自ら自己申告するものとなります。ですから、こうした貢献をしている方の場合、積極的にアピールしましょう。

また、ガイドラインに記載されている要件に若干満たない場合であっても審査官の裁量にはプラスになりますので、根拠資料と共に提出することをお勧めします。例えば、日本の4年生大学で非常勤講師を3年以上勤めていたなどの経験がある場合です。

優先審査対象となる高度専門職外国人とは

永住申請をした場合、結果が出るまで半年から1年以上かかります。日本人と結婚している方や、定住者の外国人の場合、もう少し早い傾向にありますが、就労ビザの外国人の場合、長期間待つ必要があります。経営管理ビザの場合、1年以上審査にかかることも珍しくありません。

ただし、高度専門職ビザに該当する外国人の場合、永住申請も優先審査されます。高度専門職ビザに該当する外国人とは、高度専門職ビザを持っている外国人だけでなく、高度専門職ポイントを70ポイント以上持っている外国人です。

高度専門職ポイントについては、詳細は省略しますが、典型的な該当者としては日本の大学院を卒業し、日本語能力試験N1に合格している方であれば該当する可能性がありますので、確認してみましょう。

また、高等教育機関や国立研究開発法人などに勤務している外国人の場合、ほとんどのケースで10のボーナスポイントが加算されます。こうした機関では官公庁からの補助金が出ている可能性が高いからです。

上司からの推薦書の効果とは?

永住申請をする外国人社員から、推薦状を書いてくださいと頼まれることもあると思います。この推薦状については、色々な意見があります。絶対出した方が良いという意見もあれば、ほとんど効果がないという意見もあります。筆者のこれまで15年の経験の限りでは、実務上、ほとんど効果はありません。ただし、審査官が感動するような文章であれば、効果はあります。審査官の心を動かすような文章ですね。

実は最近、感動的な推薦状を拝読したことがあります。ある中国人の方の永住申請をサポートしたのですが、上司の方が書いた推薦状が素晴らしかったです。その方が色々な方に愛されていたのだなという事が、本当によく伝わってくるような文章でした。詳細については書けませんが、以下のようなことが書いてありました。

  • 仕事に対する姿勢、情熱など
  • 会社に貢献したこと(新規プロジェクトを立ち上げた、売上に多大な貢献をした等)
  • 上記に関するエピソード
  • 今後も世界で活躍してほしいということ

帰化申請について

最後に、帰化申請についてもポイントだけ解説したいと思います。外国人社員の中には、永住申請と帰化申請を同時に進める方もおられます。帰申請は永住申請と異なり、日本語能力も審査されます。会話の中で日本語能力を審査される場合もありますし、漢字やカタカナの筆記試験がある場合もあります。帰化申請が許可された場合、日本国籍を取得できるため、収入安定性や日本への定着性をより厳しく審査される傾向にあります。


この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一

 

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