行政書士が徹底解説!フィリピン人雇用 MWO・POEAの手続き 

MWO・POEAの手続きとは

日本国内でフィリピン人を雇用する時には、フィリピン政府に承認を得る必要があります。そして、この承認手続きは2段階あります。

簡単に説明すると、まず、50枚くらいの英文書類を用意して、MWO東京(MWO大阪)に申請します。そうすると、審査官による厳しく細かい審査を経て、承認が得られます。明確な審査基準は公開されておらず(おそらく明確な審査基準が存在しない)、審査官の裁量というか、その時の気分ではないかというような審査がされます。

MWO東京(MWO大阪)からの承認が得られると、そこで終わりではありません。今度は、フィリピン海外雇用庁(POEA)の承認が必要となります。

まとめると、下記です。

フィリピン海外労働事務所(MWO)・・・東京・大阪のMWO事務所での申請

フィリピン海外雇用庁(POEA)・・・フィリピン マニラのPOEA事務所での申請

 

なお、タイ人を雇用する時にも、同じような手続きがあるのですが、MWO・POEAの手続きと比較すると非常に簡単です。

なぜ、MWO・POEAの手続きが必要なのか?

フィリピン政府が、海外労働者に対して(実際には雇用企業に対して)承認制度を設けている理由は、大きく2つあります。

フィリピン人を劣悪や労働環境から守るため

フィリピンでは、就労者全体の10%が海外で働いていると言われています。日本ではあまりないですが、働く国や職種によっては、不衛生な環境であったり、低賃金であったり、奴隷のような扱いを受けることもあるようです。こうした労働環境から自国民を守るため、フィリピン政府では承認の制度を設けています。

ただ、フィリピン政府が求める労働環境と実際の環境は異なります。日本人からみれば十分整備された環境、妥当な賃金であっても、MWO審査官も同じように判断してくれるとは限りません。MWOの審査では、このあたりのすり合わせが非常に重要です。

海外労働者が海外で得ている収入を把握するため

フィリピンでは、就労者全体の10%が海外で働いていると言われています。そして、ほとんどの海外労働者は母国の家族に送金をします。ですので、フィリピンにとっては、海外労働者の送金が外貨を得る大きな手段となっています。ですから、フィリピン政府としては、海外労働者が海外で得ている収入を正確に把握しておきたいようです。収入が高ければ、税収も増えるため、MWO審査でも、「給与額が低い」、「控除額が多い」といった指摘がよくあります。日本人から見れば、妥当な賃金であってもです。その賃金が妥当であることを、英文書類で説明せざるを得ない場合もあります。

MWO・POEA 手続きの流れ

MWO・POEA手続きのおおまかな流れは下記となります。実際には、審査官の指示により、追加の書類が発生したり、順番が変わったりすることもあります。

  1. MWO申請書類を作成・収集して、MWO東京(MWO大阪)に申請する
  2. MWO東京(MWO大阪)での審査
  3. MWO東京(MWO大阪)での面接(雇用企業の代表者など)
  4. MWO承認書が届く
  5. (ここからフィリピン国内での手続き)4を本人に郵送
  6. 本人がフィリピンのPOEAで海外労働許可申請
  7. POEAの承認
  8. 来日可能になる

※在留資格の手続きについては省略して説明しております。

MWO 審査する場所について

MWO東京

MWO東京は、東京都港区六本木の駐日フィリピン共和国大使館内にあります。管轄地域は以下の地位です。

北海道、東北6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)

関東甲信越(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、長野県、山梨県

静岡県、沖縄県

MWO大阪

MWO大阪は、大阪府大阪市の在大阪フィリピン共和国総領事館内にあります。管轄しているのは以下の地域です。

北陸3県(富山県、石川県、福井県

東海3県(岐阜県、愛知県、三重県)

近畿(滋賀県、京都県、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)

中国・四国(島根県、岡山県、鳥取県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県)

九州(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県)

MWO手続き なぜ時間がかかるのか?

MWO手続きには時間がかかります。その理由を説明したいと思います。MWO手続きは、次の4つの要素(4つのフェーズ)に分解されます。

1.会社が用意する書類(通常5~10種類程度)

共通書類としては、登記事項証明書、会社案内、代表者のパスポートコピー、決算書類、雇用契約書です。

早ければ1日、長くても1週間あれば用意できる書類です。この段階で業務が止まることは滅多にありません。

2.本人が用意する書類(通常10種類程度)

共通書類としては、履歴書、最終学歴の卒業証明書、健康診断書(MWO指定書式)、前職の在職証明書などです。

早い人だと、1日で用意してくれますが、この段階で業務が止まることもあります。これまでの経験上、健康診断書や前職の在職証明書の取得に時間がかかります。本人から、「健康診断を受けるお金がありません」と言われることもよくあります。

3.MWO申請書一式を作成、取り纏め(通常50枚程度)

この部分は、当事務所側(フィリピン政府認定の送り出し機関)が担当します。1と2の書類が全て揃っていれば、通常1週間で作成しております。ちなみに、過去の最速記録は24時間です。日本とフィリピンにいる担当者4人がかりで特急で作成しました。この部分に関しては、当事務所側でコントロールできます。お急ぎの場合、最大限努力します。

4.MWO東京(大阪)での審査

MWO審査官による厳しい細かい審査があります。時には、「このフィリピン人を日本で働かせたくないのか」と思うような理不尽な補正対応を求められることもあります。補正対応に時間がかかればかかるほど、審査にかかる日数も増えてしまいます。

また、当然ですが、審査はフィリピン人の役人が担当します。ですからフィリピン時間でものごとが動きます。日本の役所のように、きっちりしていません。よくフィリピン人が、友人はこうだったとか、前回はこの書類はいらなかったとか言うのですが、毎回微妙に必要書類や手続き方法が異なるのも、この手続きの特長です。この点もご理解いただければと思います。

MWO手続き よくある3つの補正要求

MWO手続きで、よくある補正を幾つか紹介します。この業務をしていると、時々、びっくりするような補正が来ます。あまりに衝撃的なものはここでは書けませんが、よくある3つの事例を紹介します。

1:給与額についての再検討を要求されるケース

本人への給与額についての補正は、本当によくあります。年収が低くても高くてもあります。いずれも、「もう少し給料上げられませんか?貴社で再検討ください」といった趣旨の審査官からのコメントが来ます。客観的にみると、十分な給与額であるにも関わらずです。こうした補正があった場合、給料が妥当であることを統計データなども盛り込みながら説明した英文書類を作成することで対応しております。

補正時に必要となる英文書類については、当事務所と提携する認定エージェントが作成します。フィリピン人の審査官が納得するような文章を書くためには、フィリピン人役人の立場や気持ちが分かっている認定エージェントが作成したほうがよいからです。

また、給与から控除される社会保険費についても、高いのではないかとの指摘があったケースもあります。それは日本政府に言ってくれと逆に突っ込みたくなるような指摘でした。このケースでは、日本の医療保険、年金の制度を説明する英文書類の作成が必要となりました。いずれも、対応し、無事にMWO承認が得られています。

2:日本語力が必要ない職種であるにも関わらず、日本語能力試験N4を要求されるケース

貿易会社で輸出入実務の担当者としてフィリピン人を雇用したケースでは、MWO審査官から、日本語能力試験のN4合格証がないとMWO承認はできませんと言われました。おそらく、特定技能ビザでの雇用と混同されたようです。この場合、日本の在留資格制度についての公的書類(法務省の公式サイトの該当箇所を英訳したもの等)を説明し、行政書士による補足説明書を提出することになりました。

3:仕事内容を詳細に説明した文書の提出を求められるケース

この補正もよくあります。職務内容については、最初から詳細な説明書を出すこともできるのですが、それが逆効果になり余計に審査日数がかかる場合もあります。職務内容説明については、フィリピン人の役人(審査官)が理解できるよう、適宜解説も入れながら記載しています。また、就業場所や職務風景の写真を添付することもあります。

POLO面接のポイント

MWO申請が受理されると、1~2カ月後に、MWO東京(大阪)から『代表者の方が面接に来て下さい』という連絡がある場合があります。面接は、平日昼間に行われます。

※面接がない場合も多いです。

面接がある場合は、主に下記の3つのことをチェックするために行われます。

①MWO申請書の記載内容確認

②適正な雇用環境、労働条件であることの確認

③フィリピン人社員に対する経営者の想いの確認(下に見ていないかの確認)

申請書類を1枚ずつチェックしながら進む時もあれば、審査管の思い付きで質問しているのではと思う時もあります。経営者のプライベートな事、健康状態等も突っ込んで聞かれることがありますが、あまり気を悪くしないようにしてください。審査官はいろいろな事を聞く中で、どんな会社なのか、どのような雇用主なのか判断しようとしています。

当事務所にMWO申請フルサポートを依頼いただく場合、貴社の個別状況に応じて想定される質問の検討や、オンラインで面接シミュレーションも行っております。

面接で会社に聞かれる質問

下記は、過去の申請者が聞かれた内容です。これ以外のことも聞かれる可能性がありますが、以下については、ある程度答えを用意しておいた方がよいかと思います。ただ、数分で終わる場合もあります。

審査官によって、面接の雰囲気は大きく異なります。ざっくばらんに気さくな雰囲気で行われる場合もありますし、あえて厳格な口調で話されることもあります。

採用経緯について

  • どのような経緯で採用されたのですか?
  • 今回の送り出し機関のことはどのように知ったのですか?

貴社の事業内容について

  • どんな事業を行っているのですか?(具体的に)
  • 顧客は法人ですか?個人ですか?
  • 登記簿謄本に記載がない事業で、現在行っている事業はありますか?
  • 必要な許認可を取得していますか?
  • 特許などを取得していますか?
  • フィリピン系企業との取引はありますか?
  • 個人事業主の場合 → 法人化の予定がありますか?

本人の職務内容について

  • どんな仕事を担当していますか?(担当する予定なのか)
  • 残業はありますか?
  • 時間外手当の算出方法は?
  • タイムカードはありますか?

納税について

  • 顧問税理士はいますか?(事務所名、事務所の場所)

※できれば、税理士先生の名刺を持参する

※顧問税理士がおらず、奥様が経理をされている場合などは、奥様の実務経験(前社で経理担当)などを説明してください。

社会保険について

  • 加入対象の従業員は何人くらいいますか? (原則、規定労働時間の3/4以上の従業員)
  • 加入対象者は、社会保険に加入していますか?

※社会保険の加入義務者の範囲は非常に複雑であるため、できれば管轄の社会保険事務所(もしくは社会保険労務士事務所)で相談し、そのことを面接でも伝えたほうがよいです。相談員が名刺をくれる場合もありますので、その場合は、その名刺を持参ください。面接で説明する際には、「○月○日に、○○社会保険事務所で相談したところ、当社の場合は、○○について加入義務があると教示いただきましたので、そのように手続きしております」というように回答ください。

電話で本人に聞かれる質問(本人が日本にいる場合)

稀にですが、MWO審査官から本人に直接電話がかかってくることもあります。本人が日本に住んでいる場合のみです。

  • これまで勤務した会社全ての従業員規模と職務内容
  • 現在勤務している会社について、毎月の給料の額

女性の方で母国に子供がいる場合の質問

  • 出産する時、どれくらい母国に帰っていましたか?
  • 誰が子供の面倒を見ていますか
  • 養育費用を送っていますか?どのような手段で送っていますか?
  • 将来、子供を日本に連れてくる予定はありますか?

面接で注意すること

誠実に回答する

審査官はフィリピン人です。我々日本人の常識からすれば、失礼な態度、高圧的な態度で質問されることもあるようです。へりくだる必要は全くありませんが、たとえ高圧的な審査官であっても、粛々と誠実に回答するようにしてください。

フィリピン人を大切にするという想いを伝える

フィリピンは発展途上国ですが、多くのフィリピン人はそうは思っていません。日本人の多くが、アメリカ人より下だと思っていないのと同様です。決して下に見るような態度だけは避けてください。

MWO/POEA申請代行サービスの選び方

これまで解説したとおり、MWOはフィリピンの機関であり、審査するのはフィリピン人です。日本の役所でさえ、審査官が異なれば細かいルールも異なります。MWO審査では、審査官がルールという側面もあり、非常に難しく煩雑です。

MWO申請代行サービスを選ぶ際、最低限確認したほうが良い点は下記です。

自社で行うことは何か?

MWO手続きは、依頼すれば全てお任せできるというわけではありません。せっかく専門業者に依頼したのに、自社でやることが多くてびっくりした、がっかりしたという事態にならないよう、自社でやることを確認しておきましょう。当事務所のサービスでは、契約前に書面にて貴社で行っていただくことを明示しております。貴社で行っていただくことも多少はあります。その点を確認いただいてから、依頼いただくようにしております。

総額の料金はいくらかかるのか?

MWO手続きは補正対応(追加対応)がほぼ発生する手続きです。審査官がルールだからです。この補正対応の都度、追加料金が発生するサービスもあります。当事務所のサービスでは、最初から総額表記、追加料金なしを徹底しております。

MWO手続における直接雇用とエージェント経由の違い

MWO/POEA手続は、原則として、フィリピン政府に認定された現地エージェント(フィリピン政府から認定されたフィリピンの人材会社)を経由して行います。たたし、例外的に直接雇用できるケースもあります。

MWO及びPOEAでは、直接雇用できる明確な条件を明確には公表していません。正確にいうと、ぼんやりですが、公表しています。以下はMWOの公式サイトに書かれている文言の抜粋です。その原文と日本語訳です。

THE FOLLOWING CRITERIA MUST BE PRESENT:
1.The Job Category/Position is strictly Highly skilled/Professional (Managerial, Supervisory,
Technical Level e.g. Engineer, Professor, etc.)
2. The compensation package/benefits should be over and above the minimum required by
POEA (e.g. High salary and with other benefits, allowances etc.)
3. The person to be hired must be at least college graduate and has adequate
expertise/knowledge and work experience related to the job (with good credentials)


以下の基準を満たす必要があります。
1.職種・役職が高度専門職(管理職、監督職、技術者、教授などの技術職)であること。
2.報酬/福利厚生は、海外雇用庁が要求する最低水準以上であること(例:高給、その他の
手当、手当てなど)。
3. 採用する人材は、少なくとも大卒以上であり、職務に関連する十分な専門性・知識・実
務経験を有していること(十分な資格のある者)。

上記をみる限り、ある程度の専門スキルを持ち、相応の年収がある方であれば直接雇用ができそうですが、実際はそれほど簡単ではありません。年収600万円以上の人でも直接雇用が認められないこともあります。当事務所としては、確実な方法であるエージェント経由をお勧めしますが、貴社が直接雇用を希望される場合、対応することも可能です。

なお、直接雇用とエージェント経由のメリット、デメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
直接雇用 ●エージェント費用が不要

●スムーズに手続きが進んだ場合、比較的早期に取得できる

●フィリピン側の手続き(OEC取得)を本人達が自分でやる必要あり

●審査途中で、エージェント経由に切り替えるように指示(実施的には命令)されるケースあり

エージェント経由 ●原則の方法なので確実にMWO承認を取得できる

●フィリピン側の手続き(OEC取得)もエージェントが代行できる

●法定手続(フィリピン政府が指定する来日前オリエンテーション、セミナー受講)などもサポート可能

 

●エージェント費用がかかる(日本円で35万円~)

 

ご依頼を検討されている企業様向けに、ZOOMでの無料相談を行っております。無料相談では、貴社の状況にあった最適な提案をさせていただきます。また、MWO手続きの流れ、正確な総額料金をご案内しております。無料相談をご希望の場合、メールにてお問い合わせをお願いいたします。

この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一
 

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