行政書士が解説!海外の短大や3年制大学を卒業している場合、就労ビザ(技人国)を取得できますか?

日本企業でホワイトカラー職として働くためには、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務ビザ)を取得する必要があります。このビザを取得するためには、学歴要件があります。日本の大学院、大学、短大、高等専門学校、専門学校を卒業されている方の場合、学歴要件は分かりやすく、証明も比較的容易です。

しかし、海外の高等教育機関(大学等)を卒業されている場合、日本の入国管理法に記載されている学歴要件を満たすのかどうかの判断が非常に難しい場合があります。なぜなら、国によって教育制度が異なり、また、職種によって、求められる学歴要件が微妙に異なるからです。

本人が、「私は母国で大学を卒業しています。卒業証明書も持っています」と言っていても、残念ながら就労ビザの要件には該当しないことがあります。また、就労ビザ申請時には、本人から提出された卒業証明書とその和訳を出すだけでは不十分です。その学校が母国の教育省からどのように位置づけられており、そのような学位が授与されているのかを複数の書類で説明、証明することが非常に重要です。就労ビザ申請時に卒業証明書だけを提出した場合、母国(省)の教育制度、取得している学位についての説明、証拠資料を求められることがあります。例えば、下記の学校を卒業されている場合、学校に関する資料が求められました。

  • 中国の本科大学・専科大学
  • 台湾の高等専門学校
  • フランスのBTS・DUT・リセ
  • カナダ・ケベック州のCEGEP
  • インドネシアのInstitute

本人が学士(bachelor’s degree)以上の学位を持っている場合、日本の大卒相当と判断され、学歴の要件はクリアできます。また、ベトナムの学位である「CAO DANG」も準学士相当と認められています。

しかし、その他の学位については、原則、個別判断となります。これらのこれらの学位が大学卒業程度と判断されるかどうかは卒業証明書だけでは判断が難しいため、当該国の文部省(教育省)の資料、大使館が発行する資料などを基に、当該国の現行教育制度を調べ、体系的に整理した書面にして、ビザ申請書類と一緒に提出する必要があります。

こうした書類の有無が、許可不許可の判断に繋がります。同じような学校を卒業して、同業種に就職しているのに、就労ビザが許可になる人と、不許可になる人が存在するのは、こうした理由が大きいです。

審査を担当する出入国在留管理局の審査官は、非常に忙しいです。毎日、膨大な資料を審査されています。卒業した学校が日本の大学相当になるかどうか判断するにあたり、上記の書類があるのとないのとでは、審査結果が大きく異なります。

自社でこれらの情報を調べ、翻訳し、とりまとめるのは、かなり大変かと思いますので、学士以上の学位を持たない方を採用される時には、当事務所にご相談ください。

当事務所が扱ったケースでは、2年制以上の大学、専門大学、Institute等を卒業しており、他の要件(会社側の要件、職務内容に関する要件)を満たしていれば、ほぼ就労ビザを取得できています。ただ、自力(自社)で申請して不許可だったケースも聞いております。こうしたケースでは、出入国在留管理局から指示された書類以外にも提出すべき書類が多々あります。具体的には下記のような書類です。

卒業校が大学相当であることを証明、説明する書類例

  • 当該校の卒業証明書
  • 学位証明書(発行される場合)
  • 当該校から発行された成績証明書
  • 当該校の学校案内(ウェブサイトを印刷したものでもOK)
  • 当該国の文科省に相当する官署が当該大学を高等教育であると認めている文書など
  • 当該国の教育制度についての説明資料

通信制の大学や放送大学を卒業している場合

最近、日本でも海外でも、インターネットやテレビ、ラジオなどを活用して大学の勉強ができる制度が整備されてきています。通信制大学や放送大学を卒業している場合、卒業証明書は勿論ですが、成績証明書やカリキュラム、取得した資格証明書なども提出することで、審査がスムーズになります。

また、海外の通信制大学の場合、それが大学と認められるかどうかが審査されます。ですから、公的機関が発行した証明書や関連資料などを提出したほうがよいでしょう。具体的な書類は、前述のとおりです。

当事務所では、海外の3年制の大学、短期大学、通信制大学や放送大学を卒業された方の就労ビザ申請を行った実績がございます。その時も、こうした証明資料を準備し、申請を行い、就労ビザを取得できました。

 

主要国の教育制度

下記では、主要国の学校体系や学位制度について概要を紹介しています(出典:文部科学省「世界の学校体系」)。ただし、各国の教育制度は変更になる可能性があります。

中華人民共和国の教育制度

教育行政制度

中央政府には教育部(旧国家教育委員会)が置かれ、教育全般を統括している。

中央政府の各部・委員会(省庁に当たる)は所管業務に関する専門教育を管理している。

地方の省・自治区・直轄市・県・市(区)の各レベルには教育委員会・教育庁・教育局が設けられている。

義務教育

6~15歳の9年間

高等教育

大学、専科学校、職業技術学院で行われる。

大学には本科(4~5年、学部レベル)と大学院レベル(修士課程2~3年、博士課程3~4年)がある。専科学校及び職業技術学院には、短期課程の専科(2~3年)がある。

※ここまでの出典:文部科学省「世界の学校体系」

 

韓国の教育制度

教育行政制度

中央には教育省が置かれ、教育全般に関する政策を所管している。

義務教育

6~15歳の9年

高等教育

4年制大学と2~3年制の専門大学で行われる。

4年制大学は分野により4~6年の学士課程が置かれ、修了者には学士の学位が授与される。

また、学士取得者を対象とする2年以上の修士課程、修士取得者を対象とする2年以上の博士課程が置かれており、修了者にはそれぞれ修士、博士の学位が授与される。

専門大学には、2~3年の課程が置かれ、修了者には専門学士の学位が授与される。

専門学士取得者を対象とする1~2年の学士学位専攻深化過程が置かれており、学士学位専攻深化過程の修了者には、学士が授与される。

 

台湾の教育制度

教育行政制度

行政制度は、中央政府である行政院の下に、地方政府である直轄市政府(台北、高雄)及び市・県政府が置かれている体制。

義務教育

6~15歳の9年間

高等教育

専科学校、技術学院、科学技術大学、単科大学(原語:独立学院)、大学で行われる。

専科学校は5年制、2年制の2種類がある。卒業者は準学士の学位を授与される。

大学、独立学院には学士課程(4~7年)、修士課程(1~4年)、博士課程(2~7年)が置かれている。

※ここまでの出典:文部科学省「世界の学校体系」

 

インドネシアの教育制度

教育行政制度

中央には、国家教育省が置かれ、初等教育から高等教育までの施策の立案や実施、財政措置、カリキュラム開発、教員養成、学校監督等、教育制度をほぼ全般的に所管している。

義務教育

7~16歳の9年間

高等教育

高等教育(イスラム系の孤島教育を含む)は、総合大学、技術分野や技術分野で高等教育及び専門教育を提供する専門大学、1つの専門分野で高等教育と専門教育を提供するカレッジ、特定分野で応用科学教育を提供するポリテクニクやアカデミーで行われる。

総合大学では、通常4年で学士相当のS1学位、2年以上で修士相当のS2学位、3年で博士相当のS3学位が授与される。

専門学校、カレッジ、ポリテク、アカデミーでは、1~4年の課程が提供されており、1~3年でD1~D4の修了証が与えられる。

 

タイの教育制度

教育行政制度

中央には教育省が置かれ、初等、中等、高等教育など、教育全般に関する政策立案や基準の制定、監督を行っている。

義務教育

6~15歳の9年

高等教育

大学とカレッジで行われる。

2~3年の準学士課程、分野により4~6年の学士課程が置かれ、修了者にはそれぞれ準学士、学士の学位が授与される。

学士取得者を対象に、2年の修士課程、修士取得者を対象に2~5年の博士課程が置かれている。修了者には修士、博士の学位が授与される。その他、学士取得者を対象とする1年の課程が置かれており、修了者には学卒ディプロマが付与される。

 

インドの教育制度

教育行政制度

連邦、州、地区以下の3つのレベルで行われる。

義務教育

6~14歳の8年間

高等教育

学位授与機関である大学と非学位授与機関であるポリテクニクで行われる。

大学では、上級中等学校修了者を対象とする学士課程(一般に3年)、修士課程(2年)、博士課程(3年)が提供される。

大学ディプロマ取得課程(一般に1年)が置かれる場合もある。

 

スリランカの教育制度

教育行政制度

中央に教育省が置かれている。

義務教育

5~14歳の9年間

高等教育

大学で行われる。

大学には3~4年の学士又は4年の優等学士課程、2年の修士課程、2~3年の博士課程が置かれるほか、学士号取得者を対象とする、学卒サーティフイケイト(1年未満)やディプロマもある。

準学位レベルでは、上級ディプロマ(2年)などがある。

 

パキスタンの教育制度

教育行政制度

中央には、連邦教育・職業訓練省が置かれている。

初等中等教育や高等教育、職業教育・訓練など、教育に係る連邦レベルの政策全般を所管している。

義務教育

5~15歳の10年だが、完全実施には至っていない。

高等教育

大学とカレッジで行われる。

大学には4~5年制の学士課程が置かれ、修了者には学士の学位が授与される。

学士取得者を対象とする2年制の修士課程、修士取得者の3年制の博士課程が置かれており、修了者にはそれぞれ修士、博士の学位が授与される。

カレッジには、上級中等学校の課程(2年)と統合する形で、2~3年制の学士課程が設置されている。

合計4年か5年の課程を修了することで、学士の学位が授与される。

 

ネパールの教育制度

教育行政制度

中央にはスポーツ省が置かれ、すべての教育段階について計画の立案、実施を担当している。

教育スポーツ省の下には教育局が置かれ、地方(教育地域、郡)と密接に連携しつつ、初等中等教育の取り組みを進めている。

 義務教育

全国的には現在、確立されていない(一部地域では初等教育が義務化)。

 高等教育

大学で行われる。

学士課程の修業年限は通常3年(農学や工学などは4年、医歯学は5年半など分野によって異なる)。

大学院レベルの課程として、学士取得後1年間の学卒ディプロマ課程、2年間の修士課程、修士取得後は3年以上の博士課程がある。

 

オーストラリアの教育制度

教育行政制度

教育は憲法上、州の責任とされ、初等中等教育について州は独自の権限を持っている。

連邦政府も財政援助など大きな役割を果たしている。

義務教育

6~16歳の10年

高等教育

主に大学で行われる。

大学は、準学士、学士等の学位を取得する課程を提供している。

修業年限は、ディプロマが1年、上級ディプロマが2年、準学士が通常2年、学士(普通学位)が通常3~6年(優等学位の場合はさらに1年)である。

さらに、学士取得後に1~2年以上の修士課程、あるいは優等学位取得後に1年以上の修士課程が、その上には通常3~4年の博士課程が設けられている。

 

ウクライナの教育制度

教育行政制度

中央に置かれる教育・科学省が、教育政策の立案、教育法令の整備、教育課程基準の策定を行う。

義務教育

6~15歳の9年(または7~15歳の8年)

高等教育

大学、アカデミー、インスティテュート、コンセルバトワール、カレッジ、高等職業・技術学校で行われる。

大学には学士課程(4~6年)、修士課程(1~2年)、博士候補資格取得課程(3年)、博士課程(博士候補資格取得後3年)が置かれている。

カレッジには、学士課程(修業年限3~4年)、高等職業・技術学校には、職業教育課程修了証(ジュニア・スペシャリスト)取得課程(修業年限3年)が置かれている。

※ここまでの出典:文部科学省「世界の学校体系」

その他補足

ウクライナでは、ロシア語、英語で授業が行われることが多い。また、化石燃料や鉱山資源が多いため、そうした天然資源の採掘や加工に関する学科もある。

キルギス共和国の教育制度

  • 小学校4年、中学校5年、高等学校2年。
  • 原則、小学校から高等学校まで、同じ学校に通う。クラスメートも同じ。
  • 中学校卒業後、カレッジ(日本の専門学校に相当)に進学する学生も多い。
  • 学校で使用される言語は、ロシア語もしくはキルギス語。一部の私学では英語が使用されている。

この記事を作成した人 つくばワールド行政書士事務所 行政書士 濵川恭一

 

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