帰化申請できる外国人の条件
法律で定められた条件
帰化申請をする場合、以下のような法律(国籍法)で定められた要件を満たしている必要があります。国籍法の条文をそのまま書くと非常に難解であるため、分かりやすさを優先して記載しております。例外規定、特例などを載せておりません。
直近5年以上、日本に住んでいること | 日本人と結婚している場合、結婚してから3年以上経過しており、直近1年以上、日本に住んでいればOK |
直近3年以上、就労可能な在留資格であること | 日本人と結婚している場合、この条件はなし |
20歳以上であること | 母国の法律においても成人していることが必要です。 |
これまでの在留状況が良好であること | 税金、健康保険、年金を払っていること、前科がないこと、道路交通法違反が少ないこと等から総合判断されます。 |
自分もしくは同居する配偶者等に安定収入があること | 直近3年間の収入、現在の収入、職業、勤続年数などから総合的に判断されます。 |
反政治的活動等をしていないこと | 反政治団体に参加したり、応援したりしたことがないこと |
基本的な日本語の会話、読み書きができること | 概ね小学校3年生で習う漢字の読み書きができることが求められます。 |
水戸法務局で特に厳しく審査される条件
水戸法務局の帰化申請では、上記の法律要件に加え、以下も厳しく審査される傾向にあります。全ての方に該当するわけではありませんが、当事務所でサポートさせていただいた方については、半分くらいの方が、以下の点を細かく聞かれました。当事務所は、2009年~2020年まで、東京都内に事務所を構えておりましたので、東京(本局、府中、八王子)、千葉(本局、松戸)、神奈川(本局)、埼玉(本局、久喜)、広島(本局)など、約20の都道府県在住者の帰化申請をサポートしてきましたが、以下の点をここまで厳しく審査されたのは水戸法務局だけでした。
健康状態
申請者は勿論ですが、ご両親、兄弟姉妹の健康状態について、審査官より聞かれました。申請時だけでなく、面接時にも聞かれました。採用面接でこんなことを聞いたら、大きな問題になってしまいますが、帰化の審査は、日本国籍を許可するかどうかの審査であるため、水戸法務局では、この点についても、かなり突っ込んだ質問をされるようです。
親族が帰化に反対していないか?
帰化申請書には、親族が帰化に賛成しているか反対しているか記載する欄があります。過去に水戸法務局での申請で、「反対」とチェックしたケースがあるのですが、その時の審査官は帰化申請を受け付けてくれませんでした。全てのケースでそうではないかもしれませんが、そのケースでは、審査官から、「まず親族と話し合って賛成してもらってから、また来てください」と言われ、帰化申請を受け付けてもらえなかったことがあります。「親族が反対しているからといって帰化できないという法律はないですが、当局では、親族が反対している方の帰化を受けるつけることはできません」ときっぱり言われたのを今でも覚えています。
他にも、水戸法務局ならではの独自ルールがあるように感じています。隣県の千葉や東京のルールが柔軟であるため、余計にそう感じる部分もあるのですが、帰化する外国人だけで帰化申請しようとすると、いろいろなハードルがあると思われます。
茨城県水戸法務局で帰化申請する時の必要書類
帰化申請をするには、膨大な書類を用意する必要があります。どんな書類が必要になるかは、ご本人の国籍や状況によって大きく異なりますが、基本的な申請書類を紹介します。これだけの書類をご自分で用意するのは結構大変です。これらに加えて、審査官から個別の書類を集めるよう指示されます。
官公庁・大使館等から取り寄せる書類(一例)
- 国籍証明書
- 家族関係を証明する書類(国によって異なる)
- 出生を証明する書類(国によって異なる)
- 両親の婚姻を証明する書類(国によって異なる)
- 出生届の記載事項証明書(日本で生まれた場合)
- 外国人登録原票記載事項証明書
- 婚姻届の記載事項証明書(日本人と結婚している場合)
- 日本人配偶者の戸籍謄本・住民票(日本人と結婚している場合)
- 卒業証明書もしくは在学証明書
- 自動車税納税証明書
- 土地・建物の登記事項証明書
- マンション等の賃貸契約書(賃貸物件に居住している場合)
- 固定資産税納税証明書
- 運転免許証の写し
- 運転記録証明書
- 預金残高証明書
給与所得者の場合に必要な書類(一例)
- 在勤および給与証明書(申請月の前月分給与が記載されたもの)
- 源泉徴収票(国税)
- 前年度の納税証明書(地方税)
- 確定申告書の写し
個人事業主の場合に必要な書類(一例)
- 過去3年分の確定申告書の控え
- 過去3年分の納税証明書(国税)
- 青色申告決定書
- 前年度の納税証明書(地方税)
会社経営者(役員含む)の場合に必要な書類(一例)
- 過去3年分の確定申告書の控え
- 納税証明書(国税)
- 決算報告書の写し
- 登記事項証明書
- 許認可等の写し
- 前年度の納税証明書(地方税)
- 過去3年分の納税証明書(事業税)
- 源泉徴収簿
- 源泉徴収の納付書
新たに作成する書類(専用用紙に記載する)
- 帰化許可申請書
- 親族の概要を記載した書面
- 履歴書
- 帰化動機書
- 宣誓書
- 生計の概要を記載した書面
- 事業の概要を記載した書面
- 自宅、勤務先の略図(過去3年分が必要)
- 母親による申述書
その他の書類(一例)
- 家系図(親族関係が複雑なケース)
- 医師の診断書
- 健康診断書
- 母子手帳(妊娠している場合)
帰化申請の必要書類 実例
帰化申請に必要な書類は、その方(配偶者や婚約者含む)の家族状況、年齢、職業、収入などによって異なりますが、代表的な例を紹介します。正確には、個別状況に応じて、必要書類をリストアップし、管轄法務局と折衝・調整しながら決めていきます。
参考までに、下記は韓国人家族3人全員(夫が会社員・妻は専業主婦、子は小学生)が帰化した時の申請書類一式の写真です。小さな段ボール1箱になりました。夫が会社役員・理事等の場合、会社関係の書類も加わりますので、段ボール2個になることが多いです。
ケース1:韓国籍、会社員、兄が一人だけいる方
※下記のケースでは、書類をとりよせる役所は、①~③韓国領事館、④~⑥今住んでいる場所の市役所、⑦生まれた場所の市役所、⑧本人が婚姻した市役所、⑨ご両親が婚姻した市役所、⑩兄の本籍地の市役所、⑪警察署、⑫父母が亡くなった場所の市役所、⑬法務局、⑭税務署などです。これらの役所に直接行くか、指定の書式を使って定額小為替による郵送請求で取得します。
※兄妹姉妹が多い方、除籍謄本に兄妹姉妹の情報がない方(長男長女の方に多い)については、これ以外に必要書類が増えます。
- 韓国領事館 本人の家族関係証明書(5種類)
- 韓国領事館 実父の家族関係証明書(2種類)+出生から遡った除籍謄本全て(分家、戸籍整理情報含む)
- 韓国領事館 実母の家族関係証明書(2種類)+出生から遡った除籍謄本全て(分家、戸籍整理情報含む)
- 住民票
- 【直近年度】住民税の納税証明書
- 【直近年度】住民税の課税証明書
- 本人の出生届出記載事項証明書
- 本人の婚姻届記載事項証明書(配偶者が日本人の場合、戸籍謄本)
- 両親の婚姻届出記載事項証明書
- 兄の戸籍謄本(もしくは除籍謄本) ・・・帰化の記録があるもの
- 【直近5年分】運転記録証明書
- 父母が亡くなっている場合→死亡届出記載事項証明書
- 持家の場合→登記事項証明書(2種類)
- 確定申告をされている場合→【直近2~3年分】所得税の納税証明書(その1、その2)
- (法務局によっては必要)動機書
※上記の中で、一番大変なのが、韓国領事館から取得する父母の除籍謄本です。35歳くらいの方の場合、父母が生まれた60~80年前の情報を遡って調べ、それらが繋がっていることを証明しなければいけないため、1日では取得できないこともありますが、当事務所では、物理的にさかのぼれる書類まで取得し、繋がりについての説明書を添付します。また、上記は最低限必要な書類です。状況により、さらに多くの書類が必要なケースもございますが、よほどのことがない限り、追加料金は発生しません。
ケース2:法人役員(理事含む)
※上記書類に加え、役員(理事)になられている法人1社毎に、下記が必要です。なお、医療法人の場合、理事長以外は登記されないのですが、理事になっている場合は下記が必要とされています。何年分必要となるかについては、個別ケースで異なります。
- 【直近2~3年分】法人税の納税証明書(その1・その2)
- 【直近2~3年分】消費税の納税証明書
- 【直近2~3年分】法人事業税の納税証明書
- 【直近2~3年分】法人市民税の納税証明書
- 【直近2~3年分】法人県民税の納税証明書(北海道の場合、独自方式で発行されるため注意)
- 【直近1年分】帰化する本人及び配偶者にかかる源泉徴収簿
- 【直近1年分】源泉納付書
- 【直近1年分】社会保険加入事業者であることの証明書類(保険料領収書など)
- 【直近1年分】法人の確定申告書の控え
- 許認可事業(医療法人など)の場合、営業許可証
※消費税の還付を受けている法人の場合、納税関係証明書が追加になることが多いです。
茨城県水戸法務局での帰化申請 面接で聞かれること
茨城県水戸法務局で帰化申請が受理されると、2~3カ月後に、水戸法務局から『面接に来て下さい』という連絡があります。面接は、平日昼間に行われます。
面接は、主に下記の3つのことをチェックするために行われます。
①帰化許可申請書の記載内容確認
②帰化意思の確認
③日本語の会話力、読解力、筆記力の確認(省略されることもあります)
申請書類を1枚ずつ細かくチェックしながら進む時もあれば、書類はほとんど見ずに、いろいろな質問をされることもあります。家族や恋人のこと、プライベートな事、健康状態等も突っ込んで聞かれることがありますが、あまり気を悪くしないようにしてください。審査官はいろいろな事を聞く中で、あなたがどのような人物なのか判断しようとしています。
なお、当事務所に帰化申請フルサポートを依頼いただいた場合、必要に応じてオンラインで面接シミュレーションも行っております。
面接で聞かれる質問例
下記は、過去の申請者が聞かれた内容です。これ以外のことも聞かれる可能性がありますが、以下については、ある程度答えを用意しておいた方がよいかと思います。ただ、数分で終わる場合もあります。
審査官によって、面接の雰囲気は大きく異なります。ざっくばらんに気さくな雰囲気で行われる場合もありますし、あえて厳格な口調で話されることもあります。
これまでの経歴について
- どのような経緯で来日されたのですか?
- なぜ日本に来たいと思ったのですか?
- 大学では何を専攻されたのですか?
勤務先について
- 会社はどんな事業を行っているのですか?(具体的に)
- 顧客は法人ですか?個人ですか?
- 社長(上司)はどんな人ですか?
- 給料は銀行振込ですか?現金渡しですか?
仕事内容について
- どんな仕事を担当していますか?(担当する予定なのか)
- 残業はありますか?
- なぜ転職したのですか?
- 今の会社であと何年くらい働きたいですか?
日本での生活について
- 休みの日には何をしていますか?
- 日本人の中で一番親しい人は誰ですか?どんな人ですか?
- 茨城県以外で行ったことがある都道府県はどこですか?
- 日本で一番大きい湖は何ですか?2番目に大きい湖はどこですか?
- 結婚する予定はありますか?
母国の親族との関係など
- 母国の親族とはどのようにして連絡をとっているのですか?
- あなたが帰化することに反対ではないですか?
- (母国に子供がいる場合)将来、子供を日本に連れてくる予定はありますか?
経営者が帰化申請するときに聞かれること
- どんな事業を行っているのですか?(具体的に)
- 顧客は法人ですか?個人ですか?
- 登記簿謄本に記載がない事業で、現在行っている事業はありますか?
- 必要な許認可を取得していますか?
- 個人事業主の場合 → 法人化の予定がありますか?
- 顧問税理士はいますか?(事務所名、事務所の場所)
- 社会保険の加入対象の従業員は何人くらいいますか? (原則、規定労働時間の3/4以上の従業員)
- 加入対象者は、社会保険に加入していますか?
面接で注意すること
誠実に回答する
法務局の面接官にはいろいろな方がいます。きさくな方もいれば、あえて厳格な雰囲気で質問される方もいます。どのような審査官であっても、敬意を持って誠実に回答するようにしてください。
これから日本人として生きていくという強い想いを伝える
帰化申請する方の中には、絶対に帰化したいという人と、できればいいなという人がいるように思います。いずれにしても、せっかく帰化申請しているのですから、面接時には、絶対に帰化したいという強い思いで臨んでください。
想定外の質問が出てもあせらない
帰化申請の面接は、採用面接と異なり、事実上NG質問はないと考えてください。採用面接で聞いてはいけないことであっても、帰化申請の面接では聞かれることがあります。時には、かちんとくる質問もあるようです。また、想定外の質問も結構あります。例えば、ある富裕層の外国人が帰化申請した際、面接は和やかに進みました。日本語も完璧、収入も完璧、何の問題ないでしょうという方でした。面接も終盤に差し掛かった頃、面接官から、いきなり「〇倫とかしてないですよね」と真顔で聞かれたそうです。こういう質問もありうるということを想定して面接に臨んでいただければと思います。