日本に住む外国人は何らかの在留資格を持っていますが、在留資格の種類によって、単純労働が認められる場合と、禁止されている場合があります。詳しくは、外国人が保有している在留カードに記載があるので、在留カードを確認ください。
では、単純労働とは何でしょうか。入国管理制度上の単純労働と、一般的にイメージされる単純労働とは、少し意味が異なります。
下記のような職種が、入国管理制度上の単純労働と見なされる可能性が高いです。※実際のビザ審査では、詳細な職務内容とその根拠などを精査して判断されますので、以下の職種でも単純労働ではないと判断される(つまり就労ビザが許可される)ケースも稀にございます。
飲食店での配膳・調理補助、建設現場作業(設計、施工管理は除く)、警備など
単純労働が認められている在留資格
- 永住者
- 永住者の配偶者等
- 日本人の配偶者等
- 定住者
条件付き(週に28時間以内など)で認められている在留資格
- 留学
- 家族滞在
- 文化活動
- その他、入国管理局から「資格外活動許可」を得ている在留資格
単純労働が認められていない在留資格
- 技術・人文知識・国際業務
- 技能(1~10号)
- 興行(1~4号)
- 教育
- 教授
- 法律
- 医療
- その他、就労系の在留資格
入社当初の現場実習は可能か?
現場を知らないと話にならないが・・・
製造業、サービス業など多くの業種で、新入社員が入社後に一定期間、現場実習を行うケースはよくあると思います。たとえ営業部門や管理部門での採用であっても、現場を知らないことには話にならないというケースも多くあるでしょう。
具体的には、製造会社(メーカー)に営業職として採用されたときの工場実習、ホテルにフロント職で採用された際のベッドメイキング実習、飲食事業会社でマネージャーとして採用された際の店舗実習、建設会社にCADオペレーターとして採用された際の現場作業などがあります。
現場実習が認められるケースとは
原則、就労ビザでは、現場実習、つまり現業に従事することができません。ただし、下記3つの条件を全て満たし、それを論理的に説明し、かつ客観的に証明することができれば、認められる可能性が高いです。
・入社当初に行われる研修の一環であること
・本来業務(管理業務等)を行う上で、必ず必要となるものであること
・日本人についても、入社当初は同様の研修に従事すること
この論理的説明および客観的証明という部分が胆です。単純に、「現場実習は必要だし、それが業界の常識だから」という理由では、認められません。勿論、日本人の場合はその理由で十分なのですが、外国人が日本で働く、しかも現業に従事するための理由という点では不十分です。こういう理由をつけて申請しても、ばっさりと不許可になります。
外国人が現業にどんどん従事してしまうと、日本人の雇用機会が奪われ、賃金体系の崩壊が進み、日本経済にとってマイナスだらけなので、その点は法務省入国管理局でも厳しく審査します。
キャリアモデル構築が鍵を握る
例えば、飲食事業会社の場合、店舗スタッフ→店長→エリアマネージャー→事業部長→役員といった感じで昇格していくことが多いでしょう。
実際には、2~3年以上、店舗スタッフを経験してから店長へという流れが多いのではないでしょうか。しかし、このキャリアモデルをそのまま外国人に当てはめると、つまり2~3年以上も現業に従事させると、違法就労の可能性が高いです。本人にとっても、会社にとっても、大きなペナルティが課せられます。
外国人社員のキャリアモデルについては、本人の経歴や会社の業態、規模によって異なります。このキャリアモデルの完成度が就労ビザの審査に大きく影響します。机上の理論ではなく、実体の裏付けがあるか、その根拠としてどんな材料があるかなど、さまざまな要素を検討する必要があります。
当事務所では、就労ビザ申請業務の一環として、キャリアモデル構築支援サービスも行っておりますので、ご相談ください。