国外にわたる有料職業紹介を行う場合の手続

法律・在留資格

職業紹介会社が、国外にわたる職業紹介を行う場合、「有料職業紹介事業の取扱地域の変更手続」が必要です。

職業紹介免許の国外届出とは

職業紹介免許の国外届出とは、外国に住む外国人を国内企業に紹介する際に必須となる手続きです。

従来、日本国内だけで完結していた人材紹介ビジネスが、国境を越えたビジネスになりつつあります。つまり、海外にいる外国人を日本の企業等に紹介するというニーズが増えています。また、日本に住む日本人を海外の企業に紹介するといった案件も増えてきています。こうした国外にわたる人材の紹介事業を行うためには、有料職業紹介免許に加えて、「取扱地域の変更届出」が必要となります。

海外人材を募集する際には、大きく分けて以下の4つのパターンがあります(図参照)。この全ての場合において、「取扱地域の変更届出」が必要です。

①自社の海外拠点で人材を募集する。

②SNSや求人サイト等で直接募集する。

③海外の取次会社(人材紹介会社)と提携し、その会社が人材を募集する。

④日本の人材紹介会社と提携し、その会社が現地人材会社等を介して人材を募集する。

ここで注意したいことは、④の場合、つまり、国内の職業紹介会社から紹介してもらう場合であっても、海外人材を扱うためには、この届出が必要だということです。

取り扱う国ごとに届出が必要

有料職業紹介事業許可を取ると、厚生労働省から、有料職業紹介事業許可証が発行されます。そして、許可を取った会社は、同省が管轄する「人材サービス総合サイト」にも掲載されます。このサイトは誰でも閲覧できます。

有料職業紹介事業許可証および人材サービス総合サイトには、「取扱職種の範囲等」という欄があります。国内人材のみを扱う会社の場合、この覧には、「国内」と記載されます。逆に言うと、「国内」と記載されている会社が海外人材の紹介をすると違法となります。

ですから、海外在住の外国人を日本企業等に紹介する際には、取扱職種の範囲を追加しておく必要があります。この範囲ですが、国や地域ごとに行う必要があります。例えば、ドイツ、インドネシア、ネパールの人材を扱う場合には、この3ヵ国の追加届出が必要となります。

届出に必要な書類の集め方

取扱地域の変更届出に必要な書類は、国内だけでなく海外からも集める必要があります。そして、翻訳(和訳)も必要です。

海外から集める書類は下記です。

①相手国の関連法令(職業安定法や労働関係法令)とその和訳

これは国によって異なります。インドネシアやフィリピン等は労働法典があり、その法典に職業紹介に関する規定がありますが、国によっては、労働法と国際職業紹介法が別になっている場合があり、両方提出する必要があります。

この書類の探し方ですが、基本的には、取次機関の許可証(営業ライセンス)に根拠法令が記載されています。

例えば、日本語訳にすると、下記のような感じで記載されています。

〇〇国労働法(2025年制定)〇条の規定に基づき、海外における人材紹介事業の活動を許可する
2026年労働関係規約第〇条〇項の規定に基づき、海外における人材紹介事業の活動を許可する

ですから、まずはライセンスを確認し、そこに記載されている根拠法令の条文を探します。そして、それを日本語に翻訳して提出してください。

ただし、労働局によっては、この法令だけでは受理してくれない場合もあるようです。その場合、労働局と相談しながら、必要な法令を調べていくことになります。

②相手国の労働省等から発行された営業許可証等

正確には、相手先国において、国外にわたる職業紹介について、当該取次機関(送り出し機関)としての活動が認められていることを証明する書類(許可証・登録証等)とその日本語訳です。通常、日本向けに職業紹介を行っている会社は、この書類を持っていることが多いです。ただし、「技能実習の送り出し機関の認定証」とは別の書類となりますので、注意してください。

貴社の取引先がこの書類を持っていない場合、弊社が提携する取次会社の紹介も可能です。本手続きについて、非常に慣れておりますので、書類もスムーズに手配できます。

③貴社と海外の取次機関との契約書

通常、海外の取次会社と業務提携の契約書は結んであると思いますが、この契約書は、「職業紹介事業の業務運営要領」の規定に沿ったものである必要あります。 職業紹介事業の業務運営要領は、100ページ以上ありますが、重要部分だけ引用すると下記です。

国外にわたる職業紹介を行うに当たり、取次機関を利用するときは、次に該当するも のを利用してはならないこと。
(イ)相手先国において活動を認められていない取次機関
(ロ)職業紹介に関し、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、求職者の金銭その他 の財産を管理し、求職者との間で職業紹介に係る契約の不履行について違約金を定 める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結し、又は求 職者に対して渡航費用その他の金銭を貸し付ける取次機関 取次機関が上記に該当しないことについて、例えば、取次機関及び事業者の業務分担 について記載した契約書において定めることや取次機関からその旨証明した書類等を提 出させることにより確認するとともに、取次機関が上記に該当することが事後的に判明 した場合には、速やかに利用する取次機関を変更する等、適切な対応を行わなければな らないこと。

上記規定をどこまで契約書に反映すべきかについては、労働局によってルールが異なります、最低限、下記の内容を記載しておく必要があります。

  • 業務分担に関すること
  • 契約期間に関すること
  • 職業紹介手数料に関すること
  • 求職者の財産管理に関すること
  • 違約金に関すること

なお、弊社では、この契約書の雛形(日本語、英語)も用意しております。

顧問先の企業様には無償で提供しております。

④その他の必要書類

相手国に国外職業紹介に関して規定する法令がない場合には、当該国の法律に精通した専門家(当該国の弁護士等)が作成した書面も必要となります。つまり、当該国の法律上、国外への職業紹介事業が問題ないことを弁護士等が証明した書類です。

また、労働局によっては、業務運営規定の提出を求められることもあります。貴社でまだ作成していない場合は業務運営規定の作成が必要となります。

届出を怠るとどうなるか?

この届出の期限は、変更の事実が発生した日の翌日から起算して10日以内となっています。届出を怠ったり、虚偽の届出をした場合、30万円以下の罰金の対象となります。

また、実務面でのペナルティもあります。例えば、特定技能外国人を紹介し、その外国人の在留資格(就労ビザ)を申請する際には、人材サービス総合サイトのページを印刷して提出する必要があります。そのデータ中の「取扱職種の範囲等」の覧が「国内」となっていると、就労ビザは許可されません。せっかく苦労して採用に至ったのに、就労ビザが不許可になってしまうと、かなり損失を被りますし、それが人材紹介会社の責任である場合、クレームにもつながります。ですから、海外人材を扱う際には、この届出を必ず行っておきましょう。

なぜ国外届出手続きは大変なのか?

弊社では、別法人で有料職業紹介会社も運営しておりましたが、その会社を立ち上げた際、「有料職業紹介事業 取扱地域の変更届」を出しました。その際、非常に苦労しました。何度も何度も、労働局に行き折衝し、海外側の書類を揃え、契約書も何度か作成しなおしました。

なぜ大変だったのか、具体的に説明します。貴社の参考になれば幸いです。

相手国の労働法、職業紹介法を調べ、翻訳する必要がある

日本人が外国の法律、しかも労働関連法(日本の職業安定法等に相当する法律)について調べ、翻訳することは非常に大変です。ですから、この作業は、相手国の取次機関や現地弁護士に依頼することになります。

相手国の取次機関等から法令をもらう場合は、翻訳との整合性(原文と和訳の整合性)にも注意してください。

労働局によってルールが異なる

職業紹介免許の国外届出は、各都道府県にある労働局で行うのですが、労働局によって書類のルールが異なることが多いです。

実際、A労働局では何の問題もなく受理された書類がB労働局では受理されないということが多いです。

また、労働局に書類の集め方(特に海外の書類)を聞いても、教えてもらえないことが多いです。通常、「海外の書類の集め方については、当局ではお伝えしておりません」とか「皆さん、ご自身でお集めになっておられます」と回答されます。

相手国取引先との契約書について細かいルールがある

職業紹介免許の国外届出の必要書類の中に、「職業紹介についての契約書の写し(日本語訳含む」があります。この契約書にも、細かいルールがあります。記載すべき文言、記載してはいけない文言などです。

せっかく苦労して相手方と折衝しながら契約書を作成しても、作成しなおしという事態になります。少しでも不備があると「ルールですから作り直してください」と言われます。ですから、最初から本届出のルールに則って契約書を作成する必要があります。

よくある質問 取次機関を使わない場合

弊社では、インターネットやSNS等を活用して、相手国の人材を直接募集しています。つまり、相手国の取次機関に関する書類が存在しません。どうすればよいですか?

国外にわかる職業紹介免許の届出を行うためには、原則、相手国と取次機関との契約書が必要です。また、職業紹介に関する法令も必要です。しかし、直接募集をかける場合、こうした書類が存在しません。

例えば、相手国の大学や日本語学校と契約して、人材を集めてもらう場合にも発生する問題ですね。この場合、以下の2つの方法があります。

弁護士に法令調査書類を作成してもらう

相手国の法律上、直接雇用、つまりインターネットで現地人材を募集したり、人材紹介の現地ライセンスを持っていない日本語学校や個人と契約して人材を集めることが問題ないということを、法律専門家(原則、弁護士)によって証明してもらいます。

弁護士による法令調査書類が用意できれば、「取扱地域の変更届」は受理されます。ですから、貴社に顧問弁護士がいる場合、相談してみてください。顧問弁護士が作成できるようでしたら、この問題は解決します。

職業紹介許可証(現地政府のライセンス)を持っている取次機関と提携する

例外的な方法ですが、相手国において、既に職業紹介許可証を持っている取次機関と提携すれば、この問題は解決します。アジアの主要国であれば、弊社が相手先国の取次ぎ機関をご紹介することは可能です。

現時点で、ベトナム、ネパール、フィリピン、スリランカ、ミャンマー、インドネシア、ラオス、カンボジア、タイの人材紹介会社をご紹介、おつなぎすることが可能です。

上記以外の国については、お問い合わせください。

ただし、形だけの提携である場合、貴社および相手方にとって、メリットが少ないため、できれば弁護士による法令調査の方法をお勧めします。


この記事を作成した人 ワールド行政書士法人 行政書士 濵川恭一

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