外国人材ビジネスの始め方と必要な手続のポイント 

本ページでは、外国人材ビジネスを始める時のポイント、新たな外国人材ビジネスへの参入の優位性、日本人の人材ビジネスとの相乗効果等について解説しています。業界専門誌「月刊人材ビジネス」に掲載した記事内容を一部抜粋、要約して記載しております。

外国人材ビジネスを始める時に必要な手続

外国人材の派遣や紹介を事業として行うためには、許認可が必要です。例えば、下記のような許認可ですね。全てを取る必要はなく、必要に応じて申請します。

  • 労働者派遣事業許可
  • 有料職業紹介事業許可(取扱範囲は国内および国外)
  • 登録支援機関の登録
  • 監理団体の許可

労働者派遣事業許可や有料職業紹介事業許可は勿論ですが、海外から人材を呼び寄せて日本企業に紹介する場合は、「国外にわたる有料職業紹介事業の届出」も必要となります。「届出」とありますが、実際には細かい審査があるので、実質許可ですね。当事務所では、弁護士と共同で、人材会社向けに、国外にわたる有料職業紹介事業の届出業務を行っているのですが、相手国の労働関連法令を調査する必要があり、労働局によって独自ルールがあるため、有料職業紹介事業許可を取るよりも、はるかに大変です。

また、特定外国人の法定支援を代行できる登録支援機関になるためには、出入国在留管理局への登録手続が必要です。2023年6月1日現在、登録支援機関は約8千社あります。特定技能外国人が約13万人であり、登録支援機関に委託しない場合もありますので、この数は少し多すぎるという声があります。こうした声が反映されたのかどうか不明ですが、この制度が始まった直後は、登録支援機関の登録審査は非常に簡単でしたが、最近では審査が難化傾向にあります。

忘れてならない相手国側の手続き

外国人材を扱うためには、相手国側が求める手続も考慮する必要があります。

もともと国内にいる外国人材の場合、相手国の手続きを気にする必要はないのですが、フィリピンは例外です。日本企業がフィリピン人を雇用する場合、原則として、フィリピン政府機関から許可を得る必要があります。この手続きは、日本(東京・大阪)にあるフィリピン海外労働事務所(MWO)とフィリピン(マニラ)にある海外雇用庁(POEA)の両方で行う必要があります。手続きは非常に煩雑であり、通常50枚程度の英文書類を作成し、申請することになります。審査期間も2ヶ月程度かかりますので、入社から逆算してスケジュールを組んでおく必要があります。

また、特定技能外国人を海外から呼び寄せる場合、国によっては、指定の送出機関(人材エージェント)を通さないといけないというルールがあります。現時点では、ベトナム、バングラディッシュ、ミャンマー、カンボジアから呼び寄せる場合、現地政府認定の送出機関を経由する必要があります。この送出機関に支払う費用は無料ではありません。一律ではありませんが、日本円で数十万円になることもあります。

外国人材ビジネスのリスク

外国人材を扱うリスクといえば、やはり法律違反による処分でしょう。具体的には、不法就労助長罪で摘発された場合の被害は甚大なものとなります。ここで、最近の不法就労助長罪の事例を3件紹介します

まず1件目は、2023年1月に起こった事例です。この事件では、漁業分野の特定技能1号の在留資格を持つ3人の外国人が、在留資格で認められていない業務(建築作業員)で報酬を受けとったことにより、入管難民法違反の疑いで逮捕されました。特定技能ビザは保有していたのですが、行政指導ではなく、逮捕されました。

2件目は、偽装結婚に関する事例です。2023年3月、技能実習生として来日した外国人を農園で不法に働かせたとして、農園経営者ら計4名が逮捕されました。この事件で逮捕された技能実習生は、日本人男性と偽装結婚させられ、「日本人の配偶者等」の在留資格を不法に取得していました。

3件目はオーバーステイの外国人を働かせた事例です。2023年4月、外国人の不法就労を助長した罪で、会社社長が逮捕されました。この事例では、外国人が不法残留(オーバーステイ)であることを知りながら、自動車部品工場で働かせていました。

※上記事例全て報道発表されています。

不法就労助長罪で逮捕されると、その会社名や関与した役員の実名が報道されます。そのリスクは甚大です。

外国人材事業を買収する時に絶対に確認すること

事業買収して外国人材ビジネスを始める場合、既存事業が法律的に問題ないか、取得している許認可などを継続できるか等を監査する必要があります。以下、ポイントを説明します。

外国人の就労実態がコンプライアンス的に問題ないか

外国人雇用のコンプライアンスというと、技人国ビザについての該当性が問題になることが多いです。技人国ビザは、ホワイトカラーを対象とした就労ビザですが、実際には現場で働いているケースがあります。例えば、通訳者として技人国ビザを取得したにも関わらず、実際には工場作業員として働いているケースです。こうした場合、不法就労助長罪に該当する可能性があります。

また、技能実習生が行っている作業も確認してください。技能実習生は技能実習計画書に記載されている作業を全て行う必要があります。例えば、電子部品製造の場合、技能実習生が行うべき作業は、電子機器組立作業・電子回路の点検作業・配線及び調整作業・仕様書の読解作業などが明記されているはずです。しかし実際には、決められた部材を決められた場所に設置してネジを締めるだけという作業現場もあります。技能実習計画書は受入企業が国の機関(技能実習機構)に届け出ているものです。国の機関に届け出ている作業内容と実際の作業内容が大きく乖離している場合、それが判明した時に大きな問題となります。

誤認されやすい特定活動の在留資格

特定活動ビザを持って日本で働く外国人も多いですが、特定活動ビザは種類が細かく分かれており、現時点で50種類以上あります。フルタイム就労可能なもの、限定就労可能なもの、就労不可のものがあります。在留カードを見ただけでは判断できませんので、注意が必要です。現在よく使われている特定技能の種類を図に示しますので、参考にしてください。

保有している許認可を引き継げるか?

他社から外国人材の事業を買収すると、自動的に許認可も引き継げるわけではありません。外国人材に関わる許認可としては、有料職業紹介事業許可(国内および国外)、労働者派遣事業許可、登録支援機関の登録などがあります。

有料職業紹介事業許可、労働者派遣事業許可については、人・物・金の要件があります。まず、「人」に関する要件ですが、職業紹介責任者(派遣元責任者)の該当者がいるかどうかの確認が必要です。講習を受ければ誰でもなれると思われていますが、実務経験3年以上という要件もあります。ですから、例えば、大学を卒業したばかりのメンバーで、職業紹介会社を立ち上げる際には、3年以上の社会人経験を持つ人を常勤社員として雇用する必要があります。ただ、労働局によっては、柔軟に対応してくれるケースもあります。筆者の顧問社労士が関わったケースでは、ある留学生が職業紹介会社(一人会社)を立ち上げ、職業紹介事業許可を申請した際、学生時代のアルバイト年数を実務経験年数として認めてもらえました。留学時代のアルバイトですから、フルタイムでの実務経験ではないのですが、この点は、労働局の裁量の余地があるようです。

次に「物」に関する要件について説明します。具体的には、事務所要件です。主な要件としては、概ね20平米以上あること、独立した応接スペースがあること、個人情報を適正管理するための鍵付きキャビネットがあること等です。事務所の広さについてですが、これも結構柔軟に審査されます。概ねと記載があるとおり、実際の審査では、機密性に問題なければ15平米以上あれば許可されているようです。

資産要件ですが、職業紹介の場合は500万円以上、労働者派遣の場合は2000万円以上の資産が必要です。新設会社であれば資本金の額、既存会社であれば現金預金の額がこれ以上必要となります。新設会社の場合、現物出資でもよいのですが、作成する書類の数が増え、税務関係の手続きが煩雑となるようです。

外国人材事業を続けるために

外国人材ビジネスに参入する企業は多いですが、その全てが成功するとは限りません。筆者も数社の立ち上げに関わったのですが、成功する会社、残念ながら撤退する会社をみてきました。

成功する会社に共通することは、外国人材を「労働者ではなく財産」として扱っているということです。要は、外国人材を大切にするということです。財産なら常に気にかけますし、増やそうとします。それと同じです。雇用主が、外国人のことをこまめに気にかけ、育てるという気持ちがあれば、彼らも期待に応えてくれます。そして、早期退職を防げると感じます。

また、国民性にもある程度の配慮は必要です。例えば、中国人には、「発展空間」という概念があります。発展空間とは、「成長する余地」という意味であり、給与アップだけでなく、スキルの向上、将来性まで含まれます。ですから、もうこの会社で成長が見込めないな、新しいことを学べないなと思ったら、躊躇なくすぐに退社します。

実は、当事務所では、この点で失敗したことがあります。ある優秀な中国人スタッフがいたのですが、私自身が業務で忙殺され、彼の育成にほとんど時間をかけることができませんでした。毎日、同じ仕事だけを任せて、新しい仕事を教えることができませんでした。このため、わずか数年で退社していきました。

ちなみに、ベトナム人は「手取りの給料」を重視する人が多いです。少しでも給与が高い職場があると、転職を躊躇わない人が多いと感じます。一方、フィリピン人は、「働きやすさ」を重視する傾向にあります。給料よりも、休暇を取りやすい、職場の雰囲気が良いなどを重視しますね。

新たな外国人材ビジネスへの参入の優位性

今、日本国内には約4万社の人材会社があります。そして、毎月100社くらいずつ増えています。もちろん、その大半は日本人を対象とした人材会社ですが、一定割合で外国人材を対象とした人材会社も増え続けています。

そんな状況の中、今から外国人材に参入するために、どのような強みや優位性を持てばよいのでしょうか。いろいろな発想があると思うのですが、筆者が気づいたことをいくつか紹介したいと思います。

他社が扱っていない国を開拓する

日本に住む外国人を国籍別にみると、一番多いのは中国、次いでベトナム、以下、韓国、フィリピン、ブラジル、ネパール、インドネシアと続きます。これらの国を扱う人材会社も多くあります。そうした会社では、その国に適した採用方法や雇用管理のノウハウも蓄積されています。ですから後発で既存の会社と勝負するのは、なかなか難しいと思います。

筆者のお勧めは、ラオスです。ラオス人は、おおむね控えめで穏やかで勤勉です。そして、日本人と似た顔つきをしています。実際にラオスに行くとわかるのですが、国全体が穏やかで、日本の田舎と少し似ています。

業界によっては古典的な営業が効果的

人材派遣や人材紹介の新規企業開拓では、ホームページやSNSの効果は低いと言われています。つまり、いくら自社サイトに良い記事を書いても、ネット広告を出しても、なかなか企業からの問い合わせには繋がらないようです。特に、現業系の業界ではその傾向にあります。筆者の顧問先の人材会社では、ホームページを持っていませんが、電話営業だけで年間50件の新規開拓営業に成功しています。その会社は、建設業、介護業界に力を入れており、毎日平均100件ほど架電するそうです。先日、同社の社長と話をした時、「相手から断られ続けて心が折れる時もあるけれど、電話営業でしか出会えないお客様もある」と仰っていました。

ここまでやるかというサービス

特定技能外国人を雇用する場合、法律で定められた10の支援をする必要があります。例えば、生活オリエンテーション(8時間以上)や公的手続のサポート、日本語学習支援などです。最近、この各種支援を、技人国の外国人社員に対しても行う人材会社が増えてきましたね。技人国の外国人に対しての支援は法律上の義務ではありませんが、そこをあえて行うことで、雇用先の不安を取り除き、安心して雇ってもらえるという効果があるようです。そのサポートは会社によって異なりますが、本国への荷物の発送やスマートホンの機種変更サポートなど、コンシェルジュ並みのサポートを提供している会社もあります。また、外国人に万が一のことがあった場合の、親族との連絡代行、親族の来日サポート、果ては 遺体搬送までサポートしますという会社もあります。ちなみに、遺体搬送費は100万円程度かかります。

日本人の人材ビジネスとの相乗効果

最後に、外国人材ビジネスを行うことによる相乗効果について考察したいと思います。当然ですが、お客様の多様なニーズへの対応が可能となります。日本人だけでは対応できなかった案件であっても、外国人材の中に該当者がいる可能性があります。

そして、海外人材なら計画採用しやすいという利点もあります。海外人材は覚悟を持って日本に来ます。多くの場合、退職すれば就労ビザはなくなり、帰国せざるを得ません。コロナが落ちつき、インターンビザ(特定活動9号)で来日する外国人が増えてきましたが、ある人材会社に聞いたところ、彼らの途中退職率は1.9%とのことでした。インターンビザは、長くても1年程度のビザなので、長期雇用には向きませんが、はじめて外国人材を雇用する企業にとっては、お試しという意味でよいのかもしれません。

昨今、日本人の賃金が上がらない、若者が海外へというニュースをよく聞きますが、日本人を海外の企業に紹介する、斡旋するというビジネスも注目されています。例えば、日本人のIT技術者を北米や欧州先進国の企業に紹介するビジネスですね。日本より欧米先進国のほうが、給与水準が高いため、紹介料も相応額になるようです。人材ビジネスは人を扱うため、様々な気苦労もありますが、夢のあるビジネスだと思います。

専門行政書士による外国人材事業のサポート

つくばワールド行政書士事務所では、法律・手続・営業面から貴社の外国人材事業をサポートしております。

主に、設立10年以内(事業開始10年以内)、従業員100名以下の法人様を対象としたサポートです。

面談型(貴社に訪問)とオンライン型がございます。

詳しいサポート内容については、下記ページをご覧ください。

 


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一

 

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