育成就労制度とは何か? 技能実習とは何がどう違うのか?~

2024年6月、改正出入国在留管理局法案が可決され、技能実習が育成就労に変わることになりました。育成就労になることで、何がどう変わるのか、企業側にとってどんな影響があるのか、専門行政書士がわかりやすく解説します。

なぜ、技能実習→育成就労に変わるのか?

従来の技能実習制度には様々な問題点がありました。この問題については、たびたびニュースで取り上げられますし、技能実習生の闇については映画にもなったので、ご存知の方も多いと思いますが、特に大きな点は以下です。

  • 技能実習制度の目的と実態が大きく乖離している。
  • 技能実習生の日本語力が不十分であり、意思疎通が困難なケースがある。
  • 原則、転職ができず、不当な扱いを受けても我慢するしかない。

また、技能実習制度については国際社会からも厳しい指摘を受けています。2014年11月、国連機関である自由権規約人権委員会(United Nations Human Rights Committee)の総括所見によると、

「奴隷、隷属、人身取引の撤廃の項目」として、技能実習制度について「労働搾取目的の人身取引、強制労働が存続している」という勧告がなされています。つまり、「現代の奴隷労働」と指摘を受けたわけですね。

日本政府もこのことを重く捉え、監理体制を強化したり、問題のある実習先や監理団体に指導をしたりしてきましたが、抜本的な改革が必要ということで、技能実習法の大幅改正となりました。

※分かりやすく説明するため、法改正という表現を使っていますが、正確には、「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が公布されました。

育成就労制度では、国際貢献の建前が撤廃された

2024年6月、法務省出入国在留管理局が発表した資料によると、育成就労制度の目的は、以下のように規定されています。

「育成就労制度の受入れ分野において、我が国での3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保すること」

上記を一言で表すと、「人手不足の解消」です。ただし、分野は、原則として、特定技能の分野に限定されています。

技能実習制度から育成就労制度への移行スケジュール

技能実習制度から育成就労制度への移行スケジュールは図のようになっています。

2024年6月に、技能実習制度に関する法律が改正(※)され、公布されました。2024年から2025年にかけて基本方針や主務法令等が作成され、それらを基に、分野別運用方針が作られます。運用方針とは、実務上の細かいルールを記載したものです。

そして、予定では、2027年頃、改正法が施行されます。

改正法が施行された後、おそらく完全移行への移行期間が2~3年用意されると思われます。ですから、育成就労制度への完全移行は、2030年頃になる見込みです。

技能実習制度とは何が違うのか?

技能実習制度との違いは、表のようになります。重要な変更点について、ポイントを解説します。

制度目的が大きく変わる

まず、一番重要な変更点は、「制度目的」です。制度目的が変わったから、その目的を達成するために、細かい部分が変更になっています。

技能実習制度の目的は、国際貢献です。つまり、発展途上国の若者らに日本の優れた技能や技術を学んでもらい、母国に持ち帰って母国の発展に寄与することです。

これに対し、育成就労制度の目的は特定技能1号水準の人材を育成することです。

育成就労で受入可能な対象職種とは?

これまで何度か出てきましたが、育成就労制度の目的は、特定技能1号水準の技能を有する人材を育成することです。ですから、原則として、育成就労の職種・分野は原則特定技能1号と同じになる予定です。

しかし、それでは、対象から外れてしまう職種があります。対象から外れてしまう企業にとっては深刻な問題ですね。現時点で、これらの職種の措置については未定ですが、不公平にならないように、新たな特定産業分野を設置する等が検討されています。

 条件付きで転籍・転職が可能になる

従来の技能実習制度では、転籍・転職は禁止されていました。なぜなら、国際貢献という目的があったからです。特定の技能を一から学ぶためには、3年くらいは腰を据えて学ぶ必要があります。ころころと転職していては、技能が身に付きません。こうした考えが根底にあったため、原則、転職は禁止されていました。

しかし、育成就労制度に変わることで、条件付きではありますが、転職が可能となります。その条件については、下記のような項目が明記される予定です。正式発表は2025年ころになる予定です。

  • やむをえない事情がある。
  • 同一分野での転職である。
  • 一定期間(1~2年)、勤続していること
  • 一定レベルの技能水準を満たしていること(技能試験等で判断)
  • 転籍先が適正な育成就労を実施できること

 

 

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