介護士の人材不足が問題となっている中、政府では、外国人介護士が日本で働ける制度(在留資格)を整備し、外国人介護士を増やそうとしています。本稿では、現時点での外国人介護士の採用スキームについてポイントを紹介します。
外国人が介護士として働くための5つの在留資格
現在、外国人介護士が日本で働くための在留資格(就労ビザ)は5つあります。それぞれ細かい違いがありますが、特長や採用メリットを1つずつ解説します。
なお、永住者や日本人と結婚している外国人、留学生などは、わざわざ就労ビザを取らなくても働けるため、本稿では説明を省略します。
EPA介護士
EPAとは、国と国との経済連携協定のことです。現在、日本は介護の分野において、フィリピン、インドネシア、ベトナムと協定を結んでいます。この3つの国から、現地の看護師さんなどを受け入れています。年間、約700名の介護士が入国し、EPA介護士として活躍しています。
メリットとしては、国主導で動くため、信頼度が高いこと。その反面、受入企業にも本人にも一定要件が求められています。
EPA介護士を採用したい場合、公益社団法人国際厚生事業(JICWELS)に求人登録申請することになります。厳しい審査があり、審査に通れば、受入可能となります。
介護ビザを持つ外国人
介護ビザを持っている外国人というのは、主に、日本にある介護系専門学校の卒業者です。ですから、介護の専門知識があります。現時点で、介護ビザの保有者は約1300人となっています。
介護ビザで外国人を採用したい場合、介護系専門学校と提携するとよいでしょう。最近では、奨学金スキームを使って提携するケースが増えているようです。奨学金スキームとは、介護施設が、専門学校の学費を奨学金として支給してあげ、その代わりに在学中は(放課後や土日、夏休みなど)、施設でアルバイトしてもらうというスキームです。
私は過去に奨学金スキームを活用されている施設を一度取材させていただいたことがあります。担当者曰く、「一度仕組みを作ってしまえば、3年計画ではあるが、毎年4月に2~3人の採用が可能。しかも、これまでアルバイトしてきた方。能力や性格もよく分かっている。コストかかるが、非常に助かります」とのことでした。
技能実習生
技能実習生とは、発展途上国から人材を受入れ、原則3年間、日本の介護施設で実習、働いてもらうという制度です。介護以外でも、82職種で受入られており、約40万人の技能実習生が日本で働いています。そのうち、介護の技能実習生は、累計で約3000人となっています。
技能実習生のメリットは、3年間、確実に雇用できること。転職ができない仕組みになっているからです。なお、他のスキームでは、制度上は転職できるのですが、実際の転職者は少ないのが現状です。
技能実習生を採用したい場合、監理団体という人材あっせん機関を経由することになります。監理団体は全国に約3000社ありますので、介護に強く、サポートが充実している監理団体を選ばれるとよいと思います。
特定技能外国人
今、政府が一番増やそうとしている制度です。2024年までに、6万人(年間12000人)まで増やそうとしています。現時点では、まだ約2300人ですが、今後大幅に増える可能性も十分にあります。政府が積極的に推進していることもあり、メリットは幾つかあります。まず、対象者は介護技能評価試験に合格しているため、介護の基礎知識があること。そして、入職時より人員基準に算入可能であること。一人夜勤も可能です。
特定技能外国人を採用したい場合は、現時点では、人材紹介会社に依頼するケースが多いです。この時の注意点としては、労働局への「国外人材紹介の届出済」の人材紹介会社を使ってください。未届会社を経由すると違法となり、特定技能ビザが取れません。
海外大学インターン
最近注目されている採用方法です。海外の医療系大学の大学生が、1年弱、日本の介護施設でインターンとして働くという制度です。
メリットとしては、海外の医療系大学に通う現役の大学生ですので、おしなべて字頭がよいです。日本でも医学部生は字頭がよい方が多いのと同じですね。実際に筆者は、インターン数十名と面談したことがあるのですが、現場感覚としては、日本で稼ぎたいというよりは、日本が好き、日本で学びたいという意識の方が多かったです。また、最低賃金でOK(他のスキームは日本人社員と同等以上)ということも特長のひとつですね。
現地面接、現地視察も有効
技能実習生や特定技能外国人については、コロナが終わったら、一度現地面接に行ってみるのもおもしろいです。交通費や宿泊費はかかりますが、現地では、現地の送り出し機関(人材会社)が無料でアテンドしてくれます。私も、今まで、ミャンマー、べトナム、中国の現場を見に行ったことがありますが、現地に行ったからこそわかる気づきがありました。現地人材会社の介護トレーニング施設、日本語学校を見学し、その後、ガイドさんの自宅に行きました。自宅に行くことで、当該国の外国人がどんな暮らしをしているのか、どんな食べ物を食べているのかを知ることができました。こうした経験は、採用面接だけではなく、採用後の雇用管理にも活かすことができます。コロナが終わったらぜひ現地面接、現地視察もお勧めします。
この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一